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オール・アルケミー(スキル合成)で始める異世界変革  作者: 波留馬 喬
第1章:ギルドデビューと噂の冒険者

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その1:ギルドと小さな冒険者

俺たちが住むこの開拓村は、荒涼とした大地に点在する、いわば辺境の防波堤のような場所だ。

常に魔物の脅威に晒され、日々の糧を得ることさえ容易ではない。

だが、そんな過酷な環境だからこそ、村の中央には不釣り合いなほど無骨で立派な石造りの冒険者ギルドが鎮座していた。各地のダンジョンから溢れ出す脅威に対処するため、この国では村レベルであってもギルドの設置が義務付けられているのだ。


俺は今日、ついにその重厚な扉を叩く決意を固めた。


「……ここから新しい生活がはじまるのか」


入り口に立つ五歳の子供の姿は、周囲の屈強な冒険者たちから見れば、あまりに無力で滑稽に映ったことだろう。酒と汗と獣臭が混じり合う独特の空気が漂うギルド内。俺はあらかじめ何度も鏡の前で練習した通り、五歳児らしいあどけなさと、少しばかりの不安を装った表情を浮かべ、カウンターに立つ受付のお姉さんを見上げた。


長く艶やかな髪を一つにまとめ、涼しげな瞳を向けた彼女は、村のギルドでは「看板娘」として知られている。


「あ、あの! 薬草を採ってお金稼ぎたいんです。……おじいちゃんが亡くなって、家計が苦しくて……。登録、できますか?」


彼女は俺の言葉に、少しだけ潤んだ瞳で同情の色を見せた。


「あら……かわいそうに。一人で頑張ろうなんて、偉いわね。でも、あまり無理はしちゃダメよ?」


そう言って優しく微笑みながら、彼女は登録用紙を差し出してくれた。俺は震える手で名前を書き込み、指印を押した。ギルドカードは、あくまでこの村で「採取」という名目で活動するための身分証明に過ぎない。俺の目的は、このカードを隠れ蓑にして、未知の領域へ踏み出すことだ。


俺はギルドを後にすると、足早に家の裏手にある畑へと向かった。両親には「裏の畑で作業をしてくる」と伝えてある。実際、俺は泥にまみれながら鍬を振るい、適当なところで一休みを装って、周囲を警戒した。人の気配がないことを【簡易鑑定】で確認し、俺は魔力を練り上げる。


(——【初級魔法 投影】と【光魔法 ライト】の術式に、【初級スキル 忍び足】(簡易的な気配遮断)の理論を合成。対象は俺自身の姿だ)


指先で空中に幾何学的な術式を描き、魔力を叩き込む。光の粒子が俺の全身を包み込み、視覚情報を強引に歪めて書き換える。鏡に映るのは、無骨で長身な成人男性の姿だった。これこそが、俺の切り札として考えた「合成:ホログラム」だ。


「よし、これなら誰も俺が五歳の子供だとは気づかない」


大人の姿となった俺は、堂々と再びギルドの門をくぐった。掲示板に向かい、今度は「薬草採取」ではなく、討伐クエストの依頼書を剥ぎ取る。背中に走る冷ややかな視線をホログラム越しに心拍数をあげながら受付へ持っていく。


「討伐クエストを受けに来た」


再びカウンターに立つ彼女の前に立つ。先ほどのような優しげな表情とは打って変わり、彼女は俺を「凄腕の冒険者」か何かととして認識し、プロの対応で淡々と手続きを進めた。

五歳の子供が魔物を討伐してくるなどとは夢にも思わないからだ。


そのままホログラムは解除せず、凄腕冒険者の姿を纏ったまま俺は、森の深部へと足を踏み入れる。

森の中で新たな合成を試みる。

(――生活魔法の【感知】に、初級スキル【簡易鑑定】の理論を「合成」)

本来、個々の対象を確認するだけの【簡易鑑定】に、空間全体を広域索敵する【感知】の術式を強引に編み込む。パチリ、と脳内で回路が繋がる音がした。

視界の隅に、周囲の魔力密度を示す淡い光の波紋が浮かび上がる。これは魔素を帯びた生物にのみ反応する、俺専用の「レーダー」だ。


「いたな……」


光の波紋が、ホーンラビット特有の魔力反応を捉えた。俺は即座に掌を向ける。本来なら単なる水滴を飛ばすだけの【水生成】の生活魔法に、【圧縮】の理論を「合成」する。術式が歪み、殺傷力を秘めた高圧水弾へと変換された。


(——『合成:高圧水弾』)


パシュッ、という小さな音が空気を切り裂く。

鋭利に凝縮された一撃は、逃げ惑うホーンラビットの急所を的確に射抜いた。暴れる間もなく沈んだ獲物を手際よく回収し、俺は再びギルドのカウンターへと向かう。報告の際、俺はあえて口数を減らし、無愛想な「熟練の冒険者」を演じきった。


「……見事ね。新顔にしては手際がいいわ。また腕が上がったら来るといいわよ」


彼女から報酬の銀貨を受け取り、俺は無言で会釈をして立ち去った。

村の外れでホログラムを解除し、五歳児の姿に戻ると、俺は泥だらけの服で家の裏へ戻り、再び鍬を握った。


「お母さん、ただいま。畑仕事、頑張ったよ」


そう微笑む俺を、母親は優しい目で見守る。

村の人々には、「大人びた凄腕の冒険者」と「健気な開拓民の子供」。

この二つの顔を使い分け、俺は誰にも怪しまれることなく、着実に力を蓄えていく。


(今日から、俺は二つの顔を持つ。誰も正体を知らぬ『幻影の冒険者』としての人生が、今、動き出したんだ)

この俺の才能は最弱。可能な限り力を蓄える必要がある。

合成魔法によってスキルを改変し、生活魔法を奥義へと昇華させるこの力を使いこなし自由な人生設計を行う。そのためにもいずれ王都の学園へ入学し、冒険者として知識と経験をみにつけるのだ。

今はまだ、銀貨数枚の報酬に過ぎないが、この辺境の町から出るためには莫大な資金が必要だ。

15歳で学園に入学するまでに可能な限り資金を稼ごう。

夕暮れの町を歩きながら、俺は冒険者ギルドを背に、新しい冒険へ一歩を踏み出した。

この十年の準備期間が、誰にも知られることなく、圧倒的な効率で加速していく。

よろしければ何点でも構いませんので評価やコメントをいただけると嬉しいです。励みになります。

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