表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
107/163

ケツァルコアトル 狼型魔装兵器獣

「……来ます!」

 ミレアの声が、張り詰めた空気を裂いた。

 次の瞬間。

 霧の奥――

 ガサッ、と草を踏み潰す音。

 低い唸り声。

 そして、

 影が、飛び出した。

「ッ!」

 狼型の魔物――ガロウ。

 それもただの個体ではない。

 機械的な装甲を纏った、魔装兵器が四体。

 一直線に、前衛へと襲いかかる。

「来たぞ!」

 レオンが踏み込む。

 最初の一体。

 振り抜いた剣が、迷いなくその首を断つ。

 ギャリッ――!

 金属を断つ鈍い手応え。

 そのまま二体目。

 噛みつこうとした顎を、剣で受け止める。

「ッ……!」

 押し返す。

 だが力は強い。

「ニクス!」

「任せろ!」

 すでに動いていた。

 ニクスの手に集まった火が、弾ける。

 火球。

 至近距離で放たれたそれが――

 ドンッ!!

 レオンの押さえつけていたガロウに直撃。

 爆ぜる炎。

 装甲ごと吹き飛ばす。

「助かった!」

「まだ来るぞ!」

 横から、別の一体が飛びかかる。

 牙を剥き、一直線にニクスへ――

 その瞬間。

 ヒュッ――

 空気が凍る。

 次の瞬間、放たれた氷塊がガロウの側面を撃ち抜いた。

 バキンッ!!

 勢いのまま吹き飛び、地面を転がる。

「……油断しない」

 ニクスが振り返る。

 ドームの内側。

 リシェルが静かに手を下ろしたところだった。

 表情は変わらない。

 ただ、次に備えている。

 一方――

 ファルガは一歩踏み込み。

 無駄のない一閃。

 ガロウの胴を、真っ二つに断ち切った。

 だが――

 ヒュンッ!!

 風を裂く音。

 反射的に体を捻る。

 矢が、頬をかすめた。

「チッ……!」

 着地と同時に距離を取る。

「キリがねぇな……!」

 ぼやく。

 ガロウだけじゃない。

 “あの矢”が、厄介すぎる。

「レオン!」

「分かってる!」

 踏み込む。

 剣を構える。

 魔力を、一気に流し込む。

(——斬る)

 圧縮。

 集中。

 そして――

 振り抜いた。

 ゴォッ!!

 放たれた斬撃が、前方を薙ぎ払う。

 風が裂ける。

 霧が――

 吹き飛ぶ。

 一瞬だけ、視界が開けた。

 そして、見える

「……っ」

 レオンの目が見開かれる。

 そこにいたのは――

 無数のガロウ。

 霧の奥、控える群れ。

 そして、その前に立つ――一人の女。

 長い髪を後ろで束ね。

 手にした弓には、赤い宝石のような石がはめ込まれている。

 女は、口元を歪めた。

「おいおい……なんだそのデタラメな力」

 軽く笑う。

 余裕のある声。

 まるで、戦いを楽しんでいるかのように。

 そのさらに奥。

 霧が、揺れる。

 新たな影が、二つ。

 一人は、緑の石を埋め込んだ剣を持つ男。

 もう一人は、青い石の槍を構えた男。

「……奇襲は失敗のようだな」

 槍の男が淡々と告げる。

「デミラ」

「……ったく、メンドーだなぁ……」

 弓の女――デミラが肩をすくめる。

「どうすんのさぁ、ガリューン」

 その名を呼ばれた剣の男は、ゆっくりと前へ出た。

 視線は鋭い。

「……任務はまだ終わってない」

 低く、重い声。

「さっさと始末するぞ」

 そして、

「グラナス」

 槍の男へと視線を向ける。

「後ろの奴らをやれ」

「了解」

 短い返答。

 空気が、一気に変わる。

「来るぞ!気をつけろ!」

 ファルガの声が飛ぶ。

 全員の緊張が、最大まで引き上がる。

 その時だった。

「……っ」

 小さな音。

 振り返ると――

 ミレアが、震えていた。

 明らかに様子がおかしい。

「ミレア?」

 ユージンがすぐに声をかける。

「大丈夫か?」

「……あ、あの人たち……」

 視線は、敵ではない。

 “武器”へと向いている。

「……いや……あの人らが持ってる武器……」

 声が、震える。

 普段の冷静さが、崩れている。

「……そこから……」

 息を呑む。

 そして――

「……人の魔力反応があります…」

 一瞬。

 全員の思考が、止まった。

 それが意味するものを、理解するまでに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ