64、王女様が再来しました
橘 信司は緊張していた。
なぜなら王宮から連絡があり、リリア王女が来訪すると聞いたからだ。
「アレスさん、今日はリリア王女がいらっしゃいますが、いつも通りにお願いします」
「わかりました。リリア王女がいらっしゃるんですね」
「はい」
店の看板はCloseのままだった。
他のお客さんをいれて、王女に何かあったら困るからだ。
「こんにちは」
「いらっしゃいませ」
アレスはリリア王女の首に、入店時間を書いた紙をかけた。
「お久しぶりです。橘殿、えっとそちらは……」
「アレスと申します。よろしくお願い致します」
「よろしく、アレス殿」
信司はメニューを持ってきて、王女に渡した。
「あら、メニューが前回来たときより増えていますね」
「はい。ご縁があったり、新メニューを開発したりしておりますので」
「それでは今日は、オムライスとやらとコーヒーをお願いします」
「承りました」
アレスと信司は台所に入り、それぞれコーヒーを入れたりオムライスを作ったりした。
「猫ちゃんは相変わらず可愛らしいですね」
「にゃーん」
にゃんきちがゴロゴロと床を転がっている。
「お待たせ致しました、オムライスとコーヒーです」
アレスは王女にオムライスとコーヒーを出した。
「あら、オムライスに猫ちゃんの似顔絵。なんとも言いがたい表情ですね」
王女はにっこりと笑ってから、スプーンでオムライスをすくった。
「美味しいです」
「それはよかったです」
しばらく、心地よい沈黙と猫達の鳴き声だけが響いた。
「ごちそうさまでした」
「お口に合いましたか?」
信司が台所から出てきた。
「はい、美味しかったですよ」
王女が微笑んでいった。
「それでは、今日はこの辺で。ごきげんよう」
「ありがとうございました」
王女は兵を連れて帰っていった。
「緊張しましたね、信司さん」
「そうですか? アレスさん。王女様は猫様が好きな良い人ですよ」
「信司さん、そういうことではないんですが」
アレスは信司の変化のなさに、ちょっと呆れたように笑った。




