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人形姫は愛されたい  作者: 道雪ちゃん


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15/25

余計なモノを追い出しました

ゆるゆると書いてます。

変なところがあれば都度ストーリーに関わらない程度に直しております。

 可愛くないけど、使ってみたらとんでもなく便利だったマジックバッグ。


 熊太郎もぴょん吉も、元々リュックに入っていた荷物も。


 今日買った服も、本も、手芸用品も。


 全部まとめて詰め込んだはずなのに、まだまだ余裕があるみたいだった。


「すごい……」


 思わず小さく呟く。


 しかも重くない。


 服なんて何着も買ったし、本だって何冊もある。


 普通のリュックだったら肩が痛くなっているはずなのに、背負っている感覚はほとんど変わらなかった。


 見た目も変わらない。


 膨らんでいる様子もなく、ただの真っ黒なリュックのまま。


 便利なのは認める。


 認めるけど――。


「可愛くないんだよね……」


 黒一色のシンプルな見た目。


 せっかく服にこだわっているのに全然合わない。


 どうやって改造しようかな。


 大きなリボンとか付けてもいいかもしれない。


 そんなことを考えながら家の玄関を開けた。


「……っ」


 視界に入った靴を見た瞬間、気分が一気に下がった。


 見覚えのある革靴。


 パパの靴だった。


 さっきまで楽しかった気持ちが、すっと冷えていく。


 今日は探索も頑張ったしジョブも進化した。


 買い物もいっぱいできたし、帰ったら強化の準備をしようと思っていたのに。


 寧々は何も言わず、そのまま2階へ向かおうとした。


 その時だった。


 ガチャッ。


 リビングの扉が開く。


「寧々、お願いだ。ちょっとパパと話そう」


 聞き慣れた声。


 でも今は少し疲れて聞こえた。


 どういうつもりなんだろう。


 今更だよ。


「寧々が嫌ならもうここには来ないから。頼む」


 少しだけ迷う。


 でも、これで終わるならいいかなと思った。


「……わかった」


 仕方なくリビングへ入る。


 パパは椅子に座っていて、寧々は向かいのソファーへ腰を下ろす。


 少し距離があるけど、今はその距離がちょうどよかった。


「何を話したいの?」


 パパからの電話は何度も来ていた。


 メッセージも届いていた。


 家にも来ていた。


 でも車が止まっているのを見れば分かるから避けていた。


 週末は探索を長引かせて、できるだけ遅く帰った。


 会いたくなかったから。


「とにかく謝りたかったのと、ママとのこと。これからのことをちゃんと話したくて」


 聞きたくない。


 正直、それが最初に浮かんだ感想だった。


 そんなことより早く部屋に戻りたい。


 買った本も読みたいし、新しい装備のことも考えたい。


「寧々は予定あるから早く終わらせて」


 口に出した瞬間、自分でも少し驚いた。


 こんな言い方、昔の寧々なら絶対にできなかった。


 嫌われるのが怖かったから。


「ご、ごめんな。ママとの離婚もちゃんと終えて、親権のことは、寧々が電話に出てくれなかったからメッセージで送った通りだよ」


 あぁ、あの話か。


 少しだけ視線を落とす。


 あのメッセージを読んだ時だけは泣いた。


 親権はパパ。


 ママは慰謝料を受け取って1人で再出発するんだって。


 それを読んだ時、あぁ、やっぱり寧々はいらなかったんだなって思った。


「でね、この家は寧々のために残すし、寧々が自由に使っていいからね。それで、これ」


 差し出されたクレジットカード。


 見覚えがある。


 何度もテーブルの上に置かれていたカードだ。


 捨てるわけにもいかなくて、そのまま放置していた。


「要らないよ。寧々ちゃんと稼いでるし」


「稼いでるって言っても、寧々は子供だよ。16歳の女の子なんだ。パパは親としてサポートしたい」


 その言葉を聞いた瞬間、胸の奥がじわっと熱くなった。


 嬉しさではなく、苛立ちだった。


「意味がわからないよ、パパ」


 声は思ったより冷たかった。


「寧々はもう探索者として、そこら辺の大人より稼いでるし。それにサポートってなに? 全然帰ってこなかったのに?」


 パパの顔が少し固まる。


 でも止まらなかった。


「寧々が引きこもってたから? 虐められてたのがいけなかったのかな?」


「それは――」


「違うでしょ」


 自分でも不思議だった。


 怒鳴っているわけじゃないけど、言葉だけは次々に出てくる。


「そ、それでも、これからはちゃんとしたいと思ってて……」


「パパって社長でしょ?」


 パパが黙る。


「寧々よくわからないけどさ。これからは、とか。今度こそ、とか。そういう言葉って信用とか信頼があって初めて意味があるんじゃないの?」


 返事はなかった。


 ただ下を向いている。


 少しだけ息を吐いて、寧々は聞いた。


「ねぇ、パパ」


「……なに?」


「寧々は可愛くなかった?」


 数秒遅れて返事が返ってくる。


「可愛いに決まってる。宝物だよ」


「嘘だ。宝物なら近くに置いて大事にするはずだもん」


 パパの肩が震える。


「でも、パパは他に宝物を見つけちゃったんだね」


 また下を向いた。


 もう顔を見てくれない。


「パパに1個甘えるなら、お金は要らないからこの家だけは残して。寧々が出ていくまでは」


「出ていくなんて言わないでくれ。ずっとここにいていいから」


「"一応"パパは親だから、黙っていなくなることはしないよ」


 部屋に向かうために立ち上がる。


「寧々は探索者として頑張っていくから気にしないで」


 もう十分だった。


 でも、パパはまだ食い下がる。


「で、でもな。女の子が探索者なんて危ないことをしなくてもいいだろ? パパは心配なんだよ……」


「半年」


「え?」


「探索者になってもう半年」


 寧々は振り返る。


「上野ダンジョンで3番目のスピードで10層を攻略したよ。ソロでは1番だって」


 少しだけ笑った。


「だから親面も、心配もしなくていいから彼女のところに戻りなよ」


「か、彼女とはもう別れたから……」


 弱々しい声だ。


「パパはもう1人なんだ」


「あ、そう」


 全然興味はなかった。


「でも、寧々もずっと1人だったから」


 それだけ言って歩き出す。


「パパ、寧々は大事にされたかったよ」


 立ち止まる。


「たぶんママもね」


 少しだけ寂しそうな顔をしたパパが見えた。


「次の彼女は大事にしてあげてね」


 そして。


「バイバイ」


「待って! 待ちなさい!」


 腕を掴まれて少し痛かった。


 寧々は反射的に糸を伸ばす。


 シュルッ。


 パパの腕に糸が巻き付き、そのまま拘束した。


「うっ!?」


「痛かったよ、パパ。気をつけてね」


 拘束を解いて、今度こそ部屋へ戻った。


 階段を上りながら小さく息を吐く。


 あんな顔見たくなかったな。


「……寧々が悪いみたいじゃん」


 誰に言うでもなく呟いて部屋に入る。


 マジックバッグから買った本を取り出して机に座ると、すぐにページを開く。


 文字を追い始めると、少しずつさっきのことが頭の端へ追いやられていった。


 今は余計なことは考えたくない。


 寧々には、やることがいっぱいあるんだから。

ブックマーク、リアクション、評価をしていただけると幸いです。

よろしくお願いいたします。

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