22、孤児がやって来ました
橘 信司は哀れに思った。
お店<猫様が主役>を覗いている子どもがいた。
子どもはみすぼらしい格好をしていて、一目で孤児だと分かった。
この世界には、親をモンスターに殺された子どもが意外といることも信司は知っていた。
「今日は、お客さんはまだ来ていませんね」
信司は子どもを店に上げることにした。
「こんにちは」
「・・・・・・こんにちは」
「お名前を教えて下さい」
「・・・・・・メルク」
信司はメルクの首に入店時間を書いた紙をかけた。
「今日はサービスデイです」
そう言って、信司はパンケーキと紅茶をだした。
メルクは匂いを嗅いでから、パンケーキを一口食べた。
「美味い!」
「ありがとうございます」
「なんでお店を覗いていたのですか?」
信司の問いかけにメルクは答えた。
「猫のクセに優雅に暮らしていて、うらやましかったから」
メルクは素直に答えた。
「猫様は生きているだけで価値があります」
「俺たち孤児は死んじまえって言われてるぜ」
「それはお気の毒です」
信司はそう言いながらも、メルクの体から立ち上る悪臭に困っていた。
「それじゃ、ごちそうさん」
メルクは食べ終わると、店を出ようとした。
「特別扱いは今回だけです。申し訳ありません」
「いいよ、今回だけでも十分だ」
メルクは上機嫌で店を後にした。
すると、下の階から女将さんが大慌てでやって来た。
「ごめんね、うちの客がこっちに来ちゃったみたいで」
「メルクのことですか?」
「ああ。うちの飲み屋は残り物とか、雑炊とか、孤児に分けてあげてるんだよ」
「そうなんですか、立派です」
信司は女将さんを尊敬した。
「困ったときはお互い様だろ?」
「私を拾って下さったのも、同じ心境ですか?」
「まあねえ」
女将さんは照れて笑った。
信司は微妙な気持ちになりながらも、ありがたいと思った。
「これからは、家賃と心付けを納めます」
「はいよ、ありがとう」
「いいえ。女将さんにとっての猫様は子ども達なんですね」
「あんた、そのもの言いはぶれないね・・・・・・」
女将はため息をついてから、微笑んだ。




