#8 叔母と叔母の親友の戯れ
「ほんと、マジ最低だよ! あのクソ亭主!」
美智子さんが赤らんだ顔でワインを飲むと空になったのか、「智くーん! おねかぁーーい!」とグラスを揺らして催促していた。
「は、はいっ! ただいま!」
僕はワインセラーの中から一本引き抜いて、テーブルの方へ持ってくると、栓を抜いて注いだ。
「おーう、ありがとー!」
美智子さんは嬉しそうにまた一口飲んだ。
「智ぅ〜〜! わたしもぉ〜〜!」
叔母もかなり酔いがまわっているのか、呂律がまわっていない声でグラスを掲げた。すぐに向かって注いだ。その際、身体が火照ってしまったのか、しっかりと止めていたはずのシャツが開いて、うっかり深い谷間を見てしまった。
「ちょっ、ちょっ、ちょっと! あふれてる!」
「え? あ? ご、ごめんなさい!」
僕はつい谷間に視線がいってしまい、グラスがあふれている事に気づかなかった。すぐに持ち上げると、テーブルの上にちょっとした赤ワインの池ができていた。
「智くぅ〜ん? よそみしちゃ駄目よぉ〜?」
美智子さんはニヤニヤしながらグラスを飲んでいた。僕は急いでぞうきんを持ってきて、テーブルの上を拭いた。その間も二人の酒盛りは続いた。
「ほんと、なーんで、男の人って浮気すんだろうねー! わたしも離婚したから分かるんだけどさぁ……」
「マナちゃんの元旦那も浮気だっけ?」
「そうそう! たまたまテーブルの上に置いてあったスマホの画面を見ちゃってさ……『昨日は楽しかったです♡ また行きたいです♡』なんて馬鹿みたいな文章が出てさ。で、突き詰めたら浮気してたの! 私と同い年の子に!」
「えーーー! そうなの?」
「そうよ! えっと、ミッちゃんは……」
「私はもう玄関の扉開けたらさ、ヤッてたのよ。リビングで。隙間から覗いたらさ、旦那が腰を振りまくってたわ」
「うわー、真っ最中ね」
「動画に残そうか迷ったけど、脅迫として訴えられたら困るでしょ? だから、思い切ってバーーンって扉開けてね」
「うわー、修羅場、修羅場」
「もう裸のまま二人とも正座させてさ。徹底的に……ぐすっ、突き詰めたらさ……」
美智子さんがまた涙ぐみ始めた。叔母は背中を擦りながらヨシヨシと撫でていた。僕はキッチンに向かい、ぞうきんを絞った。
「なんで、グスッ、男って若い子の身体が好きなのかな?」
「そうかもね」
「ほんと、誰に浮気してるんだって話だよ!」
「確かに! お前の奥さんは『上川真奈美』と『中島美智子』なんだぞ!」
「そうだ! そうだ!」
二人の盛り上がっている様子が背中から聞いても分かった。僕は叔母の意外な一面を見たような気がした。あんなにくだけた口調で話すんだ。確か泥酔していた時もあんな感じの口調だったけ。
普段は家事や仕事でもキチンとしているイメージの叔母の思わぬギャップ萌えに胸がときめいていると、二人は大笑いしていた。
「……あ、この前さ、二人で温泉旅行のロケ行ったじゃん」
「うんうん、行ったね」
「その時、温泉入るシーンあったじゃん」
「ファンサービスも兼ねたやつね」
「着替えている時に思ったんだけど……マナちゃんさ、変わらないよね」
突然美智子さんの方から思わぬ話が出てきた。僕はこの先出てくる話にドキドキしながら冷蔵庫を開けて、オードブルを作るフリをしながら耳を傾けていた。
「えー、そんなことないよー! 現役より垂れてるし」
「垂れてるどころか、むしろ大きくなってない? 現役の頃は何カップでブイブイ言わせていたんだっけ?」
「えー、うーんと、あ、Iだけど?」
「じゃあ、Jだ。ブラとか最近きついとかない?」
「うーん……苦しいなって思う時はあるけど」
「合ってないじゃん! 今度測りに行きなよ。絶対にJだと思うよ」
「そういうミッちゃんだって。大きかったよ?」
「ウッソ? マジ? 美味しいもの食べ過ぎて太っただけなんじゃない?」
「お腹ぽっこり出てないでしょ。このクビレボディ!」
「ちょっと触らないでよ! じゃあ、お返しに……」
「えぇっ?! ちょ、やめて!」
「うわぁ、すっご……おっも」
会話を聞いただけでも僕の下半身は熱くなった。二人が今何をしているのかは容易に想像できた。美智子さんが叔母の胸を触っているんだ。きっと重さを確かめるために手のひらに乗っけるように……。
「ねぇ、え、やめて。さ、智くんが近くにいるのよ」
「えー、聞こえてないでしょ。たぶん洗い物なんかしてるでしょ? ねぇ?」
美智子さんが妙に鋭く僕の行動を指摘されたので、慌てて蛇口を捻って水を流した。少し弱めにして耳を澄ましてみた。
「うーん、服越しでも分かるわ」
「学生じゃないんだから、やめてよ」
「少しだけだから」
「もうっ! お返しだーー!!」
また大騒ぎした。これ以上続けたら二人とも半裸になってしまいそうなので、そうなる前に適当に乗せたオードブルを持って、ズボンに違和感がないかキチンと確認した後、キッチンを出た。
「おまたせしました〜! オードブルでーす!」
僕はわざと大きめの声で呼びかけると、二人とも慌ただしくお酒を飲んでいた。近づいてテーブルを置くと、叔母は「ありがとう。智」と微笑んだ。
来る時に気づいたのだろう、空いていたシャツの胸元がしっかりと閉じられていた。




