六人の決意
大江山の鬼退治という大命が下った翌朝。
朝霧が立ち込める京の街を、私たち六人は静かに歩き出した。
メンバーは私、源頼光。私の相棒である、藤原保昌。そして、我が誇るべき四天王――渡辺綱、坂田金時、卜部季武、碓井貞光。
まだ誰も目覚めていない静寂の都を抜け、私たちが最初に向かったのは、都の守護を司る神社仏閣だった。神隠しに怯える都の民の無念を晴らすため、そして、この六人全員で生きて帰り、源氏の未来へ命を繋ぐため。
強大な鬼の軍勢に立ち向かうには、人間の力だけでなく、神仏の加護が不可欠だった。
「……ふぅ。これで石清水八幡宮、住吉大社、熊野大社への祈願はすべて終えたな」
一通りの参拝を終え、境内の木陰で保昌が息をついた。
その表情は、いつになく真剣そのものだ。
「ああ。神々もきっと、我らの背中を押し、守護してくださるはずだ」
私が頷くと、隣で腕を組んでいた四天王筆頭の渡辺綱が、冷徹な瞳を大江山がある西北の空へと向けた。
「神仏の加護は心強い。ですが頼光様、相手は時の政を揺るがすほどの怪異。生半可な武力では通用しないでしょう」
「分かっている、綱。だからこそ、我々は『山伏』に変装する。まともにぶつかっては、敵の思う壺だからな」
そう言って、私は用意していた山伏の白い衣を全員に配った。
武具をその身に隠し、ただの修行僧として山へ入る。それが安倍晴明殿から授かった策略だ。
「へへっ、この格好、意外と悪くねえな!」
すでに衣を羽織り、物珍しそうに袖を引っ張っているのは坂田金時だ。
相変わらずの筋肉質で、山伏の衣が少し窮屈そうに見える。
「金時、はしゃぎすぎるなよ。山伏の姿をしている間は、その自慢のまさかり(斧)も隠しておかねばならんのだからな」
知略家の卜部季武が、あきれたように釘を刺す。
金時は「ちぇっ、分かってるよ」と口を尖らせたが、その瞳の奥には熱い闘志がギラギラと滾っていた。
「準備は整いましたね、頼光様。都の結界を出れば、そこからは鬼の縄張りも同然です」
最後に、信仰深く隠密行動に長けた碓井貞光が、静かに私を見つめた。
「よし、行くぞ」私は腰に隠した我が愛刀――源氏に代々伝わる名刀の柄にそっと手を触れ、全員を見渡して力強く頷いた。
この刀が、いつか遠い未来、我が血脈の末裔にまで受け継がれることを、この時の私はまだ知る由もない。
「これより、大江山へ向かう。目指すは鬼の首領・酒呑童子の首だ。都の平穏を取り戻し、囚われた人々を救い出すぞ!」
『応!!』
六人の決意が一つに重なり、私たちはついに京の都を後にした。
山伏とは
日本古来の山岳信仰に仏教(主に密教)などが融合した「修験道」の修行者です。
頼光たちは自分たちが鬼を討伐しにきたと本人にバレないようにするために、修行者と偽っていようとしているのですね。




