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終わらない研究

 ――それからの私は。

 “死ぬ”ことを、やめた。

 いや。

 正しく言うなら――無意味に死ぬことを、やめたのだ。

 どれだけ終わりを望もうと。

 どれだけ絶望の中で命を絶とうと。

 気づけば私は、また別の肉体で目を覚ます。

 ならば。

(……どうせ終わらないなら)

 やるべきことは、一つしかない。

(この時間を、使い潰す)

 永遠にも等しい繰り返し。

 終わらない転生。

 ならば、その全てを。

 徹底的に“利用する”までだった。

 私は学び始めた。

 魔力とは何か。

 この世界を構成する根幹とは何か。

 命と現象は、どのように結びついているのか。

 一つの時代に留まることはなかった。

 国を渡り。

 身分を変え。

 時には貴族として。

 時には罪人として。

 そして時には、歴史の裏側で名もなく朽ちながら。

 私は研究を続けた。

 ある時代では――アーカイネルと名乗った。

 生命力と魔力の因果関係。

 命が持つエネルギーと、魔力との相互変換理論。

 “消費される生命”が、いかにして“力”へ変換されるのか。

 私はその構造を体系化し、一つの理論として世に示した。

 世界はそれを、“革命”と呼んだ。

 またある時代では――バースタンとして生きた。

 当時、誰にも観測できなかった不可視のエネルギー。

 大気中に漂う“マナ”の観測に、私は初めて成功した。

 空間に満ちる魔力を数値化し。

 世界そのものが、巨大な魔力循環の中に存在していることを証明した。

 その発見は、魔法という概念そのものを根底から覆した。

 他にも。

 数え切れないほどの名を使った。

 時に賛美され。

 時に異端として迫害され。

 火刑台へ送られたことすらある。

 それでも私は止まらなかった。

 名を変え。

 姿を変え。

 時代を渡りながら。

 ただひたすらに、知識を積み上げ続けた。

 そして、気づけば。

 私が名乗ってきた数々の名前は――いつしか魔法学の歴史に刻まれていた。

 教本に載る偉人。

 伝説の学者。

 理論体系の創始者。

 後世の魔導士たちが憧れ、敬い、語り継ぐ存在。

 だが。

(……全部、私だ)

 その事実に、特別な感慨はなかった。

 誇らしくもない。

 嬉しくもない。

 ただ。

 積み重ねた結果が、そこにあっただけだ。

 そして。

 長い年月の果てに。

 ようやく私は、“見えて”しまった。

(……原因は、魔力か)

 何度転生しても。

 肉体は変わる。

 生まれる場所も、時代も、環境も変わる。

 だが。

 ただ一つだけ。

 確実に持ち越されているものがあった。

 ――魔力。

 それだけは、決して失われなかった。

(記憶すら、これに紐づいている)

 そう考えれば、全ての辻褄が合う。

 ならば。

 導き出される結論は、一つ。

(……切り離せばいい)

 自分と。

 この終わらない循環を繋いでいる“何か”。

 それが魔力なのだとしたら。

(それを摘出すれば――)

 この転生から、解放される。

 終われる。

 ――本当の意味で。

 私は静かに笑った。

 何百年。

 何千年。

 気の遠くなるような時間の果てに。

(ようやく、出口が見えたか)

 長かった。

 あまりにも。

 だが、それも終わる。

 その時の私は――本気で、そう思っていた。

 ……その時までは。

 ――賢者は、そこで一度言葉を切った。

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