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叔母ラヴァー  作者: 黒風月
さとる編
25/55

#25 一つの事件が終わる

――ドンドンドンッ!


 すると、玄関の方から激しくドアを叩く音が聞こえてきた。警察だ――僕と山岸先生はそう直感し、急いで離脱した。


「じゃあ、私は行ってくるよ」


 着替えながらそう宣言する先生に僕は「……行ってらっしゃい」とか細い声で見送る事しかできなかった。先生は赤髪のカツラを被り終えると、僕の方に近寄ってきた。


下山(しもやま)


 山岸先生はそう言って抱いてきた。耳元で「ありがとう」と今にも消えそうな声で呟いた後、魂でも抜けるかのように静かに離れていった。ドアは今にも壊れんばかりに叩かれていた。男達が開けろと催促していく中、玄関の鍵が開いた。


 確保という声が聞こえたと同時に、大勢の警官達が入ってきた。僕を見つけると、優しい言葉をかけて外に出してくれた。



 その後はあっという間に時間が過ぎた。通報は秋武(あむ)先輩がしてくれたらしい。逮捕された山岸先生は映像や証言など物的な証拠があるため、刑罰は確定だった。たぶん数十年は出られないと思う。


 学校側も記者会見を開く事になった。正門前には大勢のマスコミが押し寄せて来て、登校する生徒たちに取材をしていた。僕を見つけると一目散に駆け寄って押しつぶされそうなくらい質問の嵐をぶつけてきたが、校長と生徒会長の圧力のおかげで取材陣達を引き離す事ができた。


 事件が大きすぎたからか、マスコミは叔母の所にもやって来た。叔母や事務所の人達は声明とかも出したりして事態を収束させていった。


 ネットの掲示板では、この学校終わりだなとヤジを飛ばす者もいれば、こんな美人教師に襲われたいなどと変態的なコメントを呟く者、さらには『俺は襲われた事あるけど質問ある?』と僕に成りすまして承認欲求を満たす者など――様々な意見が飛び交った。


 報道が騒ぎ過ぎてしまったからか、マンションには人が集まるようになってしまった。恐らくテレビで映し出されたマンションのモザイクで住所を特定したのだろう。有名人を一目見ようとする輩がたくさん現れた。


 最初は見てみぬ振りをして過ごそうと思ったが、罵詈雑言を浴びせて来たり、手を出そうとしてきた者達が現れたので、僕と叔母は引っ越しを余儀なくされた。


 新居は前よりもさらにセキュリティーの高いマンションに引っ越した。学校からはかなり離れてしまったので、転校することになった。


 友達や同級生が別れを惜しむ中、一番大きな反応を見せたのは秋武(あむ)先輩だった。もう身内に不幸でも起きたかのように大号泣してしまい、何度も僕に抱きついたりしていた。


 僕は先輩がこんなにも自分の事を愛してくれていたのかと思うと、胸が締め付けられた。なので、連絡先を交換する事にした。秋武(あむ)先輩とはこれからも交流を続けていたかったからだ。


 この提案に先輩は大喜びすると、毎日連絡すると言って頬にキスをしてくれた。



 その後は、新居の引っ越し、転校先での挨拶などバタバタと時は流れていき、気づけば師走(しわす)になっていた。


 今年の冬は死ぬほど寒くて、初雪が降ってきた。ようやくトラウマが消え、新居先でも慣れて来た時に美智子さんから連絡が来た。


 あの鉢合わせ事件以降、叔母と美智子さんとの関係は悪化していて、パタリと顔を出さなくなった。叔母は未だに美智子さんの言葉が出ると、顔にシワを寄せるぐらいだった。新居に引っ越すことを伝えたが、既読がついただけで返事は来なかった。


 もう会えないのか――と思っていたタイミングでの通知。何だろうと思って見てみると、『前の約束おぼえている?』と意味深な内容だった。


 前の約束――最初は何の事だろうと首を傾げていると、すぐに『今度会ったらご飯をおごるっていう約束!』と教えてくれた。そういえば、初めて美智子さんと関係を持った時にそういう約束を交わしていたなと思い出した。一瞬叔母の顔がチラリと浮かんだが、返事はもちろんオーケーにした。


 すると、美智子さんは『ありがと♡ じゃあ、今夜○○駅前の広場で待ち合わせね♡』と嬉しそうな絵文字を付けて返ってきた。


 久しぶりに美智子さんと会えると心が踊っていると、また通知が来た。叔母からだった。


『智、今日の夜、一緒にご飯食べない?』


 まさかの叔母からも食事の誘いがやって来た。どうしようと思っていると、続けて『○○駅前で美味しい角煮が食べられるお店があるんだけど……どう?』とまさかの美智子さんと待ち合わせする駅だった。


 僕は悩んだ。美智子さんを取るか、叔母を取るか――頭を悩ませていると、また新たな通知が届いた。叔母からかなと思って見てみると、秋武(あむ)先輩からだった。


『今日、暇?』


 たったそれだけだったが、僕の頭の中である事を思いついた。

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