09話:めっちゃ疲れた……
朝のホームルームが終わってから数時間が経過し、今は昼休みになった所だ。
という事で俺はコンビニで買ってきた惣菜パンを自分の席でノンビリと食べてたんだけど……。
「いやー、上神くんってすっごくカッコ良いよねー! それに身体もスラっとしてて綺麗だねー!」
「うんうん、本当にそうだよね! もしかしてスポーツとかしてたの?」
「あ、ありがとう。えっと、まぁ前の学校ではずっと陸上部に入ってたよ」
「あ、陸上部だったんだ! へぇ、スポーツ男子だったんだ! 良いね良いね!」
「こんなカッコ良くてスポーツもしてるなんてモテモテ要素強すぎるでしょ! それなのに上神君って本当に今まで彼女いなかったのー??」
自分の席で惣菜パンをノンビリと食べていたら大量のクラスメイトの女子達が俺の周りに押し寄せてきて大量の質問をしてきた。しかも全員イケイケの陽キャっぽい感じの女子達だった。
俺はこの状況に滅茶苦茶ビックリとしながらも、ちゃんとイケイケ陽キャな女子達の質問にマジメに答えていった。
「う、うん、俺が住んでた所って凄く田舎だったし、今まで通ってたのが男子校って事もあって、俺の周りにはあんまり同世代の女の子がいなくてさ」
「へぇ、そうだったんだ! あ、それじゃあ彼女欲しいとかそういう願望はあるのー?」
「えっ!? い、いや、それはもちろんあるけど、まぁでもしばらくは東京に慣れるのに必死だから彼女とかそういうのを考えるのは当分先かもだけどね……」
「あー、確かに東京は都会だから上神君も慣れるのに時間かかるかもだね。あ、そうだ! それじゃあ今度の休みに一緒に東京観光でもしない??」
「あっ! ずるい! 私も一緒にしたい!」
「あ、あはは……そう言ってくれると嬉しいけど、でも今はまだ家の整理とか色々と忙しい時期なんだ。だから東京観光とかそういうのはしばらくは出来なさそうかなー……」
「えー? あ、そっかー、まぁ確かに引っ越したばっかりじゃあ色々と大変だよね。って、あっ……」
―― キーンコーンカーンコーン……
「あ、チャイム鳴っちゃった……残念だなぁ。もっと上神君とお話したかったのに……」
「うん、本当にそうだよね。あ、それじゃあ放課後もまたお話しようね!」
「う、うん、わかったよ」
「うん! 約束ね! それじゃあまたねー!」
「またねー!」
「う、うん、またね……」
という感じで俺はようやくイケイケな陽キャ女子達からの大量の質問攻めから解放されていった。
でもこんなにも沢山の陽キャ女子に囲まれて質問攻めにされるなんて思わなかったので俺は終始気圧されっぱなしだった。今も若干疲れてしまっている……。
そして今の陽キャ女子達との会話の中で判明したんだけど、どうやらこの貞操逆転世界だと俺は結構カースト上位の男子に位置づけされる感じのようだ。女子達曰くスポーツをしてるのもモテる要素に繋がってるらしい。
(いや、まぁモテる事自体は普通に嬉しいんだけど、でもここまでガツガツと陽キャ女子集団に迫られるとちょっと怖いって……)
それと前に鳴海姉さんが言ってたけど、やっぱりこの世界の女子達は皆肉食系のオオカミ女子なんだろうな。皆話してる時に笑ってたけど、目の奥はギラギラとしてる感じだったもん。
という事で俺はそんな事を思っていきながらも、とりあえずイケイケな陽キャ女子集団からの質問攻めが終わったので俺はさっさと昼飯を食べるのに戻っていった。
「はぁ……でもめっちゃ疲れたな……」
「ん、おつかれ」
「え? って、あぁ、うん。ありがと、天城さん」
ため息を付いていると隣の席に座っている天城さんはそう言ってきた。天城さんは朝と変わらずピシっとした姿勢でカリカリと勉強をしていた。
そして天城さんはさっきのイケイケな陽キャ女子集団には加わらずに一人で黙々と勉強をしていっていた。
だから天城さんは勉強に集中しているし喋りかけられるのとか嫌なタイプなんだろうなって何となく思ってたんだけど……でも俺に声をかけてきてくれたって事は俺と話すつもりはあるって事だよな?
という事で俺はそんな肯定的な意味で捉えていったので、早速俺からも天城さんに話しかけていってみた。
「いや本当に凄く疲れちゃったよ。まさかこんなに沢山質問されるなんてね」
「まぁ、でもそんなものじゃない? 転校生がカッコ良い感じの男子なんだからクラスの皆も浮かれて質問ばっかりするものでしょ」
天城さんは勉強を続けながら俺にそんな事を言ってきた。まぁでも確かに元の現実世界でも可愛い女子が転校してきたら絶対にイケイケな陽キャ男子集団に囲まれて質問攻めにされるに決まってるよな。だからそんなもんか。
「うーん、まぁ確かにそれもそうか……って、あれ? だけどさ、もしかしてそう言うって事は……天城さんも俺の事をカッコ良いって思ってくれてるって事?」
「……さぁね。私、顔の造形とかには一切興味ないし。それに私は他の女子達みたいに彼氏欲しいとかそういうの全く思ってないから。だからアナタに興味なんて別にないわよ」
「へぇ、そうなんだ? ちなみにその理由は聞いても良いの?」
「別に構わないわよ。私は一流の国立大学を目指してるの。だから恋人を作って遊んだりなんかしてる暇はないの。そんな暇があったら一秒でも多く勉強しなきゃいけないからね」
天城さんは勉強を続けながら淡々とした態度でそう答えてきた。やっぱりずっと勉強をしてる理由は難関大学に受かるためなんだな。
だから今は勉強する時間が一番大切だから男子とイチャイチャと青春を送る事なんて興味は一切無いという事か。うんうん、なるほどなー。
「はは、なるほどね。天城さんってかなり真面目で努力家な女の子なんだね。それに高校二年生の段階でそこまで受験勉強を頑張ってるのは凄いと思うよ」
「ふん。学生の本分は勉学なんだから私は別に凄くなんてないわよ。周りの盛ってる女子達がおかしいだけで、私の方が至って普通の女子なのよ……って、あっ」
「うん?」
―― ポトンッ……
そんな会話をしていると天城さんは机に置いてた消しゴムを腕でぶつけてしまい、その消しゴムは床にポトンと落ちていってコロコロと転がっていってしまった。
そしてそのコロコロと転がってきた消しゴムは俺の足にぶつかって止まったので、俺はその消しゴムを拾っていった。
「はい、これ。消しゴム落としたよ」
「え……えっ? あ、う、うん、ありがとう……」
「うん、どういたしまし……って、えっ?」
俺はその瞬間になってようやく初めて天城さんと目が合った。今日は朝からずっと机に向かって勉強をしていたから天城さんは俺の方に顔を一切向けてきてくれなかったんだ。
だから今になってようやく天城さんと目が合ったんだけど……。
(えっ? あ、天城さん……めっちゃ顔が赤くなってるじゃん!?)
天城さんは俺と目が合うや否やすぐに顔を真っ赤にしたまま目を反らしていってしまった。それに何だか天城さんは物凄く緊張してる感じにも見えた。
俺はそんな天城さんの真っ赤にしながら緊張してる様子を見てキョトンとしてしまったんだけど……まぁでも俺は気を取り直して消しゴムを天城さんに手渡していった。
「え、えぇっと、うん、それじゃあ、はいこれ」
「う、うん、あ、ありがとう……」
俺は顔を真っ赤にして緊張してる天城さんに消しゴムを手渡していくと、天城さんは目を反らしたまま俺にそう言って感謝を伝えてきてくれた。
そしてその瞬間……俺は昔のとある出来事を思い出していった。
(あ、何というかこれ……小学校の時にもこれと同じ感じの光景を見た事があるな)
俺は田舎に住んでる友人の正嗣とは小学校~高校までずっと同じだったんだけど、そんな正嗣は小学生だった頃はクラスの女子達と話す時に免疫が全然無くて、いつも凄く緊張してしまって女子の目を見て話す事が出来なかったんだ。
そしてそんな凄く緊張してた小学生の頃の正嗣と全く同じ反応を今の天城さんもしている気がした。という事はつまり……。
(あぁ、なるほどな。天城さんは男子に興味がないというよりも……ただ単純に男子に免疫が無くて緊張しちゃうから敢えて目を合わせないようにしてたんだな)
それに気が付いた途端に天城さんに対して物凄く親近感が湧いてきた。まぁやっぱりイケイケな肉食系の陽キャ女子達よりも、元の現実世界の俺や正嗣みたいな普通の男子っぽい感じの女子の方が親近感も湧くもんだよな。
という事でこの世界は貞操逆転世界ではあるけど、どうやら全員が全員肉食系の女子という訳では無さそうだ。まぁそこら辺についてはこれから色々と調べられたら良いかな。




