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叔母ラヴァー  作者: 黒風月
さとる編
13/55

#13 先輩とデート?

 四階にあるハワイアンカフェの入り口からはいってすぐにある二人席で、僕と秋武(あむ)先輩は向かい合った。


 先輩はフルーツと生クリームをふんだんに乗っかったパンケーキ、僕はマラサダという中にクリームが入った揚げドーナツを頼んだ。


「んふぅ♡ んふふふ、おいしーーー!!」


 秋武(あむ)先輩は口に生クリームを付けるほど頬張っていた。


「先輩、クリーム付いてますよ」

「ん? 後輩くんこそ、鼻にクリームついてるぞ」

「え?」


 紙ナプキンで拭ってみると、確かに付いていた。先輩は「鼻につけるなんてあざといね〜!」と意地悪そうな顔でイチゴを食べた。


「さて……と」


 秋武(あむ)先輩は気分を切り替えるように紙ナプキンで口を拭いた後、まだ食べかけなのにフォークとナイフを置いた。


「真面目な質問なんだけど……何かあったの?」


 急に落ち着いたトーンで質問してきたので、僕はドーナツを持つ手が止まった。


「ど、どうしてですか?」

「いや、あの時、私が後ろから驚かそうとした時、紅茶をかけてきたじゃない」

「え、えぇ……ごめんなさい。服、汚してしまって……」

「そこを突き詰めているんじゃなくて、問題は『なぜかけようとしてきた』か、なの」


 秋武(あむ)先輩は僕の瞳の奥に隠れている感情を読み取ろうと見つめてきた。僕は視線を逸らすようにドーナツをほんのわずかに食べた。


「あの時のあなたの表情、明らかに何かに怯えていた。まるで追われているみたいな……さとるくんは芸能人の甥っ子だからもしかして悪質なストーカーとかにつけられているんじゃないかと推測しているんだけど……どう?」


 さすがの観察眼だ。大体あたっていた。これ以上隠し通すのは難しいかもしれない。たぶん遅かれ早かれバレることだ。


「……誰にも言わないと約束できますか?」

「うん。ここをおごってくれたらね」

「いいですよ。実は……」


 僕は赤髪の女性の事について話すと、秋武(あむ)先輩は「そんな怖い目にあっていたんだね」となぜか涙目になっていた。


「おいで! 抱きしめてあげる!」

「い、いえ、結構です」

「なんで? いっぱい甘えていいんだぞ! 姉の胸に!」

「自称でしょ……人前ですし、その、恥ずかしいので……」


 僕はたどたどしく断ると、先輩は「ははん」と何かを察した様子で声を潜めた。


「もしかして私に抱きつくと、興奮しちゃうとか?」

「え? い、いやいやいや! そ、そんな事はないですよ!」


 すぐさま否定したが、秋武(あむ)先輩は

「そうかな〜?」と盛り上がって胸を軽く触った。


「パフパフされちゃうと、いろーーんな事を妄想して身動き取れなくなるんじゃないの〜? ねぇ、後輩く〜〜ん?」

「違いますって……」


 ちょうど良いタイミングで叔母から連絡が来た。


「あ、叔母から連絡が……もう着いたそうです!」

「迎えに来てたんだ。まぁ、その方がいいよね。私、まだこれを食べ終えないといけないから先に行ってていいよ」

「それじゃあ、お会計済ませておきますね」


 僕は伝票に触ろうとしたが、腕を掴まれてしまった。グイッと引っ張られると、僕の顔が柔らかい弾力で覆われた。すぐに先輩の胸に顔を埋めていると直感した。


「ここも私が払っておくから心配しないで。でも、その代わりぃ、またデートに付き合ってね♡」

「わ……わばりまじだからっ! ば、ばなしてくださいっ!」


 必死にもがきながら離すように頼むと、秋武(あむ)先輩は「よろしい♡」と解放してくれた。僕は若干咳き込んだ後、周りの痛い視線を感じながら店を出た。



 叔母は僕を見つけるとすぐに駆け寄ってきた。


「智っ!!」


 これでもかと言わんばかりに力強く抱きしめてきた。秋武(あむ)先輩のパフパフのおかげか、もう周囲の視線をあまり気にしなくなった。


「智……怪我はない?」

「うん。大丈夫」

「良かった。本当に良かった……」


 叔母の抱擁は今までで一番強かった。もう一生離さないと言わんばかりに両腕でがっしりと僕の頭と背中に腕を回していた。けど、そのせいで彼女の胸にまた顔を埋めるような状態になってしまった。先輩の時とは違い、本当に窒息するぐらい苦しかった。


「おば、叔母さん! く、くるじぃっ!」

「あ、ごめん。智!」


 叔母はすぐに僕を離してくれた。すると、なぜか鼻を動かした後、僕の顔をジッと眺めた。


「智……何か甘いもの食べた?」

「え?」

「なんか砂糖とクリームの匂いがするんだけど……」


 僕はドキッとしてしまった。待っている間、先輩とデートみたいな事をしていたなんて言える訳がない。


「そ、そうだっ! 警察は? 来たんでしょ?」

「そうだった! 連絡しないと」


 叔母はすぐにスマホを取り出して、警察に連絡してうた。僕は話を逸らせて心の中でホッと息をついた。

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