↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/43

整理記録に残された日付

王立記録院から戻った翌朝、ヴィオレッタ・ヴァレンシュタインは、前日にまとめた調査記録を読み返していた。


分類体系の改訂時点で、現在の番号への対応が確認されていない旧番号が存在した。


その事実は確認できたものの、その後の処理については分かっていない。


資料が別の番号へ移されたのか。整理作業が途中で止まったのか。それとも、別の形式で管理されるようになったのか。


いずれも可能性にすぎなかった。


「……次は、改訂後の整理記録ね」


ヴィオレッタは手帳を閉じ、出発の準備を始めた。


王立記録院に到着すると、閲覧室の窓際でノア・ヴァルケインが書類を確認していた。


「今日は整理記録を調べるのだったな」


「ええ。昨日見つけた付属文書が作成された後、旧番号がどう扱われたのかを確かめたいの」


「なら、改訂直後だけでなく、その数年後の記録も見たほうがいい。分類体系は一度変更して終わりとは限らないからな」


「同意するわ。変更直後の記録だけでは、その後の整理が完了したかどうか分からないもの」


二人は資料管理窓口で申請を済ませ、改訂後の整理記録を閲覧することになった。


運ばれてきた帳簿には、旧番号の確認作業や、目録の更新状況が年代順に記されていた。


最初の数ページには、分類番号の置き換えが完了した資料の一覧がある。


別の部署へ移管された資料についても、受け渡しの日付や担当者の署名が残されていた。


ヴィオレッタは一つずつ記録を確認し、調査対象の番号を探した。


しばらくして、彼女の目が一つの行で止まった。


「ノア、ここに日付があるわ」


その行には、以前から調べていた旧分類番号と、整理作業を行った日付が記されていた。


ただし、現在の分類番号は空欄になっている。


備考欄には、短い文章が添えられていた。


『再確認を要する』


「整理作業そのものは行われていたのね」


「そうだな。ただ、何を確認したのかまでは書かれていない」


ノアは前後の項目を確認した。


同じ帳簿には、番号の変更が完了したものもあれば、保管場所の再確認が必要とされたものもある。中には、後日、別の帳簿で処理結果が追記されている例もあった。


「この記載だけでは、作業が中断されたのか、別の担当者へ引き継がれたのか判断できないわね」


「後日の追記があるか確認しよう」


二人は同じ番号が後のページに記されていないか、慎重に調べた。


しかし、該当する記録は見つからなかった。


その代わり、少し後の年代に、旧分類の資料を再点検したという報告が残されていた。


報告書には、複数の番号について再確認を行ったことが記されている。


ところが、個々の番号の処理結果は添付資料にまとめられているらしく、本文だけでは対象を特定できなかった。


ヴィオレッタは報告書の名称を手帳に書き留めた。


「また付属資料ね」


「古い行政記録では珍しくない。本文を簡潔にして、一覧や詳細を別紙にまとめていたのだろう」


「その別紙が残っていればいいのだけれど」


「残っているかどうかを確認するために、申請するんだ」


「ええ。分かっているわ」


二人は報告書の付属資料について閲覧申請を行った。


手続きを終えた後、ヴィオレッタは改めて整理記録を見直した。


彼女が気になっていたのは、日付だった。


旧分類番号に「再確認を要する」と記された日付と、再点検の報告書が作成された日付。その間には、数年の隔たりがある。


この期間に何が行われていたのかは、まだ分からない。


単に作業の優先順位が低かったのかもしれない。担当部署の変更や、別の業務への対応で時間がかかった可能性もある。


あるいは、再確認の対象が広範囲に及んでいたのかもしれない。


「この空白の期間について、何か分かる資料はあるかしら」


ヴィオレッタが尋ねると、ノアは別の帳簿を開いた。


「当時の担当者の配置記録なら調べられる。ただ、担当者が変わったからといって、それが遅延の原因だったとは限らない」


「もちろん。まずは事実を確認するだけよ」


二人は職員の配置記録を調べた。


すると、再確認が必要とされた時期に、分類管理を担当する部署で人員の変更があったことが分かった。


ただし、その変更は通常の人事異動として記録されており、特定の資料に関係していたという記述はない。


「これも、可能性の一つにすぎないわね」


「そうだな。人事異動と資料の未確認状態が同じ時期にあった。それ以上の関係は、まだ証明できない」


ヴィオレッタは、その点も手帳に書き加えた。


調査を終える頃には、窓の外から午後の光が差し込んでいた。


今回の調査で確認できたのは、対象の旧分類番号が改訂後の整理記録に登場し、再確認を要すると記されていたことだった。


さらに数年後、旧分類の資料を再点検した報告書が作成されていた。


しかし、その報告書の付属資料はまだ確認できていない。


資料の処理が完了したのかどうかも、分からないままだった。


「次は付属資料ね」


ヴィオレッタが申請書を整理しながら言った。


「そこに対象の番号があれば、少なくとも再点検の結果は分かるかもしれない」


「ええ。ただし、結果が記録されていなければ、別の方法を考える必要があるわ」


ノアは頷き、申請書の控えを手に取った。


「君は、結果が出ない可能性まで最初から考えているんだな」


「そうしないと、期待した結果が出なかったときに困るでしょう?」


「なるほど。調査にも心の準備が必要ということか」


「あなたの場合は、まず帳簿に期待しすぎないことね」


「その忠告は、もう十分に受け取った」


二人は閲覧室を出た。


屋敷に戻ったヴィオレッタは、机の上で調査記録を整理した。


そして、今日確認した事実を一文にまとめた。


『対象の旧分類番号は改訂後の整理記録に残されていたが、処理結果は確認できない。後年の再点検報告書に付属資料が存在するため、その内容を確認する必要がある』


書き終えた彼女は、少し考えた後、最後にもう一文を加えた。


『日付が残っていることは、出来事の順序を示す。しかし、その間に何が起きたかまでは教えてくれない』


ヴィオレッタは手帳を閉じた。


明日、付属資料が閲覧できれば、新しい事実が見つかるかもしれない。


何も見つからない可能性もある。


どちらにしても、今の段階で答えを決める必要はなかった。


彼女は机の灯りを消し、窓の外に広がる夕暮れを見つめた。


過去を知るためには、記録を読むだけでは足りない。


記録が残された時代と、その記録が伝えられてきた過程も理解しなければならないのだから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。