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Episode.10 帝都を滅ぼします

 敵陣への急降下中に問題が生じた。


御主人様(マスター)、人質です』


 見りゃわかる、チクショウ!

 モニターに表示されたマーカーに憤怒。


 急ブレーキで一旦ホバリング状態へ。

 一旦状況を整理する必要がある。


 眼下には敵の本陣、というか指揮官がいると思われる部隊が展開していた。

 その部隊の中央に、大人二人と子供ひとりが囚われていたのだ。


 町の代表と、占いババァと、あの少年だ。

 ご丁寧に男、女、子供と三属性揃えて捕まえておくとは念入りだな。

 しかも確実にオレとの接点が強い人選。


 完全にオレを待ち受けていることが確定した。

 ってことはなんらかの対抗手段を用意しているのだろう。

 つまりは罠って事だ。


 クソが!


 先制攻撃でブチかましてあとは殲滅、と思っていたオレが甘かった。

 大甘だ。


 町をあんな風に燃やし尽くせる連中だ。

 人質だって平気で殺すだろう。


御主人様(マスター)、人質を取られた時のセオリーは……』


「うるさい!」


 そんなもん知ってる。

 人質の有効性を証明してはならない、だ。


 そもそも人質を取られて躊躇する怪人とか、情けないにもほどがある。

 怪人のプライドにかけて、そんな真似はできない。


 一応手がないわけではないんだが、その前にまずあの三人以外にも人質がいる可能性を確認しないと……。


『それについては大丈夫そうです』


 そうか、それならよかった。

 いや、よくはねぇか。

 あの三人以外は全員殺されたってことになる。


「とにかくやるぞ」


 7番パックを取り出して左腕に打つ。


Stealth Mode:on


 っしゃ。


『魔法に対しての有効性は未知数です。念のため』


 !?

 ……だよな。

 一応頭に入れとく。


 やる事は決まった。

 再び、敵陣へ急降下。

 相手に気付かれている様子はまだない。

 気付かぬフリでおびき寄せている可能性はなくはないが。


 急減速して静かに着地。 

 人質についている兵士三人の頸椎を後ろから砕く。

 ぐるぐる巻に縛られているロープをカットして、人質三人を無理矢理抱え込むとそのまま飛び立つ。


 人質にもオレの姿は見えていない。

 なので本人たちも何がどうなっているのかわからぬまま、いきなり空中散歩だ。

 頼むから暴れてくれるなよ。


 そして事ここに至ってようやく敵さんたちが大騒ぎに。

 なんか飛んできたが、オレの方が速いしそもそもこの高度まで届かなかった。


 ってか人質に当たったらどうすんだコノヤロー!

 あとでとっちめてやるから覚悟しとけよ。




* * * * *




 山をひとつ越えて、オズにさくっと調べてもらった洞窟までひとっ飛び。

 着地して人質三人を下ろす。


Stealth Mode:off


「おおっ、やはり魔神様でしたか!」

「さすがは魔人様じゃぁッ!」

「リュウ!!」


 おい、お前!

 約束はどうした!

 抱き着くな、邪魔だ。


 そして大人はもっとダメだ。

 離れろ!

 ババァはくせぇ!


 お前らこの姿見てよく抱き着く気になるな。

 脳がバグってるだろ絶対。


「離れろ。いいか、ここでじっとしてろ。絶対に動くなよ」


 無理矢理引きはがして言い含める。

 三人とも無言でうんうん頷く。


 さっさとその場を飛び立ち、帝国軍のところへ戻ると、きゃつらはどうやら移動しようとしているところだった。

 人質を取り逃がした所で作戦失敗と判断したのかもしれない。


 だが遅いぞ!

 ってか逃げんなよクソが!


「おい、コイツらの他に伏兵や、別動隊は?」


『少なくとも半径50キロ圏内にはいません』


 よし。

 遠慮なくやらせてもらう。


 帝国軍の数は約三万。

 あんときの二倍ってわけだ。


 兵が多ければ勝てるとでも思ったのか、バカめ。

 あの世で後悔しろよ。


「2番パック、4番パック」


 連続で左腕に打ち込む。

 エネルギー全回復&分身。


 そのまま敵陣に急降下。

 うまい具合に分身と敵をシェアできるよう、オズに出させた座標に着地。

 前回の教訓を生かし、分身のスパイラルキャノンはBモードに。


「スパイラルキャノンッ!」


 景気づけに派手に叫んでやったぜ。


 シュバーーーーッ!


 まずオレが通常モードで横薙ぎに払い、分身は熱線をジャンプして回避。

 そのまま空中で分身がBモードで発射。


 シュバーーーーッ!


 分身を中心に360度全方位に熱線放射。


 スパイラルキャノンは浴びたら即消滅するほどの熱線だ。

 リアルな火で焼かれるより遥かに楽だろう。

 この慈悲深いオレ様に感謝しろよ、薄汚い人間ども。


 ちなみにオレの外骨格はスパイラルキャノンの放射熱線を反射する。

 通常モードで直撃されるとさすがにヤバイがBモードならノープロブレム。

 自分の技で自滅するようなマヌケは改造人間にはいないのだ。


 さすがに二発だけじゃ、倒し切れなかったので、恒例の――。


「ミサイルホッパー全弾発射ッ!」


 八発のミサイルが八方に、いや分身からも含めて十八方に飛んでいく。


 ドガーン。

 ドガーン(以下略)。


 オズのターゲティングで、効率よく数を減らせた。

 それでも残った若干数は分身に任せる。


 オレはというと、今首根っこを捕まえている敵の指揮官に聞きたいことがあった。




* * * * *




 初めての尋問は、思うように行かなかった。


「というわけなんだが、何か言いたいことはあるか」


「ひっ、ひっ、ひっ」


 ダメだ、完全に目がイッテる。


「おい!」


 腹パン一発。


「おぐぇっ」


 前屈みになろうとするのを首を掴んで立たせる。

 ちなみに両腕は既に折ってやった。


「なんか」


 ボコッ!


「言えよ」


 ボコッ!


御主人様(マスター)、それ以上は……』


 ちっ。


 おえええええええええ。


 きったねぇなコノヤロー。

 一緒に下からも漏らすんじゃねぇよ。


「もう一度訊く。なんで町を焼き払ったんだ」


 首を直接握って圧力をかける。

 力加減が異常に繊細で難しいぞ。


「め、命令だ……理由は、知らん」


 上下から出して、少し正気に戻ったのだろうか。

 ようやくまともな返答が口から出て来た。


 だが、その内容が気に入らん。

 意外にしぶといタイプなのか、口を割りそうな気配がない。


 指揮官としちゃ優秀なのかもしれないが……賢くはないな。


「楽しかったか?」


「なに?」


「罪もない一般人を殺して、燃やして、楽しかったか」


「……」


 目を逸らしやがった。


「オレはこの通り、楽しんだぞ。まぁ歯応えなさすぎてつまらなかったが」


 ボゴッ!


「くっ!」


「くっ、じゃねーよ。バカが。自分らのした事考えてみやがれ」


「……」


 一度オレを睨んでおきながら、再び目を逸らす。


「命令だから仕方ないってか。軍人は楽だよなぁ、何も考えず、命令にだけ従ってれば出世するんだろ」


 言ってから、別に軍人に限らずみんなそうかと思ったがまぁいいや。


「残念だがそれもここまでだ。オレが全部終わらせる」


「……」


「別に黙っててもいいぜ。どうせお前ら皆殺しだ」


「!!」


 燃えるような目で睨んでくるが、歯を食いしばって依然無言を貫く。


「おい、どうだ? そろそろわかったか」


「?」


 指揮官がきょとんとしているが無視する。


『はい。彼はカイル・コナーズ。帝国軍第二師団の副団長ですね』


「家族は?」


『帝都に軍の幹部用の住居が割り当てられています。妻と子供が二人』


「ふぅん、まぁ幸せな家庭ってヤツだな」


 相変わらず何のことかわからないながらも、不穏な空気を感じて緊張しだす指揮官。


「おい。お前の家族は帝都にいるんだろ。この意味わかるよな? コナーズさん」


「なっ!!!」


 一気に顔面が真っ赤になって憤怒の表情になるコナーズ。


「まぁ別にいいぜ、そのまま黙ってても。どうせ帝都は焼き尽くすつもりだ。お前らがあの町にやったようにな」


「ま、待て! 言う! 何を言えばいい! なんでも聞け!」


 おっと、意外とちょろかった。


「いいか、くれぐれも気をつけて答えるんだな。なぜあの町を狙ったんだ?」


「それは……」


 この後に及んでまだ言い淀むとか、忠実過ぎる犬だな。

 首を掴む手に力を込める。


「わ、わかった。言う。陛下の後宮が懇意にしている商会を通じてあの町のマイマイを手に入れようとしたんだが、決められた制限以上は売ることができないと要求を拒否したんだ」


 は?

 待て待て待て。

 たかが米のことでやったというのか。


 あ、いや、オレも人のことは言えないが。

 たかが米、されど米だ。

 それは理解できる。


 が、やっぱ理解できねぇ。


「売らないと言われたわけではないんだろう」


「そうだ。しかしそれでは到底足りぬと言われたそうだ」


「お前んとこの国は食い物が思う存分手に入らないからと言って相手を焼き殺すのか」


「……我々とて好んでやったわけではない」


 ボゴッ。


「うっ」


「オレならまずその後宮とやらを焼き払うがなぁ」


「そんな事をしたら斬首刑だ」


「ははぁん、つまりアレだ。お前らは自分が処罰されるのがイヤだから、罪もないアカの他人を女子供も全部まとめて焼き殺したってことでいいんだな」


 そうだ、これが人間だ。

 なんてことはない、元の世界だろうが異世界だろうが、同じなのだ。


「……」


『まぁいい。それでお前ら、オレのことをどこまで調べた?』


「魔王軍の幹部なのだろう。魔王の魔力が感じられたそうだ」


 この指輪のせいか?

 まぁ当たらずと言えど遠からずってとこか。

 いや、違うけれども!


「他には」


「あの町に滞在、いや、正確には町の裏山に潜伏していて何か基地のようなものを建築しているのは確認している」


 基地か、ちょっと恥ずいな、くそ。


「どうやってオレを見張ってた?」


「魔導士の千里眼だ」


『該当する魔法を確認しました。触媒を付与した対象を遠隔地から監視できるようです』


「触媒ってのはどうしたんだ?」


「さっきの子供を使った」


『成分分析完了、僅かですが何か粉末のようなものが御主人様(マスター)とあの子供に付着していたようです。おそらく初回の接触時から既に』


 気に入らねぇ。

 子供を使いやがって。

 しかもその子供を今度は人質に利用したのか。


「あとで水浴びでもするか。はははは」


 笑けてくる。

 どこまでも乾いた笑いだ。


「最後にもうひとつだ。人質をとる作戦は誰が考えたんだ?」


「おそらく軍の中枢の参謀殿だ。宰相の双子の兄上でもある」


『その情報は事実です』


「なぁ、お前はそんな作戦を聞いて何か感じなかったのか?」


「命令は命令だ。軍の命令に私情を差し挟む余地などない」


「それ、言い訳になるか? あの町の焼け焦げて死んだ人間に言えるか?」


「……」


「自分の行動は、自分で責任が取れる範囲で決めるもんだぜ」


 驚いた表情でオレを見るコナーズ。

 柄にもない正論言っちまったじゃねぇか、くそ!


 ボゴッ!


 最後に今までで一番強烈なのをお見舞いしてそのまま地べたに放り投げる。


「行くぞ」


『了解です。帝都サンバルクスですね』




* * * * *




 それからオレは一直線にサンバルクスへ向かい、いの一番に帝都の王城を落とした。


 ミサイルホッパー三発で完全崩壊だ。


 王城の周囲にあった豪邸も全部燃やした。

 なるべく同一線上になるようオズに計算してもらって、スパイラルキャノン二発。


 あとは適当に目についた偉そうなヤツ、善意の欠片もなさそうなヤツを手あたり次第に殺した。


 正直言うと、残弾が心許ないし、エネルギーも飛行中に大半を消費していた。

 パックは0時まで回復しないので、今は我慢するしかない。


 だが、事実上帝都の政治機能は破壊したと思うし、経済もまぁ民間系以外は機能しなくなる程度には潰したはずだ。


 魔導師団とかいうのがあったようなので、それもミサイルホッパー三発。

 建物ごと崩壊で、全員生き埋めになったはず。


 王城を中心に半径三キロぐらいは火の海にしたが、ちょうど大きな円環道路があって、その先までは延焼しないように加減してやった。

 我ながら情けが過ぎるぜ。


 そう言えば、うっかりコナーズの家を認識しないまま攻撃してしまったが、幸い直撃は免れていたようで、後から妻と子供たちを探して郊外に逃がしてやった。


 オレを見て恐怖に慄いていたので、たぶんほとんど覚えていないと思うが。


 まぁ約束は約束だ。




* * * * *




 夕闇が迫る中、オレは崩壊した王城の瓦礫の上に座って胡坐をかき、帝都を見下ろしていた。


『リュウよ』


「なんだ魔王か。また随分といいタイミングだな。千里眼でも使ってるのか」


『……大活躍ではないか』


 ちっ、なんだ今の沈黙は。

 やっぱりそうなのか。


「つい勢いでやっちまった。別にいいよな?」


『構わん。手間が省けた。フハハハハ』


「明日もうちょっとやって、他の都市も落とすつもりだが大丈夫か」


『フム、それならアグナスとドラグレッドを向かわせよう。元々は彼らの仕事だったのでな。少しは手柄を分けてやってくれ』


「別にいいが、なんかオレ逆恨みされるんじゃねーの?」


 四天王とかいう脳筋連中とは、最初から相性悪そうだったしな。


『フハハハハ』


 プチッ。


「おい!!!」


 くそ。

 絶対面白がってるだろ魔王の野郎。


 いい感じに黄昏ていた気分が台無しになっちまった。


 しかし、いったい全体オレはここで何やってんだろうな――。

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