53、アレスの家は鍛冶屋でした
橘 信司は憂慮していた。
アレスの家の話も聞かなくてはいけないのかも知れないと。
レイナは成人していたから、家のことなど気にしていなかった。
しかし、レイナがこの街一番のお嬢様だとは知らなかった。
信司は、レイナの家とトラブルになりかけた事を考える。
アレスも家族の同意をとっているか確認した方が良さそうだと思った。
「アレスさん、ちょっと良いですか?」
「何ですか? 信司さん」
信司はアレスを呼ぶと、台所の傍の席に座らせ、信司も向かいに椅子を置いて座った。
「アレスさんの家族はここで働くことに納得していますか?」
「はい、納得しています。どうしたんですか? 急に」
信司はため息をついてから微笑んでいった。
「いえ、レイナさんはここで働いていることをご家族に隠していたので」
「そうでしたね」
アレスは頷いてから言った。
「ウチは貧しい鍛冶職人の家ですから、外に働きに行くのは大歓迎されました」
「鍛冶職人ですか? 家業を継がなくても良いのですか?」
信司の問いかけにアレスは首を振った。
「弟には鍛冶の才能があるんですが、私はどうも向いていないようです」
「そうですか」
信司とアレスは黙り込んだ。
「にゃーん」
にゃんにゃんがアレスの足下に来て、体を擦りつけながら鳴いた。
「あ、猫ちゃん達にご飯をあげないと」
アレスがそう言うと、信司は台所に入った。
「はい、よろしくお願いします」
そう言って信司は冷蔵庫から猫達の食事を取り出し、アレスに渡した。
「あの、私は今まで通りここで働いていけるんでしょうか?」
「はい、アレスさんが問題ないのなら、私は大歓迎です」
「よかった」
アレスはホッとした顔で、笑った。
「信司さんは残り物をくれるし、猫達も慣れれば可愛いし、この職場気に入ってるんです」
「そうですか。アレスさんの人柄に助けられていますので心強い限りです」
信司はアレスが特に問題なく働いていると聞けて、安心した。
「それでは今日もお店を開きましょう」
「はい、信司さん」




