頼光の相棒と最強の四天王
集結帝の御前を退いた頼光は、その足で己の屋敷へと戻った。
大江山の鬼退治――。
それは間違いなく、これまでの戦いとは次元の違う、過酷な命となるだろう。
だが、私の心に不安はなかった。なぜなら私には、背中を預けられる最高の仲間たちがいるからだ。
「お帰りなさいませ、頼光様。随分と険しいお顔をされていますね」
屋敷の門をくぐるなり、声をかけてきた男がいた。
名を、藤原保昌。文武両道の頼れる相棒である。
「保昌か。ちょうどいい、皆を集めてくれ。帝より、直々に大命を授かった」
私のただならぬ雰囲気を察したのだろう。
保昌は小さく頷くと、すぐに私の配下である四人の男たちを呼び集めた。
「――以上が、帝、そして安倍晴明殿から聞いた話だ」
屋敷の大広間。
集まった五人の男たちを前に、私は大江山の鬼による神隠しの実態を伝えた。
「大江山の鬼、ですか……。噂には聞いていましたが、まさか貴族や女を誘拐して生のまま貪り食っているとは。万死に値しますね」
静かに怒りを燃やしながら、腰の太刀に手をかけたのは渡辺綱だ。
四天王の筆頭であり、その剣の腕前は私をも凌ぐと言われる冷静沈着な男である。
「へっ、面白ぇじゃねえか! 鬼だか何だか知らねえが、この俺のまさかりで一刀両断にしてやるよ!」
豪快に笑い飛ばしたのは、坂田金時。
後に『金太郎』として童話に描かれることになる、人間離れした怪力を持つ熱血漢だ。
「……大江山は険しい要害。正面から突撃すれば、敵の術中にはまる可能性が高いかと。慎重な策が必要です」
ボソリと、しかし的確な指摘をしたのは卜部季武。弓の名手であり、常に戦況を冷静に見極める知略家だ。
「季武の言う通りだ。晴明殿の占いでも、鬼の城は険しく、軍勢を率いての正面突破は不可能とのこと。そこで、我ら六人だけで潜入する」
私の言葉に、最後に残った碓井貞光が目を細めた。神仏への信仰が厚く、隠密行動にも長けた男だ。
「六人だけで、鬼の根城へ……。頼光様、具体的な策はおありで?」
「ああ。我々は武具を隠し、山を巡る『山伏(修行僧)』の姿に変装して大江山へ潜入する」
山伏の衣の下に、極上の刀と、都を護る熱き闘志を隠す。
一見すれば、ただの旅の僧。だがその正体は、古代平安最強の暗殺部隊というわけだ。
「ハハッ、そいつはいい! 鬼どもの驚く顔が目に浮かぶぜ!」
金時が嬉そうに拳を鳴らす。
綱も、季武も、貞光も、もちろん相棒の保昌も、その目に恐れの文字は一切なかった。
「よし、全員異論はないな。出発は明日。……その前に、まずは神仏に必勝の祈願を行う。我らの命、都の平穏、すべてをこの一戦に賭けるぞ!」
『おおおおおっ!!』
五人の咆哮が、屋敷の天井を震わせる。
源頼光と藤原保昌、そして頼光四天王。古代の終わり、歴史の陰で都を護り続けた最強の六人が、ついに大江山へ向けて動き出すのだった。




