57、何もない日
橘 信司は安堵していた。
最近はお客さんの数も、新聞に載る前くらいまで減ってきていたからだ。
にゃーの蚤騒動も落ち着き、猫達もくつろいでいる。
「平和ですね」
「アレスさん、そうですね」
信司はホットケーキを焼きながら答えた。
「こんにちは!」
「こんにちは、アリサさん、お久しぶりです」
「ええ、なかなかお店、混んでて入れなかったからね」
「それは申し訳ありませんでした」
信司とアレスはアリサに頭を下げた。
「にゃーん」
にゃんにゃんがアリサの足下に寄ってきて、体を擦りつけた。
「あら、覚えてくれてたのね」
アリサはちょっと引きつった笑顔を浮かべて、いつもの台所の傍の席に着いた。
「今日のご注文は?」
アレスが尋ねた。
「紅茶とオムライスお願いします」
「はい、かしこまりました」
「信司さん、紅茶とオムライスお願いします」
「はい」
信司は手際よくオムライスを作りながら、紅茶を入れた。
「アレスさんもお店になれたみたいですね」
「ええ、おかげさまで」
「信司さんは優しいですか?」
アリサの質問に、アレスは苦笑しながら答えた。
「猫ちゃん達に関することは厳しいですね」
「ああ、そうでしょうね」
アリサも笑った。
「お待たせ致しました」
信司がにゃーの似顔絵入りのオムライスと紅茶を運んできた。
「今日みたいに平和な日が続くと良いのですが」
「そうですね」
アリサは紅茶を一口飲んで、信司に微笑みかけた。
信司はにゃんにゃんの肉球を見ていて、それに気付いていなかった。
アレスは、その様子を見て、ふう、と息をついた。




