10話:困ってる人を手伝ってあげる
都内の高校に転校してから一週間程が経過した。
今の所は貞操逆転世界とは言っても変な問題とか何も起きずに普通に学園生活を送る事が出来ていた。もちろん現実世界と比べたら女子の数が圧倒的に多いからまだまだ緊張してしまう事は多いんだけど。
まぁでも男女比がおかしくなってる以外の違和感はなく過ごせているので、今の所は普通に毎日楽しく生活する事が出来ていた。
そして今日は思いのほか早く起きる事が出来たので、今日はいつもよりも早めに学校に行ってみる事にした。
「はは、やっぱり朝早くに登校すると清々しい気分になるよなー……って、あれ?」
「うんしょ……うんしょ……」
俺はそう呟きながら学校の廊下を歩いていっていると、大量のノートを両腕に抱えた女子生徒を見つけていった。女子生徒のネクタイの色からして三年生のようだ。
(うーん、もしかして先生に雑用でも頼まれた感じかな?)
俺はそんな事を思いながらも、三年生の先輩が困ってるようなら手伝おうと思ってすぐに声をかけていった。
「おはようございます、先輩」
「うんしょ……うんしょ……って、えっ? あ、うん、おはよう? えっと、君は……?」
「俺は二年生の上神と言います。もし良ければそのノートを運ぶの手伝いますよ?」
「えっ? て、手伝うって? 君が? でも君は男の子だよね?」
俺がそう言っていくと先輩はかなりビックリとした表情を浮かべていった。俺はそんなビックリとした事を言ったつもりは全然ないんだけど。
「はい。もしかして駄目ですか?」
「い、いや、全然駄目とかじゃないけど、でも男の子にこんな雑用なんてやらすわけにはいかないというか……」
「いやいや、困った時はお互い様ですよ。俺も先輩の役に立ちたいですし、だからほら、俺にもノートを運ばせてください」
「あ……う、うん。ありがとう。それじゃあノート運びを手伝ってくれるかな?」
「はい、わかりました。それじゃあお手伝いさせて頂きますね」
「うん、ありがとう。それじゃあ……はい、これ」
俺は先輩からノートを半分受け取っていった。半分だけでもそこそこ重さがあった。これは先輩一人で持って行くのは中々に大変だっただろうな。
「え、えっと、大丈夫かな? ノート重くはないかな?」
「全然大丈夫ですよ。それでこのノートは何処まで運んでいけばいいんですかね?」
「うん、それじゃあその……三年の教室まで一緒に運んでいってくれるかな? 三階の教室だからちょっと遠いんだけど大丈夫かな?」
「はい、もちろん大丈夫ですよ。それじゃあ先輩の後に付いて行きますね」
「う、うん。ありがとう。それじゃあこっちだよ」
という事で俺はその先輩の後ろを付いて行って、三年生の教室までノートを運んでいった。
◇◇◇◇
それから数分後。
俺達は三年生の教室に到着したので、そのまま俺達は教壇の机の上にノートをドサっと置いていった。
「ふぅ、一緒にここまで運んできてくれて本当にありがとう、上神君。ふふ、君はとても優しい男の子なんだね」
「いえいえ、当然の事をしたまでですよ。でも先輩は女子なのに一人でこんな重いノート運びを先生に押し付けられて大変でしたね」
「いやいや、そんな事はないよ。男の子は人数が少ないから基本的に雑務は私達女子の仕事だしね。だから男の子に助けて貰ったのは生まれて初めての経験だったよ」
「え? そうなんですか? あぁ、でもそっか……」
俺は先輩からそんな話を聞かされて少しビックリとしていったんだけど、でもよく考えたらこの世界は男の数が圧倒的に少ない世界なんだよな。
だから元の現実世界よりも男というのはとても大事な存在として扱われてるのかもしれないな。
(でもそれだとさ……この世界の女子達は雑務ばっかりやらされて大変な目に遭ってるんじゃないのかな?)
さらに今の話の流れだと、おそらくこの世界の男子達は雑務をしてる女子の事を助けたりはしないのが普通の感じのようだ。何だかそういうのはちょっと寂しいと思う。
俺は今までずっと田舎に住んでたからだとは思うけど、困った時は老若男女問わず皆で助け合おうという精神をずっと持って生きてきた。
だからそんな助け合いの精神をこの貞操逆転世界の男子達はあまり持ってないようなので、俺はその事がちょっとだけ残念な気持ちにもなっていった。
「……? どうかしたのかな? 上神君?」
「え? あ、いえ、何でもないです。それじゃあそろそろ自分の教室に帰りますね」
「あぁ、うん、そうだね。もうすぐ朝のホームルームが始まる時間だもんね。それじゃあ今日はありがとうね」
「はい、それじゃあ失礼します」
「うん、それじゃあね」
そう言って俺は先輩に挨拶をしていってから三年生の教室を出て行った。そして自分の教室に向かって行きながら……俺はこんな事を考えていった。
(うーん、この世界だと俺の考え方はあまりいないのかもしれないけど……でもやっぱり俺はこれからも助け合いの精神は持ち続けていきたいな)
この貞操逆転世界では助け合いの精神を持ってる男子はあまりいないようだ。だから俺もこの世界で普通に生きていくのであれば、他の男子と同じような行動を取るべきなのかもしれない。
だけど俺は母さんからいつも“どんな事があっても困ってる人がいれば優しく手を差し伸べられる立派な大人になるのよ”と言われて育ってきた。俺はそんな母さんの教えを破るつもりはない。だから俺はこれからも出来る限り人の役立つ事をしながら過ごしていこうと思っていった。
「ま、そんな事を言ってもすぐに困ってる人なんて見つかる訳ないだろうけどな……って、あれ?」
そんな事を呟きながらノンビリと廊下を歩いていると、廊下の先でうずくまっている女子生徒を発見した。まさか二連続で困っている生徒を発見してしまった。
「う、うぅ……」
その女子生徒は廊下にうずくまりながら辛そうなうめき声をあげていた。俺はどうしたんだろうと思いながら一旦冷静にその女子生徒を観察をしてみた。
その女子生徒は体操服を着ていた。全体的にほんのりと汗をかいている感じがした。なのでもしかしたら彼女は先ほどまで部活の朝練とかをしていたのかもしれないな。
そしてその女子生徒は半袖半ズボンの体操服だったので大胆に素肌が露出していた。うん、非常に健康的でスラっとした素足が見えてとても眼福だなぁ。
(……って、いや、今はそんな事を冷静に分析してる場合じゃないよな)
という事で俺はうずくまっている女子生徒の元に急いで駆け寄っていき、すぐさま俺はその女の子に話しかけていった。
「え、えっと、どうしたのかな? 体調でも悪いのか?」
「う、うぅ……って、え? あ、は、はい……大丈夫です、先輩……」
すると女子生徒はふらふらになりながらも顔を上げてきた。そして俺のネクタイの色で二年生だと判断してすぐに先輩だと言ってきてくれた。
という事はどうやらこの女子生徒は一年生のようだ。とりあえず後輩の意識はしっかりとあるようなので俺はホッと一安心した。
「あぁ、良かった。とりあえず意識はあるんだな。それでどうしたんだ? 体調が悪くなったのか?」
「あ……は、はい……今日は久々に部活の朝練があったんですけど……朝練が終わって廊下を歩いてたら何だか今になって突然と立ちくらみが……うっ……」
女子生徒は俺に自身の状況を説明してきてくれた。確かに見た感じ顔がちょっと青白くなっているような感じがした。
「なるほど。そういう事ならひとまず保健室に向かった方が良さそうだな。よし、それじゃあ肩を貸してやるから一緒に保健室まで行こうぜ?」
「えっ? い、いや、で、でも……私、汗かいちゃってるから汚いですよ……そ、それに匂いとかもしちゃうかもですし……」
「そんなの全然気にしないから大丈夫だよ。困った時はお互い様だしさ。だからほら、遠慮せずにさっさと行こうぜ?」
「え……あ、は、はい、わかりました……そ、それじゃあその……肩をお借りします……」
「おうよ」
という事で俺はその女子生徒に肩を貸して保健室まで連れて行ってあげた。そしてすぐに看護教諭に診察をして貰った。
診察の結果はどうやら朝ごはんを食べずに運動をした事でエネルギーが足りなくなって立ち眩みが生じたとの事だった。とりあえず女子生徒はエネルギーゼリーを補給してから少し間保健室のベッドで休む事となった。
「あ、ありがとうございました、先輩。保健室まで連れてきてもらって本当に感謝です。この御恩は一生忘れません……!」
「はは、良いって良いって。君が大丈夫そうで本当に良かったよ。それじゃあこれからは体調管理に気を付けてしっかりと部活を励んでいってな」
「は、はい、わかりました……! こ、こんなにも親切にして頂き本当にありがとうございました!」
「あぁ、それじゃあな」
俺はその女子生徒から感謝の言葉を貰ってから保健室を出て行った。うん、女子生徒が大怪我を負ってしまったとかじゃなくて本当に良かったな。




