31、ロイが加わりました
橘 信司は悩んでいた。
それは、2号店を出すことになるとは思っていなかったからだった。
しかし粗悪な模倣店の猫たちを、見捨てることは信司には出来なかった。
唯一の救いは、ロイが真面目で猫が好きだったことだった。
信司はロイに、信司のもつ猫たちへの知識を教え、2号店の店長にするつもりだった。
今までロイは、ロイなりに頭を使って猫たちの健康管理と接客をこなしていた。
その分、ロイへの教育はやりやすい部分もあったし、やりにくい部分もあった。
まずは、人の食べるものと猫の食べるものは別にしてあげなければいけないと言うことを教えた。
最初ロイは、美味しいものを猫たちに食べさせて何が悪いのか分からないと言った様子だったが、信司の丁寧な説明で、塩分や脂肪の取り過ぎになることを理解した。
ロイは、猫たちのトイレの始末やブラッシング、シャワーなどは信司が教えるとすぐに覚え直してくれた。
そうしてロイの修行がはじまってから1週間が経った。
信司はロイに言った。
「これで、一人前としてお店に立てますね」
ロイはちょっとしょんぼりして言った。
「ありがとうございます。俺のいた店と違って、この店の猫ちゃんは皆元気ですね」
「はい、新しく来たボーガン、シールド、ソードちゃん達も元気になりますよ」
信司はロイの頭を撫でた。
「あ、猫ちゃん達の名前、覚えてくれたんですね」
「はい」
ロイは嬉しそうだった。
信司は確信していた。ロイなら2号店の店長を務められると。
信司は店の看板をOpenにした。
アリサがやって来た。
「あれ? 新人さん? それに新しい猫ちゃんもいる!」
「アリサ様、いらっしゃいませ」
信司は入店時間を書いた紙をアリサの首に下げた。
「あら、新しい猫ちゃんはボーガンにシールド、ソード、ずいぶん勇ましい名前ね」
「はい」
信司は素っ気なかった。
ロイが慌てて言い足した。
「あの、ちょっと違う店で飼われてたんですけど、ここに引き取られたんです」
「そうなんだ、君はロイ君っていうのね」
アリサはロイの名札を見ていった。
「次期、2号店の店長見習いです」
信司がさらりというと、アリサとロイは顔を見合わせて驚いた。
「え、2号店!?」
アリサとロイは声を上げた。
「はい、2ヶ月後には店を営業させたいと考えています」
信司は表情を変えずに言った。
「信司さん、俺そんな自信ないです」
「私がサポートします。猫様が大好きなロイ君なら大丈夫ですよ」
そして、信司はアリサにメニューを手渡した。
「あ。メニューが増えてる。ロイ君お手製の鶏肉とキャベツのシチュー?」
「はい、美味しいですよ」
信司はとろけそうな微笑みを浮かべた。
「じゃ、今日はオムライスとシチューにします」
「ありがとうございます」
アリサは注文すると、いつものように台所のそばに座った。
今日は信司とロイが台所に入った。
オムライスを信司が作り、ロイがシチューをお皿に注いだ。
オムライスに描かれたのはボーガンの似顔絵だった。
「似てますね。ヘタウマですけど」
「そうですか」
ロイの言葉に信司はちょっと俯いた。
「ロイ君にもオムライスの作り方を教えないといけませんね」
「はい、おねがいします」
信司の言葉を聞いて、ロイは素直に頷いた。
「仲良きことは美しきかな、ですね」
アリサは運ばれてきた、シチューとオムライスを見て微笑んだ。
「今日は2500ギルです」
「はい。ロイ君頑張ってね」
アリサは手を振って店を出た。
「綺麗な人ですね」
ロイは頬を赤らめていった。
「そうですか? 良いお客様ですよ。猫様に愛されていますし」
信司は真顔で答えた。
「その基準しかないんですか?」
ロイは信司に聞いた。
「はい? 他の基準があるんですか?」
信司は心底不思議そうな顔でロイに問いかけた。
「可哀想なお姉さん・・・・・・」
ロイはそっと呟いた。




