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第226話  紅蓮の天蓋


 花粉と帯状疱疹後遺症神経痛と五十肩と腺腫……「これが老いというものか」を日々実感しております。ほげぇ……。



 ゴォン! ガン! ゴンガン!!


 ラーグリフやヂァオらがそれぞれの相手と対している頃、羅刹王とロイとの戦いは未だ続いていた。


 羅刹王は怪物だ。全盛期には劣るとはいえ、その力は丸腰でも古竜を凌ぎ、真の王器使いを圧倒し、神器使いでも使い手が只人(ただびと)であれば粉砕できよう。


 天使や護法騎士、聖魔獣のような神域に手をかけた者たちであっても、能力の相性次第で敗れることもありえる難敵である。


 仙力、仙術、魔術、そして圧倒的な膂力と武術に戦闘経験。そんな全てを兼ね備えた鬼王に対し……ロイは五分の闘いを繰り広げていた。


 拳、蹴り、不可視の刃、謎の殺人光線、衝撃刃を躱しつつ、防戦一方ではない。如意棒が霊気を纏って唸っては鬼の表面を守る不可視の刃を砕き、時に赤銅の表皮にまで攻撃を届かせる。


 今の羅刹王は幻妖である。霊気操作に熟達していようと、生者の霊撃が弱点であることは変えられない。


 それでも並の霊撃なら跳ね返せるが、ロイほどの使い手が霊気を研ぎ澄ました槍の如くにすれば、羅刹王の護りを穿つ事は可能。それが凝核に刺さればただでは済まない。そのため羅刹王としてもロイの攻撃を無視できない。


 また、本来の彼我(ひが)の霊力は羅刹王のほうが上だが、ロイには霊気吸収能力がある。羅刹王が攻撃に纏わせる霊気を吸収することでその差を埋め、一方的な攻撃を許さない。


 さらには──ロイは【救世(メサイア)】の担い手である。守るべきもの、応援してくれるもの、彼に救いを願うもの……それらある限り、彼の霊力は枯渇しない。


 ニンフィアたちだけでなく、この戦場にはまだ万を超える兵がいる。仙力使いへの忌避はあっても、相手が悪夢の化身である羅刹王となれば、ロイのほうに勝ってほしいと願う兵は少なくない。一つ一つは少なくとも、それが万も合わされば無視できない。


『カカカッ! 見事なものよ、惜しむらくは、今少し貴様に建端(タッパ)があればのう!』


 羅刹王が軽口を叩く。別に自分のほうが大きいぶん有利だ、と言っているのではない。単純に、噛み合いにくいからだ。


 4シャルク(約3m)にもなる羅刹王の体格に対して、ロイはその半分ちょっと。そのため羅刹王の自認としては、かなり窮屈な動きを強いられていた。


 ──こやつがもう少し大きければ我の拳が普通に当たるのだが!


 この体格差では、どうしても打ち下ろしや蹴りばかりになる。もしくは魔術、霊気術による間接攻撃か。本来なら正面から殴り合いできるほうが「楽しい」ものを。


 お互いに飛翔しながらならば位置だけなら噛み合うこともあるが、その場合踏みしめるべき足場がないため、全力の拳撃にならない。


 結局今は二人とも大地に降り立っての闘いに戻っていた。


「知るか! むしろ貴様が縮め!」

『カカッ! 伸縮変化の霊気術は不得手でなぁ! 闘いの中では使えん』


 霊気術……仙術のことか。そんな技もあるのか。


『まあ致し方ないのう……少し変えるとするか』

 

 鬼王が少し後ろに引き、まるで正拳突きの型のような動きをとり……。


 ──神術鬼甲闘法


 ──闘技〈()吼炮(コウホウ)


 拳でなく、掌がロイのほうに突き出される。


『ハッ!』


 ブォン!!

 

 そして掌から、赤光が迸った。


 目で捉えるには速すぎる光が通り抜けた後に、かろうじてかわしたロイに熱風が吹きかかる。


「熱っ」

『出力を上げてきましたね』


 それまで羅刹王が使ってきた霊撃や謎の殺人光線は、不可視であり数は何十本と多かったものの、出力は低かった。その一つ一つは針のように絞られており、射程もさほど長くない。


 おそらくは、技の性質が特定の経絡(けいらく)を特殊な霊気や不可視の光で撃ち抜くことで被害者の霊気を暴走、自壊させるというものだからか。絞られていないと効果が落ち、人体爆裂に至らず激痛程度に留まる。


 リェンファの技がその段階だ。……極めれば彼女も人を「花」にできるのだろうか? ……考えないようにしよう。


 そうした技の都合上か、数は多くとも狙いは正確……というか、自動的に霊的急所を狙うような動きをしてくる。霊気を感じ取れない常人なら為す術なく体が爆裂するところだが……。


 ロイには却ってそのほうが対処しやすい。いざとなれば如意棒で受けたり霊鎧の部分強化で激痛程度に抑え込むこともできた。


(……ですから普通なら人間には分かってても対処不能で……(ヴァリス談))


 だが、今のこれは生物以外にも効く、より強力な破壊光線であるようだ。その結果、太く大きくなり、不可視でなくなり、追尾もしなくなった。


 羅刹王の掌から人間の頭ほどの直径の何かが通ったかのような長い円筒状の、赤橙色の光が少し広がりながら放たれ、ロイを狙う。


「ハッ! ハハ!」


 それらは時には数セグ(秒)続く薙ぎ払う光線であったり、あるいは短く数回連続での連射であったりする。


 数セグ撃ち続けると再び腕後ろに下げ構えを取り……そして再開される。この動作は溜め(チャージ)装填(リロード)のためか。


 その隙に攻撃できればと思うのだが、近づけない。威力が先程までと違いすぎる。


「……っ!……やべぇな、これ」


 外れた赤い光線に焼かれた大地が、少し熔けて液体化している。


 色とは、物体が反射ないし放射する電磁波であって、その中で人間が認識できるごく一部のものを指す。そして本来赤外線は人間には見えない。

 

 それなのに赤橙の軌跡が残り、土が溶けるとは、それだけ威力が莫大だから。仮に1、2セグもくらい続ければ命中箇所が貫通炭化するだろうし、かすっただけでも目や口に当たればヤバい。


『はっ! ふははは!!』


 そんな凶悪な光線を、この鬼は嗤いながら連続して撃ち出してくる。先程までのより明らかに避けにくい。


(くそがっ、こんなもん必殺技級の代物だろ。それを通常攻撃っぽくぽんぽん撃ってくんじゃねえよ!)

 

(『ご主人様落ち着いてください。確か以前に護法騎士から光線兵器の対処法を学んでいますよね』)


 そういえばそうだった。

 あの時学んだのは魔術だが、今なら水の仙術で霧を出せる。そのほうがずっと速い。


(『この破壊光線の波長は炭酸ガスレーザーのそれです。これは大気による減衰が低い代わりに水分に弱い』)


 よくわからんが霧が天敵なんだな。適宜ばらまくとしよう。


(『そしてここからが本題ですが』)


 なんだ?


(『ご主人様はこのタイプの攻撃を回避しなくてもいいです』)


 ?

 ……!


 そうして、ロイが霧の仙術を使って灼熱の多連装砲台と化した羅刹王に反撃を始めようとした時……事態が動いた。


 まず西方の空が金に輝く。


『ほう、金巌のやつめ! あの気配、彼奴(きゃつ)が本気を出せる相手だったか』

「古竜か!?」

 

 ついで、より近い空に炎の大蛇……いや、龍が現れる。


『あの元勇者、早々に自爆するとは……んん?』


 炎の龍が地上に突撃しようとした直後、龍は……地上から迸った蒼い光条と衝撃波に撃ち抜かれ、吹き飛んだ。


 ヴァリスが少し焦った感じで呟く。


『ま、(マイクロ)洞孔(ブラックホール)の仮想展開からの生成蒸発に、電磁波爆炸(ガンマレイバースト)!? ……地上で使うもんじゃないでしょ! どこの王器か神器ですか、危険すぎる!』


 羅刹王はちらりと天を貫いた光条の行方を見て……大きく頷き。


『これは我も魅せねばならんな……むっ!』


 隙あり。


 一瞬の間に、ロイが羅刹王の懐に潜り込む。圧縮した霊撃を込め掌打が、羅刹王の腹部にある凝核を捉え──打ち砕く!


『おぅっ!』

 

 一拍の硬直。だがロイが退避や次の打撃を放つより早く、羅刹王は激痛に耐え動く。


 ──戦の場で隙を見せたは我の落ち度。凝核の一つくらい、くれてやってもよい。だが駄賃は貰う!


 ──闘技〈()炎殲風(エンセンプウ)


 左の掌からは衝撃波が、右の掌からは灼熱の破壊光線が用意され、双掌は上下から時計回りに回転し、風と熱の渦となってロイを襲う。(ほど)けつつ時間差で襲いかかる螺旋の破壊は、どちらも必殺。


「っ!!」


 さすがのロイも全てはかわせない。衝撃波は【維持(リメイン)】の仙力で押しとどめたが、光線には……まともに焼かれた。


 焼かれたのだが。


 ロイは止まらない。再び一瞬で間合いを詰め、羅刹王の肩の辺りにある別の凝核に、如意棒を介して追撃を放つ。


『!』


 その攻撃を……この闘いが始まって初めて、羅刹王は大きく後ろに跳躍することでかわす。


『ハッ』


 ロイは知る由もないが、鬼王ヴェルルグルカーンにとって、見えている相手の技を飛び退いてかわすなど……彼の主観ではおよそ十万年ぶりこと。先代の羅刹王だった鬼神に挑戦して以来のことだった。


『よもや……』


 鬼王はロイを(にら)む。土を溶かすほどの破壊光線が直撃したはずなのに、ロイに変化はない。霊気術や魔術での護り? 違う。表情から苦痛は感じているようだが……。

 

『……霊威……しかも【耐火】( レジストファイア )ではないな。……まさか……【吸熱(エンドサーム)】か!?』


 その通り。


『……それは神なる龍種か、天地の気の凝りから生まるる妖物のみ宿せる力のはず。まさか地上の血肉ある体で持ちうるとは。貴様、何者か!』


「人間だが」


『本当にヒト種か?』

「そうなんだから仕方ないだろ」


 別に俺が初めてというわけでもなさそうだし、とロイは思う。過去のご先祖様も機会があれば得られたはずだし、ロイの知らない力も持っていた可能性が高い。


『…………』


 羅刹王はしばし黙り込んだ。

 ……そんなにおかしいことか?


 だいたい、【吸熱】は炎や熱によるダメージこそある程度無効化して霊力に変換してくれるものの、痛みはそのままという微妙な力だ。


 痛みを霊力に変換する【苦(ペインフル)楽】(プレジャー)を持つロイだからこそ二重に霊力回復できる点で有用だが……単独での使い勝手はいまいちのように思う。


(『……私には少し彼の気持ちがわかると思います。この星の人間種は、どう考えても普通の生命じゃないですし、その中でもご主人様はとびきりおかしいです。それも銀河規模で考えて』)


 ええー……?


『……かつて我や夜叉王がヒトどもに敗れたのはまだ分かる。我ら六大鬼王は、星約のもと地上で振るえる力には限界もあった。鬼珠無しの者が代替わりを起こしえるも、それゆえの事』


 知らんがな。なんだよ星約や鬼珠って。


『だが我の没後、竜王たち……黒の王や虚の王、さらには白龍巫様まで不覚を取ったと聞いた時には、さすがに信じ難かった。……そう、信じたくなかったのだ』


『どうも我は、口では、ヒトは個としては物足りずとも、種としては侮れぬといいつつも……心底では得心しきっておらなんだのだな』


『今思えば、我を泉下に叩き落としおった者ども……啓示の王や【雷(エレクト)帝】( ロマスター)と【円環(リング)】の担い手たちも異常であった。あれほどの力が神の血も引かぬ者に宿り、しかも複数が同時代に現れるなど、よくよく考えれば奇妙極まる』


 啓示の王は初代魔人王として……【雷帝】? 【円環】? 誰だっけ?


(『仙人のトップ達だと思います。たぶんですが、私をこの器に封じたのもそいつらかと』)


 ……あ、クンルンの双仙! 生前のこいつを倒したのは、当時のあいつらか。


『即ち我らよりも、天地の始原に近い魂宿す器たりえる種であったということか……ヒトが竜と鬼に勝利したは、それゆえ……ふふ。良かろう』


『──やはり、我が手で試さねばなるまい』


 鬼王の雰囲気が変わる。


 それまでは、どこか余裕があった。嗤いながら闘い、兵士らを骸花(はな)に変え、巨神を消滅せしめてきた。ロイとの殴り合いも嬉々として楽しんでいるところがあった。彼にとってはまさしく『宴』であったのだろう。


 だが、今のこれは……研ぎ澄まされた刃のような、しかし(いわお)のように重い霊気。目の前の存在(ロイ)を、倒すべき敵と見定めた(かお)


 その鬼気は、羅刹の形で具象化した死そのもの。常人ならば、今の鬼王が近づいただけで肉体と心が屈服し、心臓が勝手に止まるだろう。


(……本気になりやがった……面倒だな!)


 ロイは独りごちる。ただでさえ手強いやつを本気にさせてしまった……洒落にならない。


 ……だが、もし近くで鬼王以外にロイの顔を見る者がいれば、ロイの口角が吊り上がっているのが分かっただろう。純粋な闘争となれば、否応なしに心身が沸き立つ。それがロイという男であった。


 そして闘争に対し真摯(しんし)であるは、鬼王も同じ。



 ──だからこそ、それまでと変わって静かに対峙する二人にとって、ソレは許し難いことであった。



『!』

「!」


 二人はほぼ同時に、万里長城のほうを向く。そこから──


 自分たちに向けての、遠距離儀式魔術の発動を感じとったがため。



 第七段階結界術──『封咸(フウカン)天蓋(テンガイ)



 数十の魔導師と上位魔導具、さらには王器の力を注ぎ込んだ術式は、羅刹王の領域支配の仙力による制圧力を上回って起動。二人の周辺に球蓋(ドーム)状に、半径数十シャルク(m)の結界を展開する。


『小癪な』

「マジ?」


 そしてロイと羅刹王が、期せずしてどちらも同時に結界を砕こうと動く直前に、球蓋(ドーム)の上空のみに穴が空き……そこに燃え盛る巨大な球体が出現した。


『無粋な』

「俺ごとかよっ……!」



 第七段階攻撃魔術──『神焦炎』


 『隕石招来』のような大掛かりな事前準備が必要なものは別として、戦場のその場で構築できる中では、最強とされる魔術の奥義。



 ……『万里長城(グレートウォール)』に籠もる紫微垣魔術師団長、フォン郡侯爵は兵士らを容易(たやす)く殺戮し、機巧巨神をも一蹴した羅刹王の行いに恐怖した。


 そして副師団長──といっても先日リェンファらを襲ったチュン県侯爵ではない、彼は今『治療中』だ──に臨時昇格したばかりのテスファイエ県侯爵に、何としても羅刹王を殺せと震えながら命じた。


 ……無理難題だ。とはいえ、確かにこのままあの怪物を放ってはおけない。


 人体を爆裂させる謎の力はどうやってか『万里長城』の結界すら貫通していた。原因が分からず対策を取れないままでは、怯えながら死を待つだけだ。


 時間も手札も限られる中だったが、テスファイエと配下の魔導師らは優秀だった。


 羅刹王がいかにして魔術を無効化しているかを、帝国軍や機巧巨神との戦いの状況から分析し……外れ王器の魔力を、宝珠から直接引き出すのではなく、多少効率は落ちてもあくまで王器を介して注ぎ込めば有効であろう事を見いだした。


 さらに、謎の人体爆裂術についても仮説のもと対策を講じた。フォン郡侯爵が持っていたある王器を借り受け、それの防御術で羅刹王の干渉を防ぐ手筈(てはず)を整え……。


 本来なら対軍に使われる規模の大魔術を羅刹王ただ一人を倒すために複数発動させるなど、手持ちの戦力で放てる最大の火力を用意し……。


 手持ちの数少ない王器、外れ王器を持ち出して機会を待ち……相手の動きが止まった一瞬を狙い澄まして罠を発動させたのだ。


 ……一応は、テスファイエの策に懸念を表明する部下もいた。ナクシャトラによる呪詛汚染者が排除されている今、残っている者は多少は合理的な思考ができる連中であったから。


 ──お待ち下さい。分かっているのは魔術が発動するというだけで、減殺される恐れもあり、それで奴を倒せるか否かは未知数です。奴の反撃を防げるかも確実とは言えず。もし倒しきれなくば、あの(おぞ)ましい反撃がこちらに……。


 ──それに、このままではあの仙力使いも巻き込まれます。彼の力が幻妖に有効なのは見ての通り。あの怪物相手でさえ、しばらく持ちこたえています。法統派の駒とはいえ、あの力を喪う、しかも我らが手を下す形でそうなるのは後々問題に……。


 ……だがテスファイエは具申を退けた。仙力使いへの反感や嫉妬も多少はあるが、それ以上に何よりも、羅刹王への恐怖ゆえに。


 ──『機巧巨神』亡き今、『万里長城』による『廻理(ヘリカル・)法典(コデックス)』を除けば、これが最大の威力持つ策だ。これが通じぬとあれば、仕方ないと諦めもつこう。

 

 ──あの小僧の力はいささか惜しいが……それよりあの怪物よ。あれが此処にくれば、我らは何もできぬまま殺されるぞ。それも(むご)たらしく無様に破裂した血袋になって死ぬのだ。そうなる前に手を尽くさねば、仮に死んでも死にきれぬ。違うか?


 ──あれを倒すに一人の犠牲で済むならば安いものではないか。それに、あの仙力使いは炎に強いというぞ。運が良くば生き延びる事もあろう。


 ──で、ですが……『神焦炎』は炎熱だけでなく爆風、呼吸の素(さんそ)の滅却、殆どの防御の貫通なども含めた滅殺奥義です。今回のこれはそれにさらに複数の強化(アレンジ)を加えたもの。こんなものを食らって生き延びるなど、人には……。


 ──だからこそあの怪物にも通じるであろう。勝てばよいのだ。そのための犠牲ならば後でいくらでも正当化できる。できねば我々こそ死ぬだけだ。もはや迷っている時間は無い。


 ──分かりました、攻撃自体に異存はありません。ですがまだ早いのでは。あの仙力使いとの戦いで消耗するのを待つべきではないかと。我らが動くのは彼が怪物に殺されてからでも遅くは……。


 ──そうなればまた奴は音より速く、戦場を縦横に動きかねんぞ? そして此処ももはや戦場、安全地帯などではない。なればこそ、先に動くのだ。巧緻(こうち)は拙速に()かずよ。 


 ──……見よ、奴が止まった。これぞ千載一遇の好機ぞ! 撃て!



 ……そして『神焦炎』の大炎球が球蓋(ドーム)の内側まで落下すると同時に、球蓋の穴も閉じる。


 だが、この結界は仮初めだ。『封咸天蓋』も即席防御術としては最高クラスではあるが、『神焦炎』には及ばない。ゆえにこの結界は起爆後数セグ(秒)保たずに壊れる。


 だからといって、この結界は無意味ではない。そして羅刹王を閉じ込めるためでもない。


 ほんの僅かだけ、炎獄の噴出を抑え込むことにより瞬間的に内部の圧力が高まる。そのうえ『持続時間』をも得る。そして必殺の爆発が、必滅の業火に変わる。


 さらに結界には王器由来の魔力が添加されている。結界が壊れる瞬間にその力は内部に落ち込み、爆発の威力を物理的にも霊的にも最大化する。そして爆心の大地は(えぐ)れつつ溶けるだろう。


 かくして範囲内の犠牲者は大爆発にて大地に叩きつけられつつ獄炎に(あぶ)られたのち、周辺の地盤ごと煮えたぎる溶岩の池に埋葬される……骨の一片すらも残るまい。


 複数の術式を組み合わせ、王器と物理を利用し、最強の魔術の効果をさらに上に引き上げる手法。魔術衰退に対しての帝国魔術師団の足掻き、その一端だ。


 カッ 

 BANGGGG!!!!


 そして、大炎球は定められた術式の命じるまま……球蓋(ドーム)の内部で炸裂。球蓋の内側は紅蓮の炎と爆風で満たされ、灼熱地獄となって羅刹王をロイともども飲み込んだ。



 ──小羊が第五の封印を解いたとき、第五の生き物が「出て来い」と言うのを聞いた。


 見ると、黄色い粉が出て来た。その乗り手は「杉檜」と呼ばれ、これに悪夢が従っていた。彼らには、涙と痒みと苦痛と天の風によって日本人の四割を苦しめる権能が与えられた……。


  ──民明書房刊「極東黙示録」より

 

 

 ともあれ杉檜は尽く切り倒されるか、花粉なし版に植え替えられるべきである。早くしろ

っ! 間にあわな……くなってるのは知ってるが、今からでもやれ! やるんだ林◯庁! 伐採! 伐採! さっさと伐採! 間引け!



 ……ふう、少し熱くなりすぎましたね、Be cool、落ち着くんだ…『素数』を数えて落ち着くんだ…『()数』は1と自分以外をムシできる蠱毒な数字……ワたしに狂気ヲ与エてくレル……19…23…28…


 ……まあいいや、そんな簡単に伐採なんぞできないのは知ってますよええ(ずるずる、くしゅん! ごしごし……)


 さて、久しぶりにロイたちのほうに描写が戻りましたね。どこぞのサ◯ヤ人の王子様みたいにグミ撃ちっぽく破壊光線連射してくる鬼王はまだいいとして(よくない)……何故かいきなり味方に爆撃されましたね。


 どうしてこうなった? 儂にも分からん。

 確かプロットだと燃えるのは羅刹王だけで、ロイを巻き込む予定はなかったような。それが書いてたらいつの間にかロイごと燃えてた。Why?


 ……まあいいや、いやしくもバトルものの主人公ならば味方のせいで臨死したり死んだりする事の三つや四つ、よくある事でしょう。モーマンタイ。


 体調は割とあかんですが、続きはできる限り書いていく所存。中東情勢なども気にはなりますが……一般人にできることはなし。


 しかし、ネットは広大なはずなのに、昨今は真贋判別定かならん情報が蔓延し、エコーチャンバー同士のハウリングと藁人形(ストローマン)論法の殴り合いが(かしま)しいことで……。


 ああ、「人間の脳、役に立たない!」と異星人(エリディアン)のぼやく幻聴が聞こえる。

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