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オール・アルケミー(スキル合成)で始める異世界変革  作者: 波留馬 喬
第1章:ギルドデビューと噂の冒険者

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その2:研ぎ澄まされる術式と、積み上がる銀貨

その日の夜、我が家の納屋の隅で、俺は独り静かに銀貨を数えていた。

ギルドで受け取った報酬は、依頼料と素材の買い取り分を合わせて銀貨三枚。これでも、開拓村の子供が一日で手にする額としては大金だ。だが、俺の胸にあるのは喜びよりも、強烈な焦燥感だった。

初めての戦闘としては上出来だった。

(……一撃で仕留められた。でも、もっと洗練できる)


あのホーンラビットを仕留めた際の一撃を思い出す。狙った眉間を確実に穿ち、即死させた。それは【感知】と【簡易鑑定】を融合させたレーダーと、改良した高圧水弾の制御が上手く噛み合った結果だ。

だが、まだ魔力の消費効率が悪い。五歳という未発達な身体の魔力総量を考慮すれば、今のままでは今後戦っていくであろう強敵相手に息切れを起こすのは明白だった。


俺はこっそりと懐から古びた木片を取り出すと、魔力を練り上げた。

【簡易鑑定】で対象の密度を測りながら、水生成の術式を微調整する。


(——『合成:高圧水弾』の術式構造を再構築。圧縮の密度を一段階上げ、初速を殺さずに消費魔力を二割減らす……練習あるのみだ。)


数えきれないほどの失敗を繰り返す。指先が魔力の逆流で痺れ、鼻から少しだけ血が垂れた。だが、止まるわけにはいかない。十五歳になるまでの十年間、長いようでいて、気を抜いていれば時はすぐに過ぎていく。王都で生き抜くための準備期間としては遊んでいる暇はない。

その日は初めての戦闘だったということもあり、自分の予想していた以上に体力を消耗していた。

そのような状態で睡眠前の魔力操作訓練を行っていたため、エルタは気を失うようにその日は眠りについた。


翌日。昨日の疲労が残って重たい身体を気力で起こし、朝食を終えた。エルタの家は裕福な家計ではないためいつも以上におなかが空いていたのかお腹が満たされることはなかった。

畑仕事の合間を縫い、ホログラムを纏って森へ向かう途中にある開拓村で有名なパン屋が目に入る。お店の前を通ると焼き立てのパンの匂いとともにトマトやレタス、ツナやたまごに厚切りのハムなどおいしそうな具がたっぷり挟まった人気のサンドイッチがエルタを誘惑してきた。

(腹が減っては戦はできぬとはよく言ったものだな。)

自分の意志とは反して気が付けばお店に入り、昨日の報酬からサンドイッチを秒で購入していた。


食べながら森に向かっているとサンドイッチのおいしさに感激のあまり涙がこぼれそうになる。

(資金を貯めることは大切だがこれは無駄遣いではない。育ち盛りの時期は食事も大切だ。うんうん)と自分に言い聞かせながらサンドイッチのおいしさに感激し今後も定期的に購入することを心から誓うのであった。


森に到着したところで

昨日の反省を生かし、今度は【感知】と【簡易鑑定】を統合した「広域レーダー」の精度を上げ、より遠くの気配を探る。


「いたな」


森の奥で草を食む別の一匹を発見する。俺は昨晩改良した術式を展開した。

掌に収まる魔力の塊が、昨日よりも鋭く、そして密度を増していく。


「――『合成:高圧水弾』」


パシュッ、という乾いた音が森に響く。

今度も逸れることなく、獲物の眉間を正確に穿った。暴れる隙さえ与えず、急所を的確に破壊した一撃。完璧な討伐だ。


俺は素材を皮袋に詰め、再びギルドへと向かった。受付には昨日と同じ、涼しげな瞳の看板娘のお姉さんが座っている。俺が獲物を差し出すと、彼女は検分を始め、小さく目を見開いた。


「あら……。昨日の依頼の方ですね。たった一日で、これほど綺麗に討伐できるようになったのですか? 昨日も上手でしたが、今日はさらに無駄がないですね」


彼女の驚く顔を見て、俺はフードの下で小さく口角を上げた。


「……多少の訓練はした」


「すごいわ。この手際の良さなら、もう少し難易度の高い依頼も受けられそうですね。ですが、無理は禁物ですよ?」


彼女は昨日よりも少しだけ親しげに笑い、銀貨を差し出してきた。

報酬の銀貨を指でなぞりながら、俺はふと思う。このホログラムの姿での評価が積み重なれば、やがて俺は、さらに難易度の高い依頼を受けられるようになるだろう。


帰り道、夕日に染まる村の畑で鍬を握る自分の姿を遠目に見ながら、俺は冷めた思考を巡らせる。

エルタとしての俺は、両親を大切にする心優しい開拓民の子供。

そしてホログラムとしての俺は、金を集めるための仮の姿。


どちらも嘘ではない。どちらも俺の意志だ。

この二つの顔を完璧に演じ分けることこそが、俺の目的を達成するための最短ルートとなる。


「……まずは銀貨百枚だ。それが、この村を出て王都の学園へ行くための、最低ラインになる」


俺は鍬を置き、泥を拭いながら家へと歩き出した。背後でギルドの灯りが、俺の野心を知る由もなく、静かに明かりを灯し続けていた。その日の夜、我が家の納屋の隅で、俺は独り静かに銀貨を数えていた。

サンドイッチ以外も今度買ってみようかな。

よろしければ何点でも構いませんので評価やコメントをいただけると嬉しいです。励みになります。

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