頼もしい仲間が出来ました
ゆるゆると書いてます。
変なところがあれば都度ストーリーに関わらない程度に直しております。
それからの寧々は、ダンジョンの攻略を急ぐのをやめた。
もっと下へ、もっと強く。
もちろんそういう気持ちもあったけど今は、それよりもやりたいことがあった。
だけど必要な素材を集めて家に帰って、服を作って、ぬいぐるみを強化する。
そんな時間の方がずっと楽しかった。
本も読むようになったし、ネットも見るし、服屋さんにも足を運ぶ。
前までは可愛いと思った服を眺めるだけだったけど、今は違う。
どういう形になっているのか。
どんな素材を使っているのか。
どんな組み合わせが可愛いのか。
自然とそういうところに目が向くようになっていた。
ただ、ダンジョンの中では少しだけ環境が変わっていた。
気付けば声をかけられることが増えていたんだ。
でも、その頃の寧々は頭の中が服と素材とぬいぐるみでいっぱいだった。
考えることが多すぎて、呼ばれていること自体に気付かないこともある。
だからなのか。
「なんだよ。有名になったからって調子に乗ってんじゃねえよ」
そんな言葉を投げられることもあった。
別に無視したわけじゃないのに。
でも説明するのも面倒だった。
やることがいっぱいあるから。
本当にそれだけだった。
それでも。
あの時サインを書いた涼花ちゃんだけは変わらなかった。
可愛い服を見せてくれたり、新しく買った小物の話をしたりして普通に話してくれた。
だから寧々も自然と話すようになった。
嫌なことがなかったわけじゃない。
だけど、それ以上にやりたいことが多かったから気にならなかった。
そして。
そんな毎日を続けた結果――。
『スキル『魔装設計』を習得しました』
その文字を見た時は思わず飛び上がりそうになった。
「やった……っ!」
ずっと欲しかったスキルだ。
裁縫はできるし、強化もできる。
でもデザインだけは感覚頼りだった。
それが形になった。
これで服作りも、ぬいぐるみ作りももっと思い通りにできる。
嬉しくて、その日は夜遅くまで設計画面を眺めていた。
それからは素材集めの日々だった。
クマ、ウサギ、犬、鳥。
作ると決めたぬいぐるみのために必要な素材を集め続ける。
毛皮に牙。
爪や羽と嘴。
欲しい素材が出るまで何度も潜った。
気付けば部屋の中には大きなぬいぐるみが並んでいた。
どれも寧々の自信作だ。
何度も縫い直して、納得できるまで手を加えてようやく完成した。
「うん」
思わず頷く。
可愛い。
すごく可愛い。
器は完成したから、あとは魂だけ。
どの魂を入れるかはもう決めている。
まずは全員に『疑似生命』をかけておく。
そして寧々は7層へ向かった。
目標はダスクラビットで、今となっては苦戦する相手じゃない。
拘束したダスクラビットに向かって4本の短剣が次々と突き刺さる。
そして、最後の一撃が命を刈り取る瞬間。
「『死霊使役』」
ぽつりと呟く。
すると寧々の頭上に黒い靄が現れた。
小さな穴みたいな、ブラックホールみたいな不思議な黒。
倒れたダスクラビットの身体から紫色の煙がふわりと浮かび上がり、その中へ吸い込まれていく。
「出来たのかな……?」
少し不安になりながらステータスを開く。
使役欄には確かに『ダスクラビット』の文字が表示されていた。
「よし」
思わず小さく拳を握る。
その後も9層でヘルハウンド。
10層でハウルベア。
そしてエリアボスのクリムゾンビークと、順番に魂を集めていった。
そして11層のエントランス。
誰もいない場所に4体のぬいぐるみを並べる。
初めて使うスキルだから少しだけ緊張する。
「『死霊縫合』」
その瞬間、使い方が頭の中へ流れ込んできた。
黒い靄の中から4つの紫色の魂が現れる。
ゆらゆらと漂うそれらに向かって、寧々は魔糸を伸ばした。
クマにはハウルベア。
ウサギにはダスクラビット。
犬にはダークハウンド。
そして鳥にはクリムゾンビーク。
糸で縫い合わせるように丁寧に、慎重に魂と器を繋いでいく。
紫色の光がぬいぐるみへ染み込んでいく。
やがて最後の魂も完全に溶け込んだ。
「みんな、大丈夫かな……?」
不安になって声をかける。
すると。
『うん、これが新しいカラダなんだね』
真っ先に返事をしたのはぴょん吉だった。
『ああ、ちょっと動きづらいけどな』
犬のぬいぐるみが身体動かしながら答える。
『なるほどな。よし、少し飛んでみるか』
鳥のぬいぐるみがふわりと浮いた。
『不思議な感覚だな。羽を動かさなくても飛べる』
「すごい……!」
思わず声が漏れる。
それだけじゃない。
ちゃんと会話ができて、今まで以上に近く感じる。
「みんなと話せるなんて嬉しいよ」
そう言った瞬間だった。
『寧々、これでお前のことをちゃんと守れるようになったからな』
熊太郎が胸を張る。
『安心してくれよ』
「……うん」
気付けば抱きついていた。
ふわふわだ。
前よりもっと温かく感じる。
その後、犬にはポチ。
鳥にはカーくんと正式に名前を付けた。
『ポチか』
『カーくん……か』
なんとも言えない反応だったけど、寧々は気にしない。
可愛いから。
それが大事。
改めてステータスを確認する。
ダスクラビット:ぴょん吉
ダークハウンド:ポチ
ハウルベア:熊太郎
クリムゾンビーク:カーくん
全員ちゃんと表示されていて、ステータスも見える。
レベルはまだ寧々より低いけど得意分野だけは寧々より高かった。
スキルも使えるしすごく頼もしい。
それに、ぬいぐるみを作る過程で『裁縫術』もレベル3になっていた。
服の素材も集まって、デザインも完成している。
やることはまだ山ほどある。
だけど、今だけは少し嬉しかった。
「じゃあみんなで今日は探索してみよっか」
『おう』
『うん!』
『任せろ』
『行くぞ』
こうして寧々と4体のぬいぐるみという少し変わったパーティは、ダンジョンの奥へ向かって歩き出した。
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