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第百十九話

 寒いので肉も野菜もゴロゴロと入った具沢山のミネストローネ風のスープをはふはふしながら食べ、そろそろ寝ますかといったところで立花に念話が届いた。


〝ユウ、今大丈夫か?〟


 グリッドからの念話に、また何かやらかしただろうかとちょっと身構える立花。


〝大丈夫ですよ〟


 倉橋が立花のちょっとした変化に気づいて首を傾げたので、立花は口パクでグリッド、と言えば羨ましそうな顔をされた。


〝ケアノスじゃなくて西の大陸なんだよな?〟

〝あぁ、今は北大陸に来たところです〟

〝……そうか。まぁ、場所はあんまり関係ないか〟


 コロコロと場所が変わる立花に、一瞬間が空いたが気を取り直すグリッド。


〝ケアノスで魔物は狩ったんだよな?〟

〝はい。皆さん結構狩ってました〟

〝これからいう魔物を狩ってたら、それをケアノスのギルドに卸してやって欲しいんだよ〟


 実はグリッドの知り合いのギルドマスターは、ひょっとすると大量の魔物を引き取る事になるかもしれないと聞いて密かに準備をしていたのだ。だが、待てど暮らせど全く音沙汰がなく、取引を多めにしていたのでちょっとやり繰りに困りだしてグリッドに泣きついた経緯があった。

 グリッドも連絡をした手前、どうにか出来そうならどうにかしてやりたいと立花に連絡してみたところだった。


〝そういう事でしたら、皆さんと繋ぎますね。実際に狩って把握しているのは皆さんなので〟

〝そうなのか。じゃあ頼む〟


 立花はこちらを見ている倉橋と、テントに入らず最初の見張り番をしているテルミナに声を掛けた。


「倉橋、テルミナさん。マスターからケアノスで卸して欲しい魔物がいるとの事です。私は全て把握してませんから、これから念話を繋げますので確認してもらえますか?」

「はい! もちろん!」

「グリッドが? いいが……なんでケアノス?」


 念話に参加できると聞いて単純に喜ぶ倉橋と、アーキリのギルドマスターの筈なのに他国のギルドに何故と首を傾げるテルミナ。

 立花はテントに入ったエンデとフレイミーにも声をかけ、了承を得ると念話を繋げた。


〝マスター、全員繋げました〟

〝おう、悪いな。ケアノスのギルドからの要望なんだわ〟

〝お前なんでケアノスのギルドなんかの小間使いみたいな事してんの?〟

〝そりゃあれだ。危機管理を共有してるからだな。

 そんな事よりだ、これから言う魔物を狩ってたら卸して欲しい〟

〝まぁいいが〟


 面倒臭い事してるんだなと思ったが、テルミナが了承を返すと他のメンバーも了解の返事を上げていき、確認作業が始まった。

 立花は戦力外なので念話自体は聞いていたがテントで休み、他のメンバーで魔法袋から該当の魔物を出し入れして整理しつつ作業を行った。

 種類はさほど多くは無かったが量はなかなかなものを言われ、いくつかの種類については要望数に届かなかったがそれでもかなりの質量となった。

 とりあえず明日ケアノスの首都メーアのギルドに卸す事となり、エンデとテルミナで出向く事になった。送るのは立花だが、帰ってくるのは転移石となった。

 未だにケアノス、特にメーアなどに立花が行くと余計な騒ぎになりそうでそのような対応となった。

 翌日、朝ごはんを食べたところで送り出し、残った立花、倉橋、フレイミーは北大陸での習慣や、雪が積もる地方の生活なんかを聞いて過ごしていた。


「こっちにも犬ぞりみたいなのがあるんですね」

「普通の荷車だとまず動かないですからね。操作技術を競う大会みたいなのがあって、優勝した商会は箔がついて荷運びの特急便を任されたりするんですよ」

「へー。面白いですね」

「あとは洗濯がすごいです」

「洗濯?」


 聞き返す倉橋に、フレイミーは大きく頷く。


「水を雪から作って洗濯をしないといけないのである程度まとめてやるんですけど、洗濯物を大体一週間ぐらい干しっぱなしにするんです。その間カチンコチンに固まってて」

「それ、乾くんです?」

「乾くんですよ。凍ってるんですけど」


 いまいちイメージが付かない倉橋に、昇華だろうなと立花が付け加える。


「地球でもそういう地域があるからな。寒いと大体空気が乾燥してるから氷のまま蒸発してカラッカラになるらしいぞ」

「へえ……でもそんなに長い事干してたら着るものが無くなってしまいそうですね」

「同じサイクルで洗濯をするからそういう事はないみたいですけど、ぱりっぱりのまま乾いてる洗濯物は不思議でした」


 確かにその光景は不思議だろうなと思う倉橋。

 風にそよぐ洗濯物しか想像がつかないのでところ変われば洗濯すら変わるのだなと想いを馳せていた。


「ところでフレイミーさん。里帰りとかします?」


 せっかく北大陸に来たので立花がそう問えば、複雑そうな顔をしてフレイミーは首を横に振った。


「いえ。寄ってもあまりいい顔をされませんから」


 なんで?という顔になる倉橋。事情がありそうな様子に立花はそうなんですか、と返したがそれ以上は深く聞かなかった。


「勇者っていったらみんな喜ぶものでは?」


 立花は深く聞かなかったが、倉橋はそのまま聞いた。

 おいおいと言う目で立花が倉橋を見ると、てへ。という顔をしていた。


「言い辛い事なら全然言わなくていいんですけど。気になっちゃって」


 すみません。と頭を掻く倉橋にフレイミーは苦笑した。


「普通はそうですね。勇者を輩出したとなったら賑わうんですけど……

 前に、俺が間に合わなくて滅ぼされたとこがあるって話したじゃないですか」


 あぁそんな話もあったなと、頷く倉橋と立花。


「それ、俺の生まれた村のすぐ近くだったんですよ」


 え。となる二人。


「俺、地元では薄情な人間だと思われてるんです」


 苦笑いを浮かべて話すフレイミー。

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