30、粗悪な模倣店が現れました
橘 信司は驚いていた。
女将さんから、新しく猫カフェが出来たと聞いたからだ。
信司は早速、店を見に行った。
猫カフェは、以前行った潰れた喫茶店の跡地に出来ていた。
「いらっしゃい、何名様ですか?」
少年が信司を出迎えると、聞いてきた。
「一人です」
信司が答えると、少年は入店時間を書いた紙を信司の首にかけた。
「ここまではウチの店とおなじですね」
「それでは、こちらにどうぞ」
信司が通されたのはトイレの脇の席だった。
人はそれなりに入っていた。
しかし、店の中に進むと、ちょっとした悪臭が気になった。
「あまり、猫様のトイレは掃除していないのでは?」
信司が呟くと、少年はぎくりとした。
「あの、そこまで手が回らなくて・・・・・・」
少年は名札をつけていて、そこにはロイと書かれていた。
「メニューをどうぞ」
「ありがとうございます」
信司はメニューを見た。
そこに書かれていた料理はスープとパンだけだった。
「では、スープとパンをお願いします」
「はい、お待ちください」
信司は猫の様子を見た。
すこし太っているようだ。それに、元気がなかった。
「お待たせ致しました」
ロイはすぐにスープとパンを運んできた。
スープには鳥肉とキャベツが入っていた。
パンは安いパンの味がした。
「これはここで作っているんですか?」
信司はロイに訊ねた。
「スープは俺が作ってます。猫たちの世話もしてます」
「パンは買ってきた物ですね」
「はい」
「これで1000ギルは少し高めですね」
信司は独り言を言った。
「あ、猫ちゃんにあげても良いですよ!」
「なんだって!?」
信司はロイの言葉に耳を疑った。
「ロイ君、こんな味の濃い物を猫様にあげるはず無いだろう!!」
「え、あの、えっと、駄目なんですか!?」
ロイは信司のあまりの剣幕にうろたえた。
「この店の店主を呼んでもらえないか? 君に話しても無駄だろう」
「はい、少々お待ち下さい」
少しして、店の奥から40代くらいの男性が現れた。
「レックスと言います。この店の主人です」
「この店は猫様をなんだと思っているんですか!?」
信司はレックスに声を荒げた。
「猫って、たかが猫でしょう? なにを熱くなってるんですか?」
レックスは笑った。
信司は怒りがこみ上げてくるのを感じた。
しかし、猫たちに悪影響があると行けないと思い怒鳴りたいのを我慢した。
「私は<猫様が主役>の店主、橘信司です」
「ああ、それはどうも。猫カフェって思ったより儲からないし、手間がかかりますよね」
信司は怒りに震えた。しかし、怒りが強すぎて冷静になっていた。
「それならば、この店を私に任せて頂けませんか?」
「はい? この店を買い取ると言うことですか?」
レックスは嬉しそうに答えた。
「高いですよ。でも猫たちもつけますよ」
「もちろんです。出来ればロイ君も一緒に雇うことは出来ますか?」
「俺は、猫と働けるなら何処でも良いです」
ロイの答えに信司は頷いた。
「それでは銀貨50000枚で」
「即金出なくても構いませんか?」
「ああ、なら銀貨月々10000枚で6ヶ月払いでもいいぜ」
信司はちょっとだけ考えたが、猫たちの様子を見て一刻を争うと判断した。
「それでは、契約書を書きます。銀貨月々10000枚で6ヶ月払いで買い取ります」
「まいど」
レックスは楽をして大金が手に入ったのでご機嫌だった。
ロイは少し不安な表情を浮かべていた。
信司はロイに言った。
「ロイ君、貴方には私の店で修行してもらいます。猫好きに悪い人は居ません」
「はい、わかりました、信司さん」
ロイは信司の笑顔を信じることにした。




