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ケツァルコアトル 作戦会議

咆哮の余韻が、まだ空気を震わせている。

 上空では、ケツァルコアトルがゆっくりと旋回していた。

 圧倒的な存在感。

 それだけで、場の支配権を握っている。

「……集まれ」

 ファルガの低い声。

 それに応じるように、レオンたちは素早く合流した。

 自然と円を作る。

 互いの顔を確認する。

 全員が、状況の異常さを理解していた。

「……どうしますか」

 ミレアが口を開く。

 声はわずかに震えている。

 だが、視線はしっかりとファルガへ向けられていた。

「このままでは……危険です」

 その通りだった。

 ここにいるだけで命の保証はない。

「……あいつらが戦うならさ」

 ニクスが上を見ながら言う。

 ケツァルコアトルと、霧の奥へ消えた三人。

「その隙に逃げるのが一番だろ」

 現実的な判断。

 感情ではなく、生存を優先した選択。

「……賛成」

 リシェルも小さく頷く。

 杖を握る手に力が入っている。

 だが、その目は冷静だった。

 撤退。

 それが最も合理的。

 ――普通なら。

 だが。

「……いや」

 レオンが、静かに言った。

 視線は上ではない。

 遠くを見るような目。

 思い出している。

 あの戦場を。

(ゼルガリア……)

 脳裏に焼き付いている光景。

 背中に砲身を取り付けた、巨大な四足獣。

 歪な装甲。

 そして――魔力で動く、異形の兵器。

(あれが……戦場に出たら)

 被害は、想像するまでもない。

「……止める」

 ぽつりと。

 だが、はっきりとした声。

「アイツらを、このまま行かせたらダメだ」

 拳を握る。

「あんなのが戦場に出てきたら……」

 言葉を切る。

 それ以上は、言わなくても伝わる。

「……尋常じゃない被害が出る」

 沈黙。

 ニクスがちらりと見る。

「お前……正気か?」

 問いではない。

 確認だ。

 それに対して、

「正気だよ」

 レオンは迷わない。

 そのまま前を見る。

「ここで止めないと、後で後悔する」

 短い言葉。

 だが、重い。

「……僕も同意見だ」

 ユージンが静かに言った。

 視線は真っ直ぐ。

「危険なのは分かってる。でも……あれを放置するのは、もっと危険だ」

 二人の意思が、並ぶ。

 沈黙が落ちる。

 その中心で――

 ファルガは、考えていた。

 全員の状態。

 敵の戦力。

 そして――

 上空の“災害”。

「……チッ」

 小さく舌打ち。

 だが、その目はすでに決まっている。

「全員聞け」

 低く、鋭い声。

 全員の視線が集まる。

「まずは敵の戦力を削る」

 短く、明確に。

「その上で……状況を見て撤退だ」

 完全な交戦ではない。

 だが、完全な撤退でもない。

 “間”を取った判断。

「無理はするな…絶対に死ぬんじゃねぇぞ!」

 それだけだった。

 だが、それで十分。

「了解」

 レオンが頷く。

「……やるしかねぇか」

 ニクスが肩を回す。

「……分かりました」

 ミレアも覚悟を決める。

「……うん」

 リシェルも小さく頷いた。

 全員の意識が、再び戦闘へと向く。

 目標は一つ。

 ――アルケイアの戦力削減。

 その先にあるのは、生きて帰るための道。

 そして。

 上空では。

 ケツァルコアトルが、再び大きく翼を広げた。

 まるで――

 全てを見下ろす神のように。

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