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叔母ラヴァー  作者: 黒風月
さとる編
38/55

#38 偶然?

 不思議な占い師との出逢いの後は美味しいミルクティーが飲める店に向かった。ここも有名店らしく、またしても行列が出来ていた。


 列が来るまでの間、自然とあの占い師の事についての話題が出た。


「それにしても凄かったですね! あの……えーと」

「ビューティーシューティングスター?」

「そうです! 物凄く当たってましたね!」

「えぇ、特にさとるくんのはね」

「やはり、口コミ通りの評判なんですね……」

「たぶんね」


 秋武(あむ)先輩が妙な顔でどことなく素っ気ない返事をしていたので、僕は「あの占い師が気になるんですか?」と聞いてみた。思いあたるとしたら、あの人しかいなかったからだ。


 先輩は「ちょっとね」だけ答えたきり、黙ってしまった。僕は話題を切り替えようと心理テストをする事にした。これが思いの外大盛り上がりで、先輩はさっきまでの難しい顔は消えて、いつもの楽しげな感じに戻った。


 店員のオススメのミルクティーを頼んで飲み歩きながら次はどこへ行こうかと話し合う事にした。


「どうします? お腹いっぱいですし、ここも一通り見て回りましたけど」

「うーん」


 先輩は立ち止まってスマホの画面を見ながら真剣な顔をしていた。どうやら次の行き先を本気で悩んでいるらしく、透明のカップに戻るまで調べていた。


「よし、行きたいところ決まった!」

「え? どこですか?」

「いいから、付いてきて!」


 秋武先輩は僕の腕を引っ張って行った。どこに連れて行くのか不安だったが、頭の片隅である期待が浮かんで心臓が高鳴っていた。


*


 甘いデートを終えた僕は最寄り駅で解散した。先輩を見送り、僕が次の電車が来るまで駅のホームで待っていると「あの」といきなり声をかけられた。


 振り返ると、思わず目を見開いてしまった。そこにいたのは昼間に僕と先輩の相性を占ってもらった占い師だったからだ。けど、今いる彼女は目元までベールを被っておらず、ジャンバーを羽織ったどこにでもいる普通の装いをしていた。足元から見えるアジアン系のワンピースが垣間見えているのが、占い師の名残を見せていた。


 どうして自分がその姿で「占い師だ!」と直感したのかは分からないけど、恐らく目があの人と似ていたからだろう。占い師の方も「よく分かりましたね」と僕の洞察力に驚いていた。


「何か用ですか?」

「今から帰ろうと思ってホームに向かったら、見覚えのある子がいるから」

「そんなに印象的だったんですか?」

「えぇ、まぁ」


 僕は話が終わったと思って、スマホの画面視線を落とすと、またしても話しかけられた。


「まだ何か?」

「いや、あの……お腹空いてない?」

「え?」

「よかったら、その……これからご飯どう?」


 僕は戸惑ってしまった。まさかナンパされるとは思ってもみなかった。若者ではないが、老けているという印象はなかった。けど、美麗だった。恐らく若い頃はかなり美しかったのだろう。


「でも、これから帰らないと」

「大丈夫。送ってあげるから。いいでしょ?」


 どうして初めて会ったばかりなのに、こんなに詰め寄ってくるのだろう。たった二十分しか話してないのに。


「占いにこういうオプションがあるんですか?」

「いや、これは……単純にあなたと食事がしたいだけ。もちろん、私のおごりだから」


 うーん、どうしよう。でも、小腹が空いているから、せっかくだし受けてもいいか。


「いいですよ。えっと、ビューティーシューティングスター?」

神谷(かみや)でいいわ」

「かみや……さん? わかりました。どこに連れてってくれるんですか?」

「お肉好き?」

「えぇ、大好きです」

「じゃあ、美味しいステーキが食べられるお店があるからそこに行こうか!」


 神谷さんはそう言った時、不審に腕が動いた。僕の手の方に近づいたが、急停止してサッと引っ込んだ。


「え、駅を出ようか」


 どぎまぎした様子で早歩きでホームの階段に向かって行った。

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