21、持ち込みは禁止です
橘 信司は油断していた。
その事件は、お昼過ぎに起こった。
何度か来店していたお客さんが、ウエストポーチからタッパーに入ったタマネギのおかか和えを出して、パンケーキの皿に乗せたのだった。
すると、にゃんたが寄ってきた。
「いけません! 何してるんですか!?」
信司は慌てて台所から飛び出すと、皿をにゃんたから引き離した。
「あらあ、猫ちゃんも美味しそうだと思ったんじゃない?」
持ち込みをしたのは、40代のおばさんだった。
「猫様が食べたら中毒を起こして、最悪死んでしまいます!!!」
信司は血相を変えて注意していると、おばさんはむっとした表情で言った。
「そんな大げさに騒がなくても良いじゃない、タマネギくらいで」
「なんてことを言うんですか! 貴方はもうお客ではありません」
信司はおばさんに向かって、声を荒げた。
猫たちが心配そうな顔をしている。
信司は、ハッとして声のボリュームを下げた。
「猫様達のためにも、当店では飲食物の持ち込みを禁止させて頂いております」
おばさんは不服そうだったが、タッパーをしまい、タマネギサラダを食べきった。
「もう、こんな店来ないからね!」
おばさんはパンケーキと紅茶を空にしてから、信司に文句を言った。
信司は頷いて、静かな声で言った。
「はい、承りました」
信司はおばさんから2000ギルを受け取ると、彼女が店を出て行くまで見送った。
「あぶないところでした、にゃんた。人間の食べ物は危ないことがあるんですよ?」
信司はにゃんたを抱きしめて優しく言った。
信司は店の看板に<飲食物の持ち込み厳禁>と書き足した。
「いままで、こんなこと無かったので油断していましたね」
信司は一人、深く反省していた。




