#24 怪しい誘惑
僕の推測は正しかった。赤髪のカツラや衣装はリュックの中にしまっていた。数日前に起きた襲撃は僕とコンビニで別れた後、こっそり着替えたらしい。セキュリティの高いマンションにも入れたのも住人だと分かれば納得だ。
そして、今日エレベーターのモニターを真っ暗にさせたのも先生の仕業だった。どうやら隙を狙って僕を襲うつもりだったらしく逃亡できないように降りる時にショートさせたらしい。具体的な方法は言わなかったが、どっちみち犯罪である事に変わりはなかった。
余罪は大きかった。僕を覗き見ただけでなく、盗聴器も仕掛けていた。どうやら引っ越しの挨拶として出したタオルの箱に小さな盗聴器が仕掛けられていたらしい。
早速家に戻って調べてみる事にした。叔母と美智子さんは仕事に行ったのだろう、誰もいなかった。もし二人のうちどちらかにいたらすぐに助けを呼べたのになと思いながらキッチンに向かった。
隅っこに置いてあるゴミ袋の中にそれらしき箱を見つけた。叔母が破らずにそのまま棄てたのだろう。試しに開けてみると、テレビで見たようなものと類似したものが入っていた。
(なんて人だ)
僕は怒りを通り越して呆れ返ってしまった。
「な? あっただろ?」
急に背後から声が聞こえたので、僕はハッとなって後ろを振り返ると、山岸先生が立っていた。
「先生、どんなに悲しい事があったって、さすがにここまで来たら擁護のしようがないですよ」
僕は盗聴器を叩きつけた。すると、山岸先生は「分かってる」と言ってなぜか衣服を脱ぎ始めた。
「はぁ? 先生? なにしてるんですか?」
「どうせ副会長は警察に連絡したんだろ?」
「いえ、それはないと思います。もししていたらミートソースを食べる時間なんてないですから……あの、本当に何をしているんですか?」
「見れば分かるだろ? どうせ捕まるのならその前にやり残した事を果たしたい」
山岸先生はそう言って全ての衣服を脱ぎ捨てた。
普段ジャージ姿しか見られなかった山岸先生の裸に僕は不本意ながら興奮していた。これがもし相手が異常な性愛者でなければ喜んで受け入れたかもしれない。
だけど、僕の理性が絶対に駄目だと叫んでいた。それにここは僕の家だ。もしも、帰ってきたらどう説明するんだ。いや、もしかしたら最悪血の流れる事件になる可能性が……。
「下山」
思案を巡っていると、妙に甘い声が僕の耳の中に入っていた。
「お前、胸が好きなんだろ? いっぱい甘えてあげるよ」
山岸先生はそう言いながら跪いた。僕は思わず唾を飲み込んでしまった。その態勢はまさに仁王立ちだったからだ。僕の頭の中では理性と本能が葛藤していた。
このまま山岸先生としてもいいのだろうか。いや、よくない。絶対によくない。でも、常日頃から弟のように接してくれた先生の隠れた胸を堪能してみたいと思った事が一時期あった。
その当時の夢が最悪な形であれ現実のものになるとは――夢にも思わなかった。でも、だからと言って受け入れていい訳がない。このまま彼女の誘惑に負けてしまったら――。
「来て♡」
どうやら僕の嗜好は把握済みらしい。僕の神経を昂ぶらせるような艶めかしい所作の数々に段々理性が負けてきた。
でも、チャックは降ろさなかった。それがせめてもの抵抗だった。
「せ、先生! 自分の立場がわかっているんですか?! ぼ、僕をゆ、誘惑するなんて、非常識だと……ひゃあっ?!」
すると、いきなり僕の盛り上がっているズボンの上に山岸先生が擦ってきた。
「ふふふ……口では意地を張っているけど、ここは参加したいって言っているぞ? 先生と二人だけの保健体育の授業、教わりたくないか?」
なんて完璧な誘い方だ。きっと世のほとんどの男がそれを聞いたら飛び上がるに違いない。でも、僕は耐える耐えてやるんだ。
「や、止めてください」
「顔が真っ赤だぞ、下山。感じてるんじゃないのか? んん?」
僕は抗った。しかし、雪崩のごとく押し寄せる官能的な刺激が僕の理性の城にヒビを割らせていた。葛藤は続いていた。どうにか理性を勝たせようと踏ん張った。叔母や美智子さんの事も考えたが、二人とエッチな事をしている時しか想像できなかった。
「ふふふ……じゃあ、ズボンが汚れる前に脱がないとな」
先生は怪しい笑みを浮かべた後、僕のベルトを外し始めた。




