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叔母ラヴァー  作者: 黒風月
さとる編
36/55

#36 先輩からのデートのお誘い

 後日、休日の公園で秋武(あむ)先輩とピクニックデートする時に二人の事について話した。


「叔母さんと美智子さん、海外に行っちゃうの?」


 秋武(あむ)先輩は目を丸くしながらサンドイッチを一口食べた。


「寂しくないの?」

「うん。いや、でも、正直言うと寂しいよ」


 僕は叔母手作りのお弁当を見た。今日の献立は玉子焼きとシュウマイとヒジキの煮物だった。しばらくこれが食べれなくなると思うと悲しくなる。


「いつ行くの?」

「えーと、一ヶ月後です」

「あ、まだまだ先じゃん」

「でも、あっという間ですよ」

「確かに。で、どれくらいいるんだっけ」

「半年です」

「なるほど……はい、ウインナー、あーん」


 秋武(あむ)先輩は自然な流れで僕に食べさせた後、「じゃあ、帰ってくるまでの間、毎日さとるくんのお家に遊びに行くね♡」とウインクした。


 そうだ。僕には先輩がいる。たとえ二人がいなくなっても、全然寂しくない。


「僕、秋武(あむ)先輩の彼氏になって良かったです」

「私も」


 僕と先輩との顔の距離は徐々に縮まっていき、唇がもうすぐ触れ合いそうになった。が、突然子どもが放ったと思われるボールが僕の顔の横にあたってしまった。


「ひぷっ?!」


 僕は危うく気絶しそうになったが、秋武(あむ)先輩が見事に受け止めてくれたおかげで、どうにか大事に至らなかった。


「先輩、ありがむっ?!」


 僕はお礼を言おうとしたら、不意に唇が塞がってしまった。秋武先輩は静かに離れると、「大好き」と小さく笑みをこぼした。


*


 叔母と美智子さんが料理を作っているのを待っていた時、スマホから通知が来た。秋武(あむ)先輩からだった。何だろうと思って見てみると、デートのお誘いだった。今週の日曜日空いているかの確認だった。


『いいですよ! どこに行きたいですか?』


 僕が返信してすぐに既読が付き、数分もかからないうちに返信が来た。


『映画観たい。あなたの叔母さんが出ている映画』


 僕はすぐにあれだと思った。二年前に撮影して公開しようとしたが、ある俳優の不慮の事故で延期してしまった映画だ。満を持しての公開に多くのメディアが騒いでいたっけ。


 まるで僕らのやり取りを聞いていたかのように映画の予告映像が流れた。主演の男が何かに追われている。コツコツと足音だけが響き渡り、緊張感のあるBGMが流れていく。


 ノートに『一度入ったが最後』というわざと汚い文字で書かれたと思われるシーンが挟み、叔母らしき悲鳴が聞こえてきた。すると、すぐに主人公の名前を呼ぶ叔母が現れたかと思えば、黒いコートを着た女性に乗っ取られたかのように画面いっぱいに映し出された。


 一瞬赤髪の女性を思い出してヒヤッとしたが、『追跡中』というタイトルと共に公開日が現れた。ちょうどデートである日曜日に公開していた。次のCMに移った。


「うわぁ、これ、めっちゃ怖いやつじゃん」


 料理を運んできた美智子さんがテレビを見ながら言った。


「あれ? まだ公開されてないですけど」

「試写会で見たのよ。二年も前だったから内容は覚えてないけど、怖いっていう印象はあった」

「へぇ、そうなんですね」


 僕はあの赤髪の女性のおかげか、怖いのにある程度耐久が付いてた。たぶん先輩は僕が怯えている姿を観たいのだろう。


 叔母が「何を話してるの?」と山盛りの焼きそばを持ってきながら言った。


「マナちゃんが出演している映画。ほらっ、延期しちゃったやつ!」

「あー、『追跡中』?」

「そうそう! あれ、どんな感じで撮影したの?」

「うーんとね……ま、食べながら話しましょう」


 叔母はそう言って椅子に座った。僕は急いでコップとお茶を持ってくると、食事を始めた。叔母と美智子さんはチンジャオロース。僕は焼きそばとサラダとひき肉が入った玉子焼き――と非常にボリュームのあるランチだった


 僕は食べながら叔母の撮影秘話に耳を傾けていた。こっそり先輩に『行きます』と連絡すると、ハートマークのスタンプが来た。

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