25、香水は禁止です
橘 信司は鼻をつまんだ。
それは、今日初めて来た20代後半の女性、アケミの香水が余りにキツかったからだ。
「アケミ様、当店では強い匂いのものは禁止させて頂いております」
「アタシがくさいっていうの?」
アケミはショックを受けた風に、よろめいた。
信司は淡々と説明する。
「猫様は強い匂いが苦手です。よろしければ、首元と手首に付いた匂いを落として頂きたいのですが」
「えーっ!」
アケミは渋々頷いた。
手洗いで、香水を落としてきたらしい。
それでも少し匂いが残っていたが、信司はアケミの努力を受け止め、入店を許可した。
「あ、可愛い!」
「はい、猫様達の可愛さに説明はいりません」
「えっと、メニューはこれね。・・・・・・オムライス一つ」
「はい、承りました」
信司は台所に移動した。
ケチャップライスを作って、卵焼きを作る。
ふわふわの卵焼きをケチャップライスの上にのせて、ナイフで卵焼きを切った。
「よし」
とろとろの卵焼きの上にケチャップを乗せた。
「お待たせ致しました」
「ありがと」
アケミは一口、オムライスを食べた。
「美味しい!」
「ありがとうございます」
アケミは長い髪をしていた。
それを無造作に束ねて、にゃんたの気を引こうとした。
にゃんたは無視して、昼寝を始めた。
「あんまり、遊んでくれないんだね」
「猫様は夜行性ですから」
信司はにゃんたをそっと撫でた。
「あたしさ、娼婦してるの」
「そうなんですか」
信司はアケミの告白をさらりと流した。
「この店はそう言うの気にしないんだ」
「この店は猫様が快適でいられれば、それで良いのです」
信司は猫たちがそれぞれ気ままに過ごしている様子を見て、にっこりと笑った。
「お兄さん、美形だね」
「ありがとうございます」
信司は照れることもなく、アケミが空にしたオムライスの皿を片付けた。
「また、来るよ」
「来店の際には、香水はご遠慮願います」
「ああ、わかったよ」
アケミは店をでると、信司に投げキッスをした。




