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第百ニ十二話

 二日程休んでなんとか体調を戻した立花は、心配をかけてすみませんでしたと謝りった。いえいえと首を振るフレイミーに、エンデはこちらも気づかなくてすまないと謝った。テルミナだけは全くだと頷いた後に、今度からは安全第一にしてくれよと言ってひょっとしたらこれで訓練軽くならないかな~とか考えていたが、察した倉橋にぼそっと無駄だと思いますよと呟かれていた。

 そしてとうとう、必要な力が溜まった立花はその姿を変える事にした。

 シャワールーム改め浴室に変えた風呂場で服を脱ぎ、危険が無いように片膝をついてから力を使って身体を変化させていく。

 仮初で身体を大きくした時とは違って、明確に身体が熱を帯びて若干痛みもあった。成長痛にも似たその痛みをやり過ごすと、無事に成長して大きくなった手や足が見えて、思わず笑みをこぼす立花。

 ステータスを確認すると、年齢は十六歳。仮初で大きくした時よりもあと一歩大きくは出来なかったが、それでも貧弱なパラメータだった体力筋力は、一般人ほどではないが一桁台から二桁台へと上がっていた。

 やっとこれで普通に動けると噛みしめながら、用意していた服に袖を通し長くなってしまった髪をとりあえず紐で後ろに括った。


「おー! 美少年! いや、もう美青年に入りそうかな?」


 居間へと戻った立花を最初に気づいた倉橋が拍手して迎え、それに気づいたフレイミーも同じような声をあげた。


「うわーほんとだ」


 透けるような淡い金髪に、薄い茶色の目をしたイケメンのフレイミーに言われてもと思う立花。

 立花は自分の事を美形だとは思っていないし、なんならまだ若干女顔に近いところがあって嫌いですらあるのだが、客観的に見れば金髪青眼白人系美青年のエンデ、金髪茶の目の北欧系美青年のフレイミー、茶髪榛の目のハリウッドスターにいそうな線の細い垂れ目妖艶系美青年のテルミナ、そこにアジア系の切れ長綺麗系美少年の立花と合わさると各種イケメンを取りそろえたホストクラブでも出来そうだった。ちなみに倉橋は普通オブザ普通なので、この中にいると逆に浮いている。


「体調は大丈夫なのか?」


 見た目よりもまずそちらが心配だったエンデが聞けば、立花は問題ないと頷いた。

 その言葉に、おや?と思う他の面々。

 頑なに丁寧な口調を崩さない立花が、エンデに対して言葉を崩したのだ。


「殿下?」

「あぁ、ちょっと前にいろいろ話してな。身体を大きくしたらこうする予定だったんだよ」


 ちょっと恥ずかしいので立花にしてはぶっきらぼうに言うと、えーとフレイミーが声をあげた。


「じゃあ俺もそれがいいです!」


 シュビっと手をあげて要望するフレイミーに、立花はちょっと目を丸くしてから苦笑して手を振った。


「いやいや。いきなりはさすがに私も対応できないので……」


 言うと、フレイミーはわかりやすく萎んだ。

 尻尾を垂れ下げる子犬の姿を幻視して言葉につまる立花。


「確かになーそのナリでいつまでも丁寧に言われてると気持ち悪い。っていうか、いい加減どこのご子息かと誤解されるぞ」


 ずばっと言うテルミナに。なるほど、と思う立花。

 この世界で丁寧な言葉を使うのは基本的に上流階級となる。平民も多少は使うが、それは商談の時であったり、それなりの格式を必要とする場だったり、明らかに身分が上のものに接する時だったり、そういう場合だけだ。

 仲間内で立花程丁寧な言葉を使用していると、普段からその言葉遣いをしている人間、つまり貴族だと誤解されるのかと理解する立花。


「じゃあ……まぁ、努力する」


 言葉で一線引いていたところもあるので、固い言葉になる立花だったがパッと明るい顔になるフレイミー。


「でも、そうしたら倉橋もだろ」

「私? そうなんです?」


 立花に言われて、他のメンバーを見る倉橋。

 倉橋の視線を受けて、三名はちょっと首を傾げた。

 確かに、倉橋も口調は丁寧だ。丁寧の部類ではあるのだが、こうどことなくフレンドリー感が溢れているせいでそこまで気にならない。


「なんか平気そうですよ?」

「解せぬ」


 立花に視線を戻して言う倉橋に、素直に呟く立花。


「まぁそれはいいとして、エンデにお願いがあるんだけど」


 意識して言わないと口調がすぐに戻りそうになる立花は、ちょっと気恥しい思いをしながらエンデに声をかけた。


「なんだ?」

「ちょっと護身術的なものを教えて欲しいんだが、夕食前にでも付き合ってくれないかと思って」


 結界という鉄壁の守りを持つ立花が護身術?となる他のメンバーを他所に、エンデはいいぞと軽く頷いて返した。


「なんでまたいきなり護身術?」


 率直に疑問を尋ねる倉橋に、立花は両手を広げてコレと自分の身体を示した。


「慣れてないんだよ。この大きさに。だから身体を動かすのに慣れるのと一緒に、少しは対処出来るようになりたくてな」

「……筋トレは?」


 動かすならそっちの方が好きなのでは?という思いで聞く倉橋に、立花は脱力した。

 確かに、立花は筋トレは好きだし、無駄のない筋肉美も好んでいるが、状況が状況なので今はそれよりも実用的に動ける方が重要だとわかっている。

 倉橋の方も状況は理解しているが、こちらの世界に来て目覚めたばかりの立花の取り乱しようがアレだったので印象に強く残っていただけだ。

 胡乱気な目を受けて、倉橋はですよね~と言って視線をそらしたのだった。

ブクマ、評価ありがとうございます。

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