#33 貸し切り旅館
部屋は畳のある和室とベッドが置かれた洋室の二部屋の他に個室の露天風呂があった。部屋の中にあるお風呂にしてはかなり豪華で、数人は余裕で入れそうだった。
「いやーー! 到着ーー!!」
美智子さんは嬉しそうにベッドにダイブした。叔母は荷物を一カ所にまとめた後、「どうする? 温泉入る?」と聞いてきた。美智子さんは仰向けに寝っ転がって唸っていた。
「うーん、どうしようかな。ちょっと疲れたから寝ようかな。まだ夕食まで時間あるでしょ?」
「女将さんは七時に部屋に届けてくれるって」
「せっかくだから、宴会で使うような場所で食べない? 貸し切りなんだし」
「え? でも、間に合うかな?」
僕は美智子さんの提案に賛成だった。どうせ客が僕らしかいないのなら、普段できないような事をした方が思い出になる。
「僕が女将さんに頼んでおくよ。あ、ついでに温泉にでも入ってくるね」
僕はそう言って浴衣と下着をカゴの中に入れた。叔母は「お願いね。ありがとう」と微笑み、美智子さんは「よろしくーー!」と後輩にジュースを買いに行くようなテンションで手を振った。
「叔母さんも部屋に残るんだよね?」
「うん。だから、ノックしたら開けてあげる」
「分かった! じゃあ、温泉楽しんできます!」
僕は二人にそう告げて、部屋を出た。
※
大浴場までの道のりはあっという間だった。親切に道案内の看板や貼り紙があったおかげで迷わずに済んだ。大浴場は男湯と女湯の暖簾がぶら下がっていた。
(大浴場の場所は把握した。後は女将さんだけ)
僕は早速女将を探しに向かおうと振り返った――が。
「あら」
すると、目の前に女将さんが立っていた。僕はいきなり目的が達成されたので、両肩飛び上がらせてしまった。
「ごめんなさい。驚かせるつもりはなかったんです」
「いえ、僕の方も……あ、頼みがあるんですけど」
僕は叔母と美智子さんが夕食を部屋ではなく宴会場みたいな所で食べたいと伝えると、女将さんは「承知しました。お夕食はそのように手配しておきます」色気のある笑みを浮かべた。
「温泉に入られるんですか?」
「はい。せっかくなので、一人で入ろうかなと」
「坊っちゃんだけで大丈夫ですか?」
「え?」
僕は目を丸くしていると、女将は少し首を傾げた。この反応に僕は女将がある勘違いをしている事に気づいた。
「言っときますけど、僕は高校生ですよ」
この発言に女将の目が丸くなった。
「こ、これは失礼致しました。てっきりまだ十歳にも満たないかと」
「よく言われます。なので、そんなに謝る必要なないですよ」
「ふふふっ、恐縮です」
女将は両手を口元にあてて笑っていた。所作も笑い声も色っぽかったので、きっとこの人目当てに訪れる男性客が多いのだろうなと感じた。
「では、ごゆっくりと」
女将は深々と頭を下げた時に着物から盛り上がった山を垣間見てしまった。僕は脳天に雷が落ちたと言わんばかりに衝撃が襲いかかり、全身に電流がはしったが、すぐに『見てはいけないもの』と直感的に思って視線を逸した。
「じゃ、じゃあ、失礼します」
僕は逃げるように軽く頭を下げた後、足早に暖簾の中を潜っていった。
※
我を忘れる勢いで身体を洗っていた。が、背後からドアが開く音がした。僕は心臓が飛び出しそうになった。
僕以外に男性はいないはずなのに入ってくるという事は、間違えて女性の方に入ってしまったのだろうか。
「おぉー! 広いねーー!!」
「誰もいないから、ゆっくりできるね」
「泳げるかな?」
「子供じゃないんだから止めなよ」
美智子さんと叔母の声が楽しげに会話しているのが聞こえた事で、僕はますますパニックになった。このまま地蔵みたいに硬直するべきか、それとも全速力で逃げるか――あれこれと葛藤していると、背後から僕を呼ぶ声が耳に入った。
全身が凍りついた。死ぬほど叱られる――そう脳内が支配しゆっくりと振り返ったが、美智子さんと叔母の思わぬ姿にその不安はかき消されてしまった。
二人とも裸だった。いや、大浴場だから当たり前だが仮にも高校生の男子がいるのに恥じらいも見せずに自分達の自慢の肉体を見せびらかすのはどうなのだろうか。
なんて事をおもいながら身体が反応しないように自分の肉棒を両脚で挟んだ。
「み、美智子さん。叔母さん、ち、違うんです! 僕は女湯だとは知らなくて、決して入ろうとしていた訳じゃ」
「ううん。智くんは間違ってないよ」
美智子さんは僕の弁解を遮った。が、いまいちよく分からなかった。
「どういうことですか?」
「私達が勝手に入ってきたの? ねぇ、マナちゃん」
美智子さんは叔母の顔を見るが、少し恥じらいのある表情を浮かべ、視線を斜め下に向けたまま無言を貫いていた。僕はますます混乱していた。
「な、なんでですか? 女湯が壊れていて入れなかったとか……」
「そんな理由じゃないわよ」
美智子さんは僕に歩み寄ると、急にしゃがみ込んだ。彼女のたわわな果実が今にも触れてしまいそうな距離にまで迫っていたので、僕の理性が揺らいでいた。
「私達が智くんの身体を洗うために来たの♡」
彼女はそう言って僕の唇に触れてきた。




