ケツァルコアトル 二つの斬撃
一直線。
レオンは迷いなく踏み込む。
視線の先――ガリューン。
対する男は、静かに構えを取った。
腰を落とし、剣を鞘へ。
居合。
その瞬間――
緑の魔石が、脈打つように光る。
ギィィン……
機械的な駆動音が、霧の中に響いた。
(来る——)
次の瞬間。
ガリューンが抜いた。
――速い。
抜刀と同時に放たれる、緑の斬撃。
空気を裂き、一直線にレオンへと迫る。
だが。
レオンは止まらない。
剣にマナを集中。
そのまま振り抜く。
ガキィンッ!!
衝突。
斬撃と斬撃がぶつかり――
砕け散る。
「……なに?」
ガリューンの目が、わずかに見開かれる。
その隙を狙うように――
ヒュンッ!!
横から矢が飛び込む。
デミラ。
間髪入れない追撃。
「チッ……!」
レオンはすぐに反応する。
今度は――
自分から。
マナを、さらに圧縮。
剣に叩き込む。
そして、
振り抜いた。
ゴォッ!!
放たれる斬撃。
飛来する矢と正面から衝突し――
粉砕。
その勢いは止まらない。
そのまま、一直線にデミラへと向かう。
「はっ……!」
デミラが咄嗟に跳ぶ。
ギリギリで回避。
斬撃は背後の地面を抉り、土煙を巻き上げた。
着地と同時に、ガリューンの隣へ。
「……なんだい、あれ?」
デミラが眉をひそめる。
「風も炎も……効きやしない」
明らかな違和感。
それに対し、
「……ッ」
ガリューンは歯を食いしばる。
理解できない。
だが――認めざるを得ない。
(あれは……ただの魔法じゃない)
次の瞬間。
再び踏み込む。
剣を構え、
魔石が、強く発光する。
風が集まる。
渦を巻く。
刃に絡みつくように、暴風が形成される。
「……ッ!!」
そのまま、斬りかかる。
対するレオンも――
踏み込む。
マナを、剣へ。
圧縮。
集中。
そして――
ぶつかる。
ギィィィンッ!!!
衝撃。
風とマナが激突する。
互いの刃が噛み合い、押し合う。
至近距離。
視線がぶつかる。
「……ッ」
ガリューンの目に、苛立ちが宿る。
「貴様……!」
「……!」
レオンも一歩も引かない。
力で、押す。
だが均衡は崩れない。
拮抗。
そのまま、睨み合う。
その頃――
乱戦の中。
ユージンは、一つの違和感に気づいていた。
(……おかしい)
手を止めたわけではない。
回復の準備、周囲の確認。
その合間に――
“気づいてしまった”。
(こんなに……暗かったか?)
霧は濃い。
それは分かる。
だが――それだけじゃない。
視界全体が、沈んでいる。
まるで。
“夜”のように。
「……?」
ユージンは、ゆっくりと顔を上げた。
そして――
言葉を、失う。
上空。
空が、見えない。
いや――
“覆われている”。
巨大な影。
広がる何か。
光を、遮断している。
(……なに、あれ)
理解が追いつかない。
ただ、本能だけが告げている。
――見てはいけないものを見た、と。
ユージンは、ただ立ち尽くした。




