08話:転校初日
東京都内に引っ越してから数日が経過した。
この数日の間に俺は近所のスーパーとかコンビニとか図書館とか色々な場所を散策してみたんだけど、やっぱり元の現実世界とはちょっとだけ違うなと思う場面は多々あった。
だとえば女性の比率が圧倒的に多いので、女の人からジロジロと視線を感じる事は多々あったし、夜になると駅前とか人が栄えてる場所では大学生くらいの女の人にナンパされたりした。
(だけどナンパなんて初めてされたからちょっとこそばゆい感じにもなったっけ)
あ、もちろんナンパとかそういうのには付いていったら駄目だって、鳴海姉さんと約束したのでナンパに関してはちゃんと上手くかわしておいた。
まぁそんな感じで俺はこの数日間、女性があまりにも多いのでちょっとドキドキとしてしまう日々を過ごしていった。
でも女性関係以外の部分に関しては現実世界と比べて大きく異なってはいないので、今の所はそんな変な違和感とかもなく普通に生活は出来ていた。その点だけは安心してる。
そしてそんな夏休みも無事に終わって今日からいよいよ学校が始まる。という事で……。
「初めまして、上神春樹と言います。これから卒業までよろしくお願いします」
―― パチパチパチパチッ
という事で今日は転校初日なので、朝のホームルームで早速自己紹介をしていった。全体的に温かい歓迎を受けていったのでとりあえずホッとした。
(まぁでもやっぱり思ってた通りだけど……クラスの中は女の子ばっかりだな)
俺は教室の壇上から辺りを見渡していったんだけど、ほぼ全員が女の子だった。男子生徒は俺を入れてたったの4人に対して、女子生徒は30人近くもいる。
今まで男子校に通ってた身としてはこんな状況だとちょっとだけ緊張をしてしまうな。まぁでも皆同い年なんだしすぐに仲良くなれるだろう。多分だけど。
「はい、自己紹介ありがとう、上神君。それじゃあまだホームルームの時間も少し残ってるし……せっかくだから何か一つくらい質問に答えて貰いましょうか。よし、それじゃあ誰か質問したい人ー」
「はいはいー! 質問でーす! 上神君は彼女とかいるんですかー?」
「おー、それナイスな質問じゃん! めっちゃ知りたい知りたい!」
「あ、私もそれ聞きた―い! 教えて教えて上神君ー!」
すると一人の女子生徒が手を大きく上げてそんな質問をしてきた。そしてその質問に同調するようにして周りの女子達も一斉に聞きたいと言い出してきた。
「えっ? い、いや、彼女とかそういうのは一度も出来た事ないですね」
クラスメイトの女子からそんな質問をされるのは流石に恥ずかしいなと思いつつも、俺は嘘をつかず真面目にそう答えていった。すると……。
「「「お~~~~~!」」」
すると何故かクラス全体のボルテージが上がり始めていった。な、何で俺に彼女がいない事でテンションが上がる事に繋がるんだ?
「はいはい、アンタ達にとって嬉しい回答が得られて良かったわね。それじゃあ質問タイムはこれで終わりよ。そろそろホームルームも終わりだから上神君も自分の席に移動していってね。君の席は一番後ろの窓際の空いてる席だからそこに座ってね」
「あ、はい、わかりました」
という事で俺は一番後ろの窓際の席に移動してそこに着席していった。そのまま俺は隣の席に座ってる女子生徒の方に視線を送ってみた。
―― カリカリカリ……
隣の女子生徒は真面目に自主勉強をしている所だった。勉強の邪魔をするのは良くないって思ったんだけど……それでも初対面だしちゃんと挨拶をしておくのが礼儀だと思ったので、俺はお隣さんに声をかけていってみた。
「これから半年間よろしくね。えぇっと、君の名前は……?」
「天城桜子」
「え? あ、あぁ、うん。よろしくね、天城さん」
「ん」
―― カリカリカリ……
その女子生徒……天城さんはそう一言だけ言って勉強に戻っていった。俺の顔を見る気はないようでひたすらノートを見ながらペンを動かし続けていっていた。
(あれ、何だか思っていたよりも塩対応されちゃったな)
先程のクラス全体のテンションの上がりようからして、隣の女の子も俺に向かって積極的に話しかけてきてくれるのかなって思ったんだけど、でも実際はそんな事もないようだ。
(うーん、まぁでもそりゃそうだよな)
だって元の現実世界でも女子生徒が転校してきたとして、その女子に対して男子生徒全員が興味を持って話しかけるわけないもんな。だから天城さんみたいに俺に興味なんかなくて勉強に集中する女子生徒がいてもおかしくないよな。
という事で俺はそんな事を冷静に思いながらも、改めて隣の女子生徒である天城さんの姿を観察していった。
今は座っているから身長とかはわからないけど多分平均くらいの身長だと思う。体型はとてもほっそりとした感じの女の子だ。見た目は黒髪の三つ編みヘアにしており、大きくてオシャレな丸メガネを着用している。
そして凄くピッシリとした姿勢で勉強を続けているので、何だかとても真面目なタイプの女の子なんだろうなっていう印象だ。
そんな感じで俺の印象としてはアニメとかマンガで登場しそうな古風なタイプの図書委員長ちゃんみたいな感じに思えた。何だかアニメとかでよく登場しそうな真面目っ子みたいな感じだ。
「……何? どうしたの?」
「えっ? あ、あぁ、いや、なんでもないよ」
俺はそんな分析をしながら天城さんをジっと見つめていると、どうやら俺の視線に気が付いたようで天城さんはそう尋ねてきた。なので俺は慌てながら何でもないと言っていった。
「そう」
―― カリカリカリ……
すると天城さんはそう言ってまた自分の勉強に戻っていった。天城さんはそれ以上何も言わなかったけど、でも流石に男子生徒からジロジロと見られて不快だったのかもしれないな……。
という事で俺はすぐに反省してそれ以上天城さんをジロジロと見るのは止めて教壇の方に視線を戻していった。




