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人形姫は愛されたい  作者: 道雪ちゃん


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17/17

またいなくなりました

ゆるゆると書いてます。

変なところがあれば都度ストーリーに関わらない程度に直しております。

 今までの寧々は、探索と裁縫を半分ずつくらいの割合で続けていた。


 だけど最近は違って、体感では探索が2割、裁縫が8割。


 ダンジョンへ潜るのも素材集めが目的で、レベル上げや攻略はそのついでみたいなものになっていた。


 服のデザインを考えている時も楽しいし、素材を組み合わせている時も楽しい。


 完成したぬいぐるみたちを眺めながら次はどう改造しようか考える時間なんて、気付けば何時間も経っているくらいだった。


 そんなある日、スマホが震えた。


『寧々ちゃん、今上野ダンジョンに来てるんだけど、今日は来ない?』


 涼花ちゃんからのメッセージだった。


 最近の涼花ちゃんは、新しくできた彼氏さんと一緒に探索しているらしい。


 正直なところ、その彼氏さんには全く興味がなかった。


 でも涼花ちゃんとは話したかった。


 可愛い服の話もできるし、新しいアクセサリーを見せてくれたりもする。


 だから寧々は作業の手を止めて、上野ダンジョンへ向かうことにした。


 半年も経てば色々変わるもので、上野ダンジョンの施設も前とはかなり違っていた。


 更衣室兼ロッカールーム。


 それにシャワールームまで設置されている。


 探索者の数が増えたからだろう。


 でも、寧々は家から装備を着てくるからあまり使ってなくて、汚れた時くらいだった。


 建物へ入ると、ロビーから駆け寄ってくる人影が見えた。


「寧々ちゃーん!」


 次の瞬間にはぎゅうっと抱き締められる。


「会いたかったよぉ!」


「寧々も会いたくて来ちゃった」


 そう返すと、涼花ちゃんは本当に嬉しそうに笑った。


 その笑顔を見ると、来てよかったなと思う。


 ロビーには彼氏さんもいて、軽く会釈をしてきた。


「どうも」


「どうも」


 寧々も一応挨拶だけ返す。


 それからはほとんど涼花ちゃんと話していた。


 作ってる服のことだったり、覚えたスキルのこと。


 ぬいぐるみたちのことや、ダンジョン攻略のこと。


 話題はいくらでもあった。


 そんな風に話していると、涼花ちゃんが立ち上がる。


「あ、じゃあちょっと着替えてくるね」


「うん」


 そう言って更衣室へ向かう背中を見送った直後だった。


「ねえ」


 彼氏さんが声をかけてくる。


「連絡先教えてよ」


 一瞬、何を言われたのかわからなかった。


 数秒考えても意味がわからないし、理解出来ない。


「いやです。涼花ちゃんの彼氏さんでしょ?」


「いいじゃん。彼女の友達なんだから別に普通だろ?」


 軽い口調。


 でも寧々は嫌だった。


 というか普通じゃないと思う。


「寧々には教える必要ないから。それに涼花ちゃんが嫌がるかもしれないし」


 仲良くなった人は大切にしたい。


 簡単に信用するつもりはないけど、それでも涼花ちゃんは信用した相手だった。


 だから嫌だった。


「ふーん……あっそ」


 さっきまでの笑顔が消えて、口元だけが嫌な感じに歪んだ。


 その瞬間、なんとなく理解した。


 ああ、この人こういう人なんだ。


 涼花ちゃん騙されてるんだって、そう思った。


 だからその日の夜に、寧々の方から通話をかけた。


 ちゃんと話しておこうと思ったから。


「もしもし、涼花ちゃん?」


『あのさ』


 返ってきた声に違和感を覚える。


『こっちも話したいことあったから、ちょうどかけようと思ってたんだけど』


 いつもの柔らかい声じゃなかった。


 冷たいというより怒っていて、思わず背筋が固くなる。


「いいよ。涼花ちゃんから話して」


 少しだけ間が空いた。


 そして。


『あのさ、うちの彼氏に何言ったの?』


「どういうこと?」


 本当に意味がわからなかった。


 だけど次に続いた言葉で頭が真っ白になる。


『あの子はやめて寧々と付き合ってよって言ったんでしょ?』


「……え?」


 一瞬、本気で理解できなかった。


 身に覚えがなさすぎる。


 むしろ逆だ。


 寧々は涼花ちゃんを心配して連絡したのに。


「ちょっと待って」


 声が掠れる。


「身に覚えがなさすぎて混乱してる」


『ちょっと有名だからって人の物取ろうとか調子に乗らないでよ!』


 その言葉を聞いた瞬間、胸の奥がひどく冷えた。


 ああ、涼花ちゃんも言うんだ。


 何度か聞いた言葉。


 有名だから調子に乗ってるって言葉。


「そう……」


 自然と声が小さくなる。


「寧々は、涼花ちゃんの彼氏さんに連絡先聞かれたから断った話をしようとしただけなのに」


『は?逆でしょ?』


 即座に返ってくる。


『聞かれたけど断っといたからって直樹が言ってたし』


 直樹……たぶん彼氏さんの名前だし、聞いたような気もしたけど、興味がなくて忘れてたのかもしれない。


 だけどそんなことはどうでもよかった。


『マジで最悪だね』


 その一言が刺さる。


『私たちに二度と関わらないで』


 ブツッ。


 通話が切れた。


 スマホの画面だけが静かに光っている。


 しばらくそのまま動けなかった。


「ハハ……」


 乾いた笑いが漏れる。


「ハハハ……」


 なんでだろう。


 仲良くなりたいと思った人たちは、みんなこうやって離れていく。


 あの彼氏さんが嘘をついたんだろう。


 断られた腹いせ。


 たぶんそうだ、それはわかる。


 でも、涼花ちゃんは、もう少しだけでも寧々を信じてくれてもよかったんじゃないかな。


 頭の中に涼花ちゃんの笑顔が浮かぶ。


 可愛い服を見せてくれた時の顔。


 嬉しそうに抱きついてきた時の顔。


 その隣に、あの男のニヤニヤした顔が浮かぶ。


 ぐちゃぐちゃに混ざっていく。


 気持ち悪い。


 苦しい。


 結局、寧々はまた1人なんだ。


 不思議と涙は出なかった。


 泣くより先に、胸の奥が痛かった。


 まるで心臓を何度も何度も刺されているみたいに。


 息を吸うだけで苦しくて、スマホを握る手に少しだけ力が入った。


ブックマーク、リアクション、評価をしていただけると幸いです。

よろしくお願いいたします。

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