27、にゃんじろうがネズミを捕まえました
橘 信司は誇らしかった。
それは、にゃんじろうが初めてネズミを捕まえたからだった。
「いらっしゃいませ、アリサ様」
「いつものお願いします」
アリサはいつも通り、台所の脇の席に座った。
信司もいつも通り台所に入り、パンケーキを焼き、紅茶を入れた。
そして、きょうはドーナツを揚げた。
「お待たせ致しました」
「あれ? ドーナツは頼んでいませんよ?」
アリサの問いかけに信司は嬉しそうに答えた。
「今日は、にゃんじろうの初ねずみ取り記念日なんです」
「え、ねずみ、出るのここ?」
アリサはちょっと嫌な気分になった。
「はい、飲み屋の二階ですから、夜になると大きなネズミがでることもあります」
信司はしれっと言ってのけた。
「今日は記念に皆様にドーナツをプレゼントしています」
信司はそう言って、アリサの席にもドーナツを置いた。
アリサは周りを見渡した。
確かにどのテーブルにもドーナツが置かれている。
「常連さんのみって訳でもないんですね」
アリサの問いかけに信司は微笑んで頷いた。
「はい、にゃんじろうの成長の喜びは、皆で分かち合いたいですから」
「へえ、そんなもんなんだ」
アリサは遠慮無くドーナツをかじった。
甘くてサクサクしてふんわりしていて美味しい。
そのとき、にゃんじろうがアリサに甘えてきた。
「今日の主役、おめでとう」
アリサは恐る恐るにゃんじろうの背中を撫でた。
にゃんじろうは得意げに鼻を鳴らすと、次のテーブルに移動した。
アリサはホッとした。
信司はお客さんが10名を超えた時点で、また店を閉めた。
「にゃんじろう、今日はごくろうさまでした」
「ごろごろ」
信司がにゃんじろうの喉をなでると、にゃんじろうは喉を鳴らした。




