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ケツァルコアトル 反撃

霧の中。

 ガリューンとデミラが、同時に構える。

「……合わせろ」

「言われなくても」

 デミラが弓を引く。

 赤い魔石が、激しく明滅する。

 機械音が鳴り魔力の奔流。

「——喰らいな」

 放たれる矢。

 業火を纏った一撃。

 その軌道に――

「……ッ」

 ガリューンが重ねる。

 緑の魔石が発光。

 剣を振り抜く。

 放たれる風の斬撃が、炎へと絡みつく。

 融合。

 炎はさらに膨れ上がり、暴風に煽られ――

 灼熱の刃となる。

 一直線に。

 上空の標的へ。

 ドォォォンッ!!

 直撃。

 ケツァルコアトルの――下顎。

 爆ぜる炎と風。

 白い鱗が、わずかに焦げる。

 その瞬間。

 ゆっくりと。

 巨大な頭部が、下を向いた。

 視線。

 “認識された”。

「……っ」

 空気が、変わる。

 次の瞬間――

 グォォォォォッ!!!

 咆哮。

 そして、

 落ちてきた。

 ドゴォォォンッ!!!

 突進。

 巨体が地面へと叩きつけられ、山肌を抉る。

 土と岩が吹き飛ぶ。

 衝撃波が周囲を薙ぎ払う。

「うおっ!?」

 ニクスが体勢を崩す。

 だが、それすら序章だった。

 地に着いたその胴体へ――

 ガロウの群れが殺到する。

 まるで命令されたかのように。

 四方から飛びかかり、

 牙を突き立てる。

 ガギッ!!

 ガリガリと、外皮を噛み砕こうとする音。

「グォォッ……!!」

 ケツァルコアトルが、苦鳴を上げた。

 だが――

 その長大な身体が、大きく唸る。

 ブンッ!!

 振り払われ叩きつけられる。

 巻き上げる。

 それだけで。

 ガロウの群れは、まるで枯葉のように吹き飛ばされる。

 装甲ごと砕かれ、地面に叩きつけられる。

 一掃。

 圧倒的。

「……チッ…化け物め」

 デミラが歯を鳴らす。

 だが攻撃は止まらない。

「——行くぞ」

 グラナスが踏み込む。

 槍を振り上げる。

 青い魔石が、強く輝く。

 次の瞬間――

 ゴォォォォッ!!

 濁流。

 水が、暴力的な奔流となって噴き出す。

 そのまま、ケツァルコアトルの脇腹へ。

 ドォンッ!!

 直撃。

 巨体が、わずかに揺らぐ。

 水圧が鱗を叩き、弾き飛ばす。

「……今だ」

ガリューンが踏み込もうとした、その瞬間。

「行かせねぇよ」

 横から割り込む影。

 ファルガ。

 斬撃が走る。

 ギィンッ!!

 ガリューンが受ける――が、その一瞬の遅れが命取りだった。

「今だ!」

 ニクスが叫ぶ。

 同時に、

「……!」

 リシェルの魔力が展開される。

 炎と氷。

 二つの魔法が、同時に放たれる。

 ゴォッ!!

 バキンッ!!

 挟み込むように叩きつけられた魔法は――

 ガリューンとデミラ、二人をまとめて吹き飛ばした。

「チッ——!」

「ッ……!」

 衝撃。

 ガリューンの身体が地面を転がる。

 体勢が崩れる。

 その隙を、逃すはずがない。

「……そこだ」

 ファルガが一瞬で踏み込む。

 間合いを詰める速度が違う。

 起き上がろうとするガリューンへ――

 斬りかかる。

 ギィィンッ!!

 辛うじて受けるガリューン。

 だが姿勢は不安定。

 押し込まれる。

「くっ……!」

 ファルガの追撃は止まらない。

 間断なく斬撃を重ねる。

 完全に、ガリューンを“戦闘に縛り付ける”動き。

「オッサン!」

 そこへ、

 ニクスが合流する。

 手に炎を宿しながら、横へ回り込む。

 炎が弾ける。

 ファルガとニクス。

 二方向からの圧力。

 ガリューンは完全に迎撃へと回らざるを得ない。

 一方。

 吹き飛ばされたデミラ。

 その身体が地面に叩きつけられる――寸前。

 横から伸びた槍。

 グラナスが受け止める。

 衝撃を殺し、そのまま支える。

「サンキュ」

 デミラが軽く息を吐く。

 すぐに立て直す。

 視線の先――

 レオンたち。

「……来る」

 レオンが低く言う。

 前に出る。

 剣を構える。

 その横に、

「……」

 リシェルが並ぶ。

 静かに杖を構える。

 後方では、

「ミレア、無理はしないで」

「……はい」

 ユージンが支援位置を取り、ミレアが魔力を整える。

 前衛二人、後衛二人。

 迎え撃つ形。

「……邪魔をする気か…」

 グラナスが淡々と呟く。

 槍を構える。

「ガキ共が、あたしらに楯突く気かい!」

 デミラが弓を引く。

 赤い魔石が、再び光る。

「後悔するよ…」

 ニヤリと笑う。

 その瞬間。

 矢が放たれる。

 同時に、

 グラナスが踏み込む。

 前衛を崩し、後衛を狙う動き。

「いくぞ!」

 レオンが叫ぶ。

 地面を蹴る。

 迎撃。

 剣を振るい、飛来する矢を弾く。

 リシェルの氷が、その隙間を埋めるように飛ぶ。

 グラナスの進路を制限する。

 だが、

 相手も止まらない。

 槍が唸り、矢が飛ぶ。

 攻防が一気に激化する。

 戦場は、完全に二つに分断された。

 ファルガ&ニクス vs ガリューン。

 レオン&リシェル(+後衛) vs デミラ&グラナス。

 そしてその上空には――

 ケツァルコアトル。

 全てを見下ろす“災厄”。

 戦いは、さらに深く、激しく、絡み合っていく。


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