#18 叔母への告白
「……で、なんで一緒にお風呂入ってたの?」
叔母は眼光を鋭くさせて見下ろしていた。美智子さんは正座していた。僕は額に冷却シートを貼ってソファに寝そべりながらその様子を眺めていた。
「あの、その……一人でお風呂入れるかなぁって……その、事件があったから」
「あのね。いくらなんでも限度ってものがあるでしょ。彼は見た目は子供っぽいけど、高校生なのよ? 分かるでしょ?」
叔母は静かだが強い口調でジワジワと美智子さんも責めていた。彼女も肩を震わせながら両手の握り拳を強めていた。
「私に言えない事でもしたの?」
「そ、それは……」
「熱々の湯船の中に隠したぐらいだから、何か私に見られたらマズイことをしてたんでしょ? どうなの?」
叔母の気迫に美智子さんは萎縮していた。このままだと、完全に美智子さんが悪者になってしまう。僕は今出せる限りの声で「違う」と訴えた。
「ぼく……僕が頼んだの……」
僕がそう言うと二人とも「え?」とほぼ同時に驚きの声を上げていた。
「美智子さんの……裸が見たくて」
「……そう」
叔母は僕の回答に落ち着いた声で腕を組んでいたが、視線は動揺していた。
「智……それは本当なの?」
「うん」
僕はジッと叔母の顔を見た。しばらく見つめ合っていると、「嘘は吐いてないみたいね」と心を読んだかのようなテンションで溜め息をついた。
「まぁ、智がそういう事に全く興味がないと思っている方がおかしいわね。だけど、大人の女性と一緒にお風呂に入るのは間違っているわ。もう二度としないで。分かった?」
さぞかし噴火並みの激昂をぶつけられるのかと思ったが、想像よりも十倍ぐらい穏やかに注意された。
僕は「ごめんなさい」と浮気でやらかした芸能人のインタビューみたいに真摯に謝ると、叔母は半裸状態の美智子さんに部屋で休むように強めの口調で命じると、僕の方を見た。
美智子さんは身体が冷えてしまったのか、それとも自分が犯した過ちを嘆いているのか、はたまたその両方か――いずれにせよ、半泣きになりながら覚束ない足取りで部屋の方へと向かった。
「……智」
自分の親友がいなくなったからか、叔母の声が柔らかくなっていた。寝ているソファに僕が寝ている高さまで寄っていた。僕の視線の先がちょうど彼女の胸の辺りだったので、見ないように必死に見上げた。
「大丈夫?」
「うん。ありがとう。その……ごめんなさい」
「もう謝らなくていいから。私の方こそ、智のこと、知っているようで何も知らなかったかもしれない……」
悄気げている叔母に僕はますます自分がした事を咎めた。
「そういえば、お仕事は?」
「智の事が心配で終わったらすぐに帰ってきたの……もう少し早く帰れば防げたかな」
叔母は視線を落とすと「あ、剥れてる」と冷却シートを手に取って僕の額に貼り直した。その際、ほんの少しだけ叔母の胸が僕の顔に近づいた。そこからフワッと鼻孔をくすぐるファビュラスな香水が僕の脳内を惑わしてきた。
が、必死に脳内で警鐘を鳴らして鎮めようとした。僕は両腕を伸ばして股間の方に挟み込むようにして勃起を隠した。
「もしかして寒い? 毛布持ってくるね」
叔母は立ち上がって寝室の方に急いだ。僕は香水の匂いで欲情したとか言える訳もなく、小さめのテーブルの上に乗っかっている飲み物を取ろうとした。けど、指先にギリギリ届かない場所にコップが置かれていた。懸命に伸ばそうとしたが、ソファから転げ落ちてしまった。
「智!」
毛布を取りに戻ってきたであろう叔母が急いで駆け寄ってきた。僕はうつ伏せの状態で起き上がろうと思ったが、まだ肉棒の方が元気である事に気づいた。
「智? 大丈夫? もしかして強く打った?」
「へ、平気だから! こ、このままにして!」
「なんで! その状態だと息が苦しいでしょ? 手伝うから……」
叔母は無理やり僕を仰向けにさせた。
「ソファに座……あ」
今の声は明らかに何かに気づいた様子だった。僕は瞬時に立ち上がってソファの端で両膝を折り曲げて縮こまった。本当は部屋に戻りたかったけど、そんな余力が残っていなかった。
叔母の顔がどんな表情をしているか、見たくなかった。きっと失望したと思う。さっき美智子さんと入浴した事を咎めたばかりだというのに欲情して大きくなったのを見たら、誰だって僕を盛んな性獣だと思って幻滅するだろう。
「……智」
彼女は僕に話しかけているのか、それとも独り言を呟いているのか分からない音量で名前を呼んだ。僕はそれには答えず、うずくまった。
「仕方ないわ。生理現象は抗えないわ。その……私もこれから気をつけるから」
どうやら自分の方にも非があると思ったらしい。僕はすぐさま「違うんだ!」と叔母の方を向いた。突然僕が叫んだ事に狼狽していた。
「僕がいけないんだ! 何もかも! こんなすぐに……すぐに反応してしまう僕の身体が悪いんだ! 全部、全部……」
もう色々と溜まっていた感情が暴発してしまった。顔が涙でビショビショになってしまった。
「智、あなたのせいだけじゃない」
叔母はティッシュを数枚取り出して僕に手渡した。僕はそれで鼻を噛んだ。
「男の子のほとんどが通る道よ。智も他の同級生の子もそう。だから、その、大きくなるのは当たり前なの。それを悪みたいに責める必要はないわ」
彼女はそう言いながら僕に近寄ってきた。急に僕の足を触ったかと思えば優しく撫で始めた。
「ミッちゃんとはどこまでしたの?」
「……え?」
「手でしごいたり、口で咥えたりしてもらったの?」
僕は叔母が急に淫らな質問をしている事に戸惑った。が、何もしていないと言い張ってもいずれバレてしまうので、僕は「本番まで」とか細い声で答えた。
「え? 童貞棄てたの?」
叔母は目を大きく見開いた。僕は軽く頭を下げると、彼女は「いつ?」と少し声を鋭くさせて聞いてきた。
「き、昨日」
「じゃあ、私がお酒で寝ている時に二人でやってたんだ……ふーん……」
叔母の声が段々怒りがこもり始めた。さすがに正直に言い過ぎたかなと後悔したが、叔母は「よし」と立ち上がった。
「智、彼女はいるの?」
「どうしたの、急に?」
「いいから、答えて」
「い、いないけど……」
一瞬秋武先輩の顔が脳裏に浮かんだが、僕はすぐに振り払った。すると、叔母は「そう」と腕を組んで唸っていた。
僕は叔母が何を考えているのか分からず、思案にふけっている彼女を眺めていると、何か思いついたのか、大きく頷いた。
「智、あなたに正しいセックスの仕方を教えてあげる」




