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叔母ラヴァー  作者: 黒風月
さとる編
39/55

#39 叔母達との最後の旅行

 案内されたステーキ店は地下にあった。薄暗いシャンデリアが照らされ、軽快なジャズのBGMが店内に響き渡り、夜だからか、仕事帰りの人達が賑わっていた。


 個室があったので、僕と神谷さんはそこに入った。個室はソファ風の席で、向かい合う形となっていた。必然的に座席と同じ向きに腰を降ろしてメニューを開いた。


「何頼む?」

「えーと……」


 メニューを見てみると、そこそこの値段がするものばかりだった。肉だから覚悟していたけど、いくら奢ってくれるとはいえ、あまり高いのも頼むのは卑しい気がした。


「じゃあ、チキンステーキで」


 このメニューの中で比較的リーズナブルなものにすると、神谷さんは「ほんとに? こ遠慮なんてしなくていいのよ。私が誘ったんだから」と聞いてきた。


「じゃあ、サーロインを三百グラムで」

「うん、そうこなくっちゃ」


 僕が本当に食べたかったものを頼むと、神谷さんは嬉しそうな顔をして店員を呼んだ。彼女も僕と同じものを頼んだ。グラムは二百グラムだった。


 待っている間、互いの事について話した。まるで、占いの延長線上みたいだったが、これはこれで楽しかった。ベールを脱いでいるとはいえ、職業で身につけたトーク術は変わらなかった。


 神谷さんは楽しそうに話していた。そうかと思えば何の前触れもなく悲しい顔を浮かべる時もあった。が、すぐに元に戻っていた。何か仕事や人間関係で悩みがあるのと聞いたら、占い師が相談を受けられている事におかしかったのか、大声で笑っていた。


 そんなこんなで食事が終わり、僕と神谷さんは別れた。連絡先も交換した後、電車に乗った。


 不思議な人だったな――ふとそう思った。初めて会ったのに、会ったような気がしない。占い的な言い方をすれば、もしかしたら前世で会っていたかもしれない。


 なんてことを思いながら帰路についた。



 秋武(あむ)先輩とのデートから一週間が経った後、神谷さんからまた会わないかという連絡がきた。けど、テスト期間だったので、忙しいと答えると予定が空いている日にちを教えてほしいと返信が来た。


 先輩と美智子さん、叔母の三人との約束のスケジュールを見比べて、予定が被らない日を指定すると、神谷さんから可愛らしいイラストのスタンプが送られた。


 さて、テスト期間、神谷さんとの食事、先輩とのデートなどなど事務作業的な日常が川が流れるように過ぎていき、叔母と美智子さんが海外に旅立つまで残り一週間となった。


 この期間は二人とも休みだったので、僕と一緒に旅行をする予定だった。期間は旅立つ前日。場所は車で一時間ぐらいの場所にあるテーマパークだった。


 夢の世界で五泊ぐらいできるなんて、幸せ以外のなにものでもなかった。叔母と美智子さんもこの旅行には気分ウキウキでまるで女子高生に戻ったかのように張り切っていた。


 朝もいつもは休日だと昼間ぐらいまで寝ている事が多いのに、今日は朝早くに起きていた。逆に僕のほうが寝坊したみたいで美智子さんに荒いモーニングコールで起こされてしまった。


 叔母の運転で向かう事になった。僕と美智子さんはテーマパークの曲を楽しげに歌っていた。気分が盛り上がってきた所でサービスエリアに寄り、朝食を食べることにした。叔母と美智子さんはサンドイッチ、僕はおにぎりを食べた。


 まだ朝が早いからか、屋台やキッチンカーは開いていなかったので、パーク内での美味しいグルメを楽しみに軽食で済ませた。


 そして、再び車を発進させたが、ここで渋滞が出来てしまった。


「あー、もうっ! もうすぐそこなのに!」


 美智子さんが苛立ったように助手席で吠えていた。それを叔母が慰めていた。僕はスマホの画面で秋武先輩とやり取りをしていると、神谷さんから連絡が来た。


『今日、会える?』


 またしてもお誘いの連絡だった。僕は『今、旅行にいっているので、駄目です』と返した。すると、すぐに既読が付いて『へー、そうなんだ! どこに行くの?』と興味津々といった様子で聞いてきた。


 夢のテーマパークだと伝えると、神谷さんは『いいね! 羨ましいわ〜!』と親しげに返してきた。


『もう着いたの?』

『渋滞にハマっちゃって』

『あらら……開園まで間に合いそう?』

『うーん、どうだろう』


 なんて会話をしていると、車が少しずつ動き出した。僕は『大丈夫そうです』と伝えると、神谷さんは親指を立てた絵文字を送ってきた。

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