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叔母ラヴァー  作者: 黒風月
さとる編
30/55

#30 まさかのお誘い

 キスの後も時間いっぱいまで楽しんだ僕達はホテルを出ていた。夜遅いからか、怪しい人達や酔っぱらいなどもチラホラ見えて不安になったが、先輩が手を握ってくれたおかげで多少は和らいだ。


 変な輩に絡まれる事なく無事に駅前に辿り着いた。秋武(あむ)先輩は僕とは反対側のホームだった。


「じゃあ、またね」

「うん、また」


 僕も先輩も名残惜しそうに見つめ合った。キスしようかなと思ったが、先輩の方から背を向けてホームへと向かってしまった。


 僕は軽く手を振って駆け足で向かった。終電も近いホームは閑散としていた。人は僕以外にベンチの上で熟睡している中年の男しかいなかった。


『まもなく、二番線に電車が参ります。黄色い線から離れてお待ちください……』


 先輩が乗る電車のアナウンスが流れた。何気なく正面を向くと、ちょうど向かい合うように先輩が立っていた。彼女はスマホの画面を見ていて、まだ気づいていなかった。


「先輩!」


 僕は大声で叫ぶと、先輩はゆっくりと顔を上げていた。僕がいる事に驚いたのだろう、目を丸くしていた。


「今日は楽しかったです! 最高でした!」


 昨日までの僕だったらあり得ないようなホームの向こう側にいる彼女にお礼を言いながら手を振った。先輩は少し笑いそうになっているのか、口に手をあてていた。


 何か言おうとしていたが、その前に電車が来てしまった。こうなるならもっと早く言っておけばよかったなと嘆いていると、ホームに到着した電車の窓に先輩が立っていた。


 嬉しそうに手を振っていたので、僕も振り返した。ふと何か口パクで言っていた。何だろうと思って唇を動かすのを見ていると、『また会おうね』と言っているような気がした。


 ふと僕の頭の片隅に妙な既視感が出来たが、気のせいだろうと思ってすぐに取り払った。僕は満面の笑みで彼女を見送った。


 なんて心地が良いのだろう。生まれて初めての彼女ができたのだ――と僕は堪らない気持ちのまま乗車した。ガランとした席に腰を降ろした。


(あっ! 叔母さんと美智子さん、どうなったんだろう)


 僕はスマホの電源を付けてみると、夥しいぐらいの通知が来ていた。予想通り、あの二人からだった。


 かなり怒っているんだろうなと思いながらスマホに返信をした。すると、なぜか何も反応がなかった。美智子さんにも返信してみると、同じ反応だった。


(もしかして激怒して無視しているのかな)


 僕は家に帰るのが怖かったが、泊まるあてもないの最寄り駅に着くまでの間、生きている心地がしなかった。



 家に到着しドアを開けると、とても静かだった。てっきり帰っているのかと思って進んでみると、リビングから光が漏れていた。


「ただいま……」


 ゆっくり開けてみると、テーブルの方に叔母と美智子さんがいた。二人とも寝息を立てていた。テーブルの上には缶や瓶、つまみを乗せたと思われる皿が置かれていた。


「叔母さん、美智子さん」


 僕は二人を揺さぶって声をかけると、叔母と美智子さんがゆっくり目を開けた。そして、僕を見た瞬間、急に大きく見開いた。


「智!」

「智くんっ!」


 二人の顔が鬼みたいに険しくなった。かなり呑んでいるのか酒臭かった。


「智ぅ〜〜? あんた、こんな時間まで何をしていたの?」

「えっと、あの、秋武(あむ)先輩と食事に……」

「ふぅ〜ん、私達に嘘ついて、彼女の所に行ったんだ。ふ〜ん」

「ご、ごめんなさい! 今度はもうしないから!」


 僕はひたすら頭を下げた。そう簡単には許してくれないと分かっていても謝り続けた。すると、二人とも大きく溜め息を吐いた。


「じゃあ、今度は私達の誘いにオーケーしてくれるよね?」

「う、うん。もちろん」


 僕の解答に二人は顔を見合わせてニヤッと笑っていた。何だか嫌な予感がしたが、僕は何も言わずに二人が言うのを待った。


「私達と一緒に旅行いってくる?」

「……え?」


 叔母からの思わぬ誘いに戸惑った。


「そうよ。ミッちゃんと色々話してたんだけどさ、二人とも今週の週末予定が空いているから、どこか出かけようかなと思って」

「色々あって疲れちゃったからさ……温泉で癒そうかなと思って。ねー!」


 美智子さんは叔母の肩に肘を乗せていた。どうやら険悪だった仲は酒と愚痴のおかげで解消されたらしい。


「でも、僕がついて行っていいの?」

「いいの。家族旅行も全然行けてないから……ね?」


 叔母は照れ臭そうに僕を見ていた。確かに叔母と旅行に行ったのはいつだろう。覚えてないや。


「いいね! 行こう!」


 僕の反応に二人とも嬉しそうに抱き着いてきた。二人の豊満な胸が僕の身体を覆い尽くして変な感情になった。死ぬほど嬉しかった。

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