表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

12/22

Episode.12 公国も滅ぼします

 デルバーザ帝国には全部で三十二の自治体が存在した。

 うち、十三ヵ所は辺境の小さな町村なので、いちいち滅ぼすに値しない。

 ぶっちゃけ面倒臭いのだ。


 残る十九ヵ所を四日ほどかけて殲滅した。

 なぜそんなにかかったのかというとそれはもちろん戦闘用リソースの問題だ。


 ある程度まとめて破壊するには火力が不可欠。

 そしてオレのそれには明確に限界があった。


「なぁ、この残弾数問題どうにかならないのか」


『博士がいない状況ではどうしようもありません』


「だよなー。ちなみにお前、ちょろっとオレを改造できたりしないの?」


『オペレーティング・ルームがあれば可能です』


「無茶言うなよ、あるわけねぇだろ」


『仮にあったとしても、博士がいない状況では改造の成功率は低いです』


「博士ってそんなスゲーの?」


『あの方は天才を超えた真の天才です。不世出であり唯一無二のお方なのです』


「そんなスゲー人がなんで悪の組織で改造稼業なんかやってんだよ。意味わからんだろ」


『それは……今度会ったら聞いておきます』


 知らねーのかよ。

 ま、そうだよな。


 とにかくこの問題を何とかしないと。

 なんかそういう魔法でもないのかなー。


御主人様(マスター)


「なんだ?」


『問題が発生しました』


「お、いいね。面白くなりそうだ」


『帝国の残党が隣のウォルフリード公国でひと仕事したようです』


「どういうことだ?」


『ウォルフリード公国は帝国の同盟国なので、集団的自衛権が適用されます』


「援軍が攻めてくるってこと?」


『いえ、他国にも協力を求めて現在交渉中。おそらくは多国籍軍になりそうです』


「ふーん。それってどれくらいの規模になるのかねぇ」


『調査します』


「じゃあまぁ結果が出たら教えてくれ。オレは稲休憩しとくわ」


 殲滅した自治体で発見・押収した稲がそこそこの量あったのだ。

 おかげで一日一回、こうして稲休憩ができるというわけだ。


 稲の穂を噛んで一気に引き抜く、セルフ脱穀食い!

 これが一番うまい食い方だった。


 やっぱ稲最高だわ。


 ああ、あの町を復興して稲を作らせるのはいい考えかもしれない。

 この世界にどれくらい滞在することになるかわからんが、もし長居することになった場合の楽しみとして絶対に必要だ。


御主人様(マスター)が自分で作るという選択肢はないのですか』


「いやいや、なんで怪人が米造りするんだよ。おかしいだろ」


『別におかしくはないと思います』


「農作業の中でも米造りはかなりきつい方なんだぞ。トラクターとかない限り絶対イヤだ。腰やったら一生モンだし」


『腰痛くらいであれば3番パックを使用するまでもなく、一時間もあれば自動的に回復します』


「え、そうなの? すげーな改造人間。ほぼ無敵じゃん」


『腰痛が治る程度で無敵とは言いません。飛躍しすぎです』


「バカヤロー。人間飛躍してなんぼだろーが。飛躍のないところに進歩なし、だ」


御主人様(マスター)は怪人ですが』


「……そうだったな。どうも2%の主張が激しくて申し訳ない」


 なぜ謝っているのか自分でもわからない。

 怪人としての自覚が足りないのを反省したのかもしれない。




* * * * *




御主人様(マスター)、動きがありました』


「んぁっ!?」


 オズに起こされたが、一瞬ここはどこわたしはだれ状態。


『おはようございます、御主人様(マスター)


「……オズか。今何時だ」


『四時十三分です』


「もしかしてオレ、今寝てたのか」


『そのようです』


「怪人は寝なくていいんじゃなかったのかよ」


『睡眠をとらずとも活動を続けられるというだけで、眠らない、あるいは眠れないということではないようです』


「なんで断言口調じゃなくて推定口調なんだよ」


『私も今知りました』


「そうなの?」


『はい。御主人様(マスター)が眠っていたので思わずデータを取得していました』


「おい! 勝手に情報収集すんな!」


 言ってる途中から気付いてしまった。

 そもそもオレの活動ログは常時記録されているのだ。

 今更記録するものが多少増えようが、どうでもいいことだった。


御主人様(マスター)……』


「わかった! わかったから言うな。オレが間違ってた」


 だが、眠れるという事実にはなぜか安心していた。

 悪くない気分だ。

 2%が多少リフレッシュされただけだが、やはり睡眠は大事なのだ。


「で、なにがあったって?」


『連合軍が動き出しました』


「連合……ああ、多国籍軍とか言ってたヤツか」


『結局四つの国の合同作戦となったようです』


「ちなみにどこの国?」


『はい。リムルーク王国、プリムプリム共和国、ガリアン、クリプトンブルクになります』


 山籠もり中の自習で聞いたことあるな。


「それで、全部で何人くらいだ」


『まだ合流していないため、正確な数はわかりませんが十万人規模になるかと思われます』


「なら合流前に叩くか?」


御主人様(マスター)の場合は合流してからの方が効率が良いかと』


「まぁそうか。何日もかけてやるのも馬鹿馬鹿しいしな」


首領(ドン)の記録を塗り替えるチャンスですね』


「いやいや、そういうのはいいから。組織の中で悪目立ちはしたくねーんだよ」


『既に大幹部クラスなのにですか』


「それも公表しなきゃ大丈夫だろ」


『いいえ。通信が復活次第自動的にデータは転送されます』


「何とかしろよそれくらい。データにロックかけるとか、なんかしらやりようあんだろ」


『それで、どうしますか』


「露骨に話逸らすなよ」


『一応、合流予測地点を出すことはできますが……』


「確度は?」


『95.73%で、公国領内になります』


「充分だ」


 申し訳ないがウォルフリード公国もついでに潰させてもらおう。


 ただこの調子でやってくと、最後には世界を滅ぼす流れになりそうで面倒だな。

 なんの得もないし、面白くないし、何より目立つじゃないか。


 それよか、味方になりそうな国を幾つか見繕って懐柔しとく方が結果ラクなんじゃないのか。

 交渉事は苦手だが、一応社会人経験もあるし、ワンチャンいけるかも。


『慧眼ですね、御主人様(マスター)


 うまくいけば、の話だぞ。


「じゃあ候補の選定はよろしく」


『了解です』


 オレは結果を待つだけでいいのだ。

 いざとなったら交渉の方法もオズに任せよう。


 なんて楽な怪人生活。

 いや、持つべきものはオズさまさまだな。


「あ、それから敵の合流地点に行く前に公国の主だった拠点も潰しときたい。ルート設定も任せる」


『そちらはすぐに出せます』


「え? おい、この公国ってのはこれで自治体全部なのか」


 ルート上に攻撃目標は三ヵ所しかなかった。


 たった三つの自治体しかない国っていったい……。


『そうですね。公国というくらいですからせいぜいその程度の規模です』


「半日で終わりそうだな」


『行きがけの駄賃、というヤツですね』


「身も蓋もねぇな」


 オレはすぐに移動を開始した。




* * * * *




 三つのターゲットのラストの首都もあっさり落ちた。


「全然歯応えねぇんだが、これでよく帝国と同盟なんぞ結べたな」


 首都に常駐していた公国軍は、スパイラルキャノン一発で壊滅。


 ついでに帝国から逃げたとかいう貴族どもも見つけて皆殺しにした。

 おそらく討ち漏らしはないはず。


『公国との同盟は主に補給用途と経済的な支援目的だったと思われます』


「あ? 軍事力は帝国頼みってことか?」


『そのようですね。だからこそ他国に助力を求めるしかなかったのだと思われます』


「なんだかなー。異世界もやっぱたいして変わらんなぁ」


『全ての国家が充分な防衛力を保有していると考える方が理想主義ですね』


「そうなのか?」


『そのために軍事同盟があるのです』


「はいはい、お前の講義はいらんぞ」


『連合軍の方はどうしますか? 合流予測地点はここから数十キロ先になります』


「いつ合流するんだっけ?」


『明日の昼には』


「じゃあ、今夜はここで野宿だな。一応万全な状態でやりたいし」


『了解しました』




* * * * *



御主人様(マスター)、そろそろです』


「え、もう? ちょっと早いんでない?」


 事前のオズの予測では昼前だったはず。

 まだ朝だぞ。


『公国の状況を知って急いだものと思われます』


 あ、そうなの?

 でもそんな無理して急いだら疲れてるんじゃないの?

 大丈夫かいな。


御主人様(マスター)が心配することではありません』


 そりゃそうだ。


「しかし、その連合軍に参加してる国ってのは何考えてんだ? 帝国も公国ももうこのザマなんだから義理立てしても意味ねーだろうに」


『それはもちろん、自国の利益のためです』


「なんで軍を出すのが利益になるんだよ」


『次は自分たちが襲われると考えているからです』


「別に、手出ししなきゃそんな面倒な事しねーのにな。逆効果だろ」


御主人様(マスター)の立場ではそうでしょうが、所詮は恐怖に駆られた人間の考えることですから』


「そういうもんなの?」


『おそらくは』


 オズにも断言できない程度には人間特有の思考なのかもしれないな。


「そういえば、交渉する相手の国はどうなった?」


『今回の連合軍に参加している国は対象外ですから、近いところではミレニクス小国家連合と、あともうひとつ奴隷解放同盟アヌブスという国が反帝国側になります』


「別に連合軍参加国は対象外にしなくていいんじゃないの? やられて敵わないとわかったら協力するかもしれないだろ」


『その場合は裏切りの可能性を常に背負うことになります』


「なんで?」


『恐怖による統治とはそういうものです』


「え、じゃあ他の国とは普通にまともな外交で交渉するつもりなのか?」


 オレにできるかどうかは全く自信がない。


御主人様(マスター)は恐怖で支配するつもりだったのですか?』


「質問に質問で返すんじゃねーよ」


『交渉のカードとしての武力は確かに有効です』


「ほら見ろ。それはつまり恐怖で支配するのと同じだろうが」


『それも外交の一側面ではあります』


「結局力のあるヤツが好き勝手出来るのが人間のルールなんだよ。この世界でも一緒だ」


御主人様(マスター)のその主張は極論であり、暴論ですが、事実と認めざるをえません』


「はい、オレの勝ち~! じゃ、そろそろ行くか」


『ちょうどいい頃合いです』


 オレは飛び立つ。

 間もなく十万人を殺すことになるだろう。

 それにはなんの躊躇もないが、やはりひとつだけ気になる。


 オレはこの大量虐殺をどこまで続けるのだろうか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ