Episode.03 四天王と決闘します
「なぁ、もうやっていいのか?」
一応、念のため誰にともなく聞いてみた。
後で反則とか言われても困るからな。
四天王は無反応だったが、魔王が頷くのが見えた。
では遠慮なく。
先手必勝!
バッタの脚力でダッシュ。
一瞬で化け物女の前に移動すると、手刀を腹に突き刺す!
ギィンッ!
は!?
「にゃははは、バカめ。我に貴様の攻撃など通用せぬわ」
高笑いをする化け物女。
マジか、コイツ。
『御主人様、なんらかのバリアだと思われます』
だろうな、この世界観だと魔法的なヤツか。
いきなり出すのは想定外だが、出し惜しみする気もないし別にいっか。
ほんじゃ、オレも技名叫んだるぜ!
「スパイラルキャノンッ!」
ジジジ、シュッ!
「ぎゃああああああああっ!」
化け物女、どてっぱらに派手な穴が開いて終了。
仰向けにひっくり返って動かなくなった。
0.5秒のチャージタイム後にヘソの気孔から熱線ビームを発射してやったのだ。
一応物理攻撃ではあるが、耐衝撃のバリアでは防げまいと思ったらビンゴ。
バリアごとブチ破ってやったぜ。
『御主人様!』
おっと!
右後方から巨大な剣が振り下ろされた。
ズールとかいうヤツだ。
ナイスオズ。
ちょっと浮かれてしまってたわ。
こっちの世界で初めて静かに攻撃してくるヤツを見た。
チラリと視線で確認すると、なんか竜みたいなのに変身してるヤツがいた。
おい、それは強いのか。
あとアグナスとかいうヤツは脚がたくさんあるデカい馬に乗ってる。
そんなのどこから出してきやがったんだよ。
でもいちいち個別に相手するのも面倒なんで、ごめんなさい。
「全弾発射、シューッ!」
オレの身体の横にある左右四つの気門からミサイルを同時に射出。
2発はズールに。
2発はアグナスに。
2発は竜に。
そしてもう2発は魔王に――っておい!!!
それはダメだ。
戻って来い。
お前らは仕方ないから竜に追撃だ。
ドーンドーンと派手に爆発音が鳴り響き、閃光と煙が辺りを覆う。
ホーミングだから避けられまい。
『御主人様、おいたはダメですよ』
ちげーよ。
ついうっかりしてただけだ。
どっちかっつーとお前の制御の問題じゃねーのかよ。
ズオッと煙の中から何か出て来た!
「のわっ」
慌てて回避。
ズールの剣だ。
まさかミサイル食らっても生きてたのか。
「もうよい! やめよ!」
魔王の声が響いた。
まだ周囲は煙が満ちていて様子がわからない。
『まだ息があるようですね。なかなかしぶとい生物のようです』
オズが言うまでもなく、なんとなく気配で感じていた。
化け物女以外は、死んでないということを。
魔王が片手をさっと払う仕草を見せると、煙が一瞬で消え失せた。
オレは何も感じなかったぞ。
煙だけを消したのか?
ちょっとゾクっとしたところで、四天王の様子がようやく見えた。
なんだ結構ボロボロじゃないか。
安心した。
するとまた魔王が手を動かした。
右手の掌を化け物女の死体に向けてなにかしている?
化け物女がすっくと立ち上がった。
ゲ!?
腹の穴が跡形もなく消えている。
回復魔法とか、それ系のヤツ?
続いてほかの四天王にも掌を向けて次々と回復していく。
かなりの深手を負っていたはずの四天王たちが化け物女同様、完全健康体の姿で立ち上がった。
うわー、やっぱ魔王やべぇ。
魔王が回復持ちってこれ完全に無理ゲーじゃん。
化け物女なんか死んでたはずだから蘇生もできるってことになるぞ。
それとも一瞬で倒せばワンチャンなんとかなるもんなのか?
『分の悪い賭けですね』
うるさい、わかっとるわ。
今更だが、オズはオレの思考も勝手に読んでくるから性質が悪い。
「見事であった、リュウよ」
いや、あんたが一番見事だよ。
「お前たちも、気が済んだか」
四天王に言っているのだろう。
四人が四人とも「ははっ」と言ってその場に跪き頭を垂れる。
「オレの勝ちってことでいいのか」
念のため確認しておかないとね。
「もちろんだ。僅かな時間で四人を制圧してみせたのだからな」
そういうことならまぁ。
魔王が玉座に戻り、四天王も最初のポジションに戻って行く。
壁際に退避していた他の連中もまた集まってきた。
「リュウよ、貴様には魔王の盟友の称号を与える」
またもザワつく。
盟友……称号?
なんだそれ?
「これをやろう」
魔王が何かキラキラしたものを掌に乗せてこちらへ見せる。
やだなに、指輪?
魔王から指輪?
なんかちょっと……いろいろと抵抗が。
だが断ることなど出来ようはずもない。
『安心してください。呪いの類の効果はなさそうです』
オズ、ナイス。
少しは安心した。
「ほんじゃま、ありがたく頂戴しますっと」
魔王の前まで行って受け取る。
「嵌めてみるがよい」
え、いま? ここで?
超絶小っ恥ずかしいんだが。
!!??
右手の人差し指に嵌めた途端なんか出た!
[魔王の盟友]
-効果-
・物理耐性 100%UP
・魔法耐性 100%UP
・精神耐性 100%UP
・強制転移
いつでも相手のいる座標に転移可能
・盟友の絆
相手のダメージを肩代わりする。
その時、体力が1以下にはならない。
なんつーチートアイテム!
てか、これ効果的にもしかして魔王とペアリング?
いやん。
『御主人様、ひとつ確認すべき点が』
なんだよ。
『強制転移は誰が発動可能なのでしょうか』
まぁこの流れだと魔王じゃね。
オレの可能性もワンチャンあるが、その場合は「強制」などとわざわざ書かないだろうからまずこれは魔王側が、と思っていいだろう。
いいところで突然転移させられたりしたらたまらんな。
いいところってなんだ?
「なかなか似合っているではないか」
「ははは、とりあえずありがとう」
魔王から直接貴重な品を貰ったからか、羨望か怒りかわからないカオスな感情の視線がグサグサ突き刺さってくる。
オレのせいじゃないのに……。
「他に欲しいものがあれば言ってみよ」
え、まだ何かくれるの?
いや、もう勘弁してください。
これ以上刺されるのはごめんだ。
『御主人様、鎮静剤入りますか』
いらねぇよ。
ってかこういう時は事前に聞くのかよ。
「いや、もう本当に充分だ。それじゃオレはそろそろ行くよ」
「そうか。気が向いたらいつでも訪ねて来るがよい」
「ああ、そうするよ。またな」
もうなにか言う度に痛いんだってば。
マジで針の筵だわこんなもん。
「ンダーベナ、責任を持ってお見送りしろ」
え?
「ははぁっ」
両手を胸の前に合わせて一礼すると、こちらへきてオレを先導するように歩き始めた。
あれ、なんかちょっと態度が違わないか。
「お主は魔人などではなく、魔神様かもしれぬ」
いきなり語り出した!
貴様がお主に昇格してるしw
「マジンサマ?」
「我ら魔族を創りし神だ」
そんなもんがいるのかよ。
そいつはあの魔王より強いのか?
「いや、オレはそんな大層なもんじゃない」
お前らを作った記憶もねーしな。
「我も最初はそう思った。だが、魔王様があのように話をされたのはお主が初めてじゃ」
前を向いたまま世間話のように話す。
やはりなんか違和感がある。
「魔神ってひとりなのか?」
「魔神様が何人おられるかは知らぬ。魔神様の名前すら知らぬのだ」
名前も知らないのに神って……。
ヤバい匂いしかしねぇな。
そんなもんを相手にするのだけは絶対に避けなければ。
「それなら弱い方の魔人はいったいなんなんだよ」
「魔人は魔神様のしもべ。召喚魔法により一時的にお力を借りることができるのじゃ」
なるほどよくわかった。
いや、やっぱりわからん。
「人間を模して造られたことから魔人と言われているそうじゃ」
……オレ、まだ人間に見えるのか。
「で、お前はなんで急に態度が変わったんだ?」
もうさっきから気になって気になって仕方がなかったのだ。
「一旦死んだからじゃな。死ぬ前の記憶は残るが感情はリセットされるのじゃ」
ああ、なるほど。
「そうか。ならお前も反省したってことだな」
「……別に反省したわけではない」
あ、そう。
『御主人様、さっきから無駄話が過ぎます』
え? あ、はいすんません。
「お主、魔王様に気に入られたからといって調子に乗らぬことじゃ」
「別に調子に乗ってるわけじゃねぇよ。それよりお前らの方が無駄に敵意向けすぎなんだよ、ぶっ殺すぞ」
一瞬相手がぶるっと身を震わせたのがわかった。
「魔王様がいる限り、無駄じゃ」
生き返れるからな。
「でも痛いことは痛いんだろ」
「…………」
隠そうとしてもその背中から恐怖感がダダ洩れだ。
『ブラフが効いていますね』
いちいち言わんでよろしい。
そうこうしているうちに小さなバルコニーへ出た。
「我はここまでじゃ。さぁどこへなりと行くがよい」
半身になってこちらを向き、手を外へ伸ばすンダーベナ。
「次会う時までにオレが元の世界に帰る方法、調べとけよ」
「…………」
無視かよ。
まぁいい。
別に挨拶するほどでもないので、こっちもスルー。
行くか、オズ。
『周囲に人間の集落はないようです。暫くのんびり行きましょう』
了解。
バサッ。
羽根を広げ、飛び立つ。
おおお! ものすごい眺めだ!
これが異世界の森か。
太陽が赤い。
太陽かどうか知らんが。
とりあえずひとつだけで良かった。
『月は三つあるようです』
え!?
いやまぁ、別に何個でもいいけれども。
見たら見たで感慨深いのだろうか。
とりあえずはいざ征かん、異世界の旅へ――。
読んでいただき、ありがとうございます。
次回更新は明日4/23(木)10時の予定です。
引き続きよろしくお願いします。





