26、コーヒーを入れることにしました
橘 信司は方向音痴だった。
「信司さん、街の反対側の喫茶店が閉店するんだって」
下の階の女将さんが、ドアの向こうから信司に話しかけた。
「格安でコーヒーの焙煎機とコーヒーミルを販売するらしいよ」
信司は女将さんの言葉に反応すると、大急ぎで店から出てきた。
「閉店する店は何処ですか?」
「この辺りから中央広場を挟んで反対にある、地下の喫茶店らしいよ」
信司は女将さんに礼を言うと、有るだけの銀貨を持って、その店を探しに行った。
信司は中央公園からまっすぐ進むと、小さな繁華街についた。
繁華街では、色々な人に喫茶店の場所を聞き、なんとか店を見つけることが出来た。
「こんにちは、公園の向こうで猫カフェをしている橘と申しますが」
「おお、これはこれは」
そう言うと古ぼけた喫茶店の老主人が出てきた。
「もう年も年で、引退しようと思ってな」
「そうなんですか」
信司はしんみりとした気分で返事をした。
「ほれ、これが欲しいのか?」
そう言って、老主人は奥から使い込まれたコーヒーの焙煎機とコーヒーミルを持ってきた。「お代はいくらですか?」
「使ってくれればそれでいいんだが・・・・・・。30000ギルくらいでどうだい?」
信司は銀貨の数を勘定した。丁度30000ギルあった。
「丁度あります」
「それじゃ、これを持って行くが良い」
信司は丁寧に礼をすると、焙煎機とミルを手に入れた。
「さてと、帰りますか」
信司は店を後にした。
なんとか道に迷いながらも、信司の店に帰り着くことが出来た。
「さてと、さっそく使ってみますか」
信司はサービスでもらったコーヒー豆を焙煎機で煎り、コーヒーミルで引いた。
良い匂いが店内に立ちこめる。
猫たちが信司の元に来たが、信司は優しく猫たちを元の部屋にもどした。
「熱いものをつくっていますからね、火傷しないよう向こうの部屋でお待ちください」
コーヒーを入れた。
一層良い香りがコーヒーから立ち上った。
「これならお客様に出せますね」
信司はコーヒーの味を確かめながら言った。
そして、メニューにコーヒー500ギルと書き足した。
午後から、信司は店を開くことにした。
コーヒーの評判は上々だった。




