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俺が魔法少女ルナだ!  作者: みずきなな
第八話 魔界村っていうゲームが昔あったけど、今は大魔界都市って名前になるのか?
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バトルⅧ-Ⅳ

 ルナの目の前に立っていたのは凛々しい槍士の姿だった。

 青銀色の軽鎧を身に纏い、矛を構えるフィレオ。

 金色こんじきの髪がきらびやかになびき、それはまるで勇者のような美しさだった。


【ルナ、すごく素敵な戦闘ドレスだギョ】


 フィレオを白い歯を見せて満面の笑みでルナのドレスを褒めた。

 しかし、ルナはというと、フィレオのあまりの格好良さに開いた口が閉まらない状態。


 な、なんだよこいつ…マジでかっこいいじゃないか…


【フィレオ様…それでは魔族には見えませんよ?】


 そんなルナの気持ちなど知らず、ソルは鋭い突っ込みをする。

 しかし、それは正論。確かに魔族にはとうてい見えない。

 金髪イケメンが青銀製の鎧。これでは天界側の人間に疑われても仕方がないレベルだ。


【大丈夫だギョ! 今からこの青銀色の鎧を漆黒の鎧にしてもらうギョ】

「えっ!? 漆黒にするのか? いや、俺はそのままの…」

【ああ、なるほど…錬金魔術ですね。なるほど、漆黒であれば魔族だとアピール出来ますね。漆黒の鎧はフィレオ様にはとてもお似合いでしょうし】

【ソル様もそう思うギョ? ルナ、何か言ったギョ?】


 何かのボタンを押した瞬間、鎧が本当に黒くなった。

 それを見てすこぶる残念な気持ちになるルナ。

 どうせなら真っ青にして「ザコとは違うのだよザコとはギョ」とか言って欲しかった…

 いや、でも確かにソルの言う通りで漆黒の方が悪っぽくって格好いいかもしれないな。これはこれでアリか。


「いや、漆黒でいいじゃないかな? あはは」

【やっぱりそう思うギョ?】


 でも、驚いた。魔界じゃ金属の色を変えられるのかよ? それもボタンで…

 魔界のクオリティが高すぎる。


 ☆★☆★☆★☆★


 街はずれ。

 ルナ達は入った来た方とは逆の方へと歩いている。


「それにしても、すっげー近代的だったな…」


 コスチュームショップを後にした一行は適度に買い物を済ませてから、ソルの隠れ家という場所に向かっていた。


【人間界もさして変わらないではないですか? 魔界と人間界と天界は互いに影響しあって発展しているのですよ?】


 なるほど…ようするにアメリカと日本と中国とオランダが同時に発展するようなものか。

 レベルの差はあれどどの国も常に成長しているんだよな。

 魔界の一種の海外みたいなもんなのか?


「なんか納得した。しかし、あの中央の鉄塔はすごい高さだな…」


 ルナが後ろを振り返り鉄塔を見上げながら呆気に取られていると、ドンっと何かにぶつかった。


「いててて…」


 どうやら前に歩いていた人の背中にぶつかったらしい。


「あ、すみません」


 ルナは謝りながら視線を上げた。同時に振り返った怪人の顔が視界に入る。


「ひゃぁぁぁぁあ!」


 ルナは思わず大声をあげた。


【何よっ? いきなり悲鳴とか、乙女に対して失礼でしょ!】

「お、狼!? 狼男だと!?」

【女よ! 何が男よ! 失礼ねっ!】


 ぶつかった相手は狼女(自己申告)だった。身長は180はあるし、乙女といわれなければ女だとはわからない。声も男だし、顔も狼だし。


「本当に女か?」

【何よ? 声が乙女っぽくないって言うの? 仕方無いじゃない。私達の種族はこういう声なんだから】

「いや、まぁ…わかった」


 こいつが女って言ってるんだからまぁいいか…


【駄目。あんた全然納得してないでしょ? こいつが女って言ってるからまぁいいかとか思ってるでしょ!】


 なんだこいつ!? ニュータイプか?


【貴女には特別に確認させてあげるわよ!】


 そう言うと狼女はルナの手を持ってショートパンツの中へと突っ込ませようとする。


「いや待って! 何を確認させる気だ!」

【女としての証拠よ!】

「ひっ? いやいい! 信じます! だからストップ! ごめんなさい!」


 ルナは懸命の抵抗をした。

 女性のパンツの中に手を突っ込む抵抗もあったが、万が一でも例のモノが存在していたらそれこそ大変だ。


【駄目っ! それじゃ私が納得でき…あ、あれ?】


 抵抗をしているとふと狼女の力が抜けた。そしてルナをキラキラと輝く目で見ている。


【もしかして、貴方は人間なの!?】

「はひ?」


 狼女は興味深そうにじっとルナの顔を覗き込んだ。

 えっ? これってやばい!? 俺が魔法少女だってばれたのか?

 ルナが大鎌を構えようとした。しかし、それをソルが止める。


【大丈夫です…この女性は敵ではありません】


 確かに、女性は襲ってくる様子も無く、ただただ興味深そうにルナの全身を舐めるように見ているだけだ。


【これってやばいでしょ! これって俗に言う、魔界に堕ちた魔法少女だよね? すごーい! 初めてみた! 感動した!】


 まるでアイドルを前にしたファンの様に嬉しそうな狼女。

 そして、俺は魔界に堕ちた記憶はない。


【ねぇねぇ! 握手してよ!】

「えっ? 握手?」

【そうっ! 記念に! 記念に!】


 ルナはソルを見る。ソルはこくりと頷いた。


「わ、わかった…」


 ルナは狼女と握手をした。


【サインも欲しいなっ!】

「サ、サイン?」


 待て待て! 俺は魔界の文字は書けないぞ?

 狼女は着ていたTシャツをぐいっと引っ張った。


【ここに書いて!】

「は、はい?」

【はやくぅ…もうっ…焦らさないでよぉ…】


 くねくねと体をくねらせるが…声が男で体格も男で…オカマにしか見えない。

 こ、こいつ苦手だ。


「これでいいのかよ?」


 そこから出したのか不明なマジックでTシャツに「月」っと書いたルナ。


【うわぁ! やったっ! サインもらっちった!】


 大はしゃぎの狼女。


【ねぇねぇ、ちょっとだけ触っていい?】

「えっ?」

【ちょっとだけだからぁ…】

「…ちょ、ちょっとなら…」


 ルナは狼女にぺたぺたと触られた。

 頭をなでなで。

 お尻をさわさわ。

 ほっぺをぷにぷに。


 ちょ、ちょっと触り方がエロいだろ!


 《ぽたり》

 何かの効果音が聞こえた。それも地面付近だ。


「何だ?」


 ルナが地面を見ると、そこには水滴がポタポタと垂れてきている。

 そして、顔をあげると、目の前の狼女が目を輝かせて涎を垂らしていた。


【ねぇねぇ、ちょっとだけ食べていいかな?】

「ちょっとなら…っていい訳ないだろ! 離れろ! 俺は餌じゃない!」

【いいじゃん、減るものじゃないしさ】

「減るわ! 食われたらその部分が減るだろうが!」

【お嬢さん、その位にしてあげてくれないかな? ルナが困ってる】


 イケメンの声がした。見ればフィレオが白い歯を輝かせて狼女を説得している。


【イケメンだ! イケメンがいた! あんた何なの? イケメンと美少女が一緒とか何なの? よく見れば全員が戦闘服じゃん! もしかして今から人間の世界にいくとか?】


 おい、お前はソルのメイド服が戦闘服な解釈なのか…

 あと、俺を食べたいと言ってた気持ちはどこに消えた? まぁいいけど。


【ヤバイ! マジでこの三人が格好いい! イケメン槍士に美少女二人。いいないいな…私もついて行きたいなぁ…ねぇ、一緒に行ってもいい?】

「ちょ、ちょっと待て!」

【駄目です】

【駄目だよ?】


 フィレオとソルが即答。狼女は不満そうに頬を膨らませた。

 しかし、顔が狼だといくら乙女な態度をとっても可愛くない。

 すまん。俺は狼フェチじゃないんだ。


【じゃあ、せめて名前だけでも教えてよ】

「おい、言ってもいいのか?」


 ルナはソルを見た。

 今は逃亡中の身だ。素性がばれたらまずいというのであればここは言わないのが得策だよな。

 なんて思った他のにソルはこくりと頷いた。

 っていいのかよ!?


【ねぇ…名前は?】


 首を傾げる狼女。しかし、本当に狼女が可愛いと感じないのは、顔が狼だけではなく、その毛深さもあるのか?


「俺の名前はルナだ」

【…ルナ?】


 狼女が眉間にしわを寄せた。そして怪訝な表情でルナを睨む。


 まずい、こいつは俺を知ってるのか!?

 ルナが緊張に包まれた中、フィレオが二人の間に割り込んだ。


 何だ? こいつ、俺のピンチで助けてくれるっていうのか? さすが俺に惚れてるだけあるな。…って喜ぶべき事なのかこれは。


【ルナは僕の彼女だギョ♪】

「ぶっ」


 ルナは思わず吹き出した。

 いきなり何を宣言してるんだフィレオは! そんなんで今のこの状況を打開できるはずないじゃ…

 狼女の瞳がキラキラと再び輝きを取りもどしている。

 な、何で?


【やだっ! 魔族と人間との禁断の恋って奴なの!? もうやだっ! それって最高じゃん! 私もそういう恋がしてみたい! 人間の男性と恋して、愛し合って、最後はその人を食べちゃうの!】


 恋をするのは構わないが最後のはまずいだろ…


「おい、誰が彼女だよ…」


 ルナがフィレオを睨むとフィレオは苦笑した。そしてルナの頭の上にぽんっと手を乗せる。


【ルナは本当に恥ずかしがりやさんなんだギョ】


 どこをどう見たら恥ずかしがってるんだ! 俺は怒ってるだろ? どう見ても!


【もういいかしら? 私達は先を急ぐのでそろそろ…】


 ソルがそう言うと、狼女は【すみません】と身を引いた。

 やけに身を引くのが早いな。先ほどのあの怪訝な表情は何だったんだ? 俺の見間違いか?

 そして俺達は再び歩き始めた。

 しばらく進んでふと振り返ると…


 後ろには銀色のロングヘアのナイスバディの美少女が立っていた。


 へっ? あれ? えっ?


 Tシャツにショートパンツの女性はルナと目が合うと笑顔で手を振る。そしてちらりと見えたのは牙。


 あ、あいつがさっきの狼女? Tシャツの月は俺のサインがあるからそうだよな?

 あれじゃあ完全に人間じゃないか? それも美人のお姉さんじゃないか!


 俺は今この世界、そう、魔界に来て解った事がある。

 それは…女子の大半が可愛い! 綺麗! 美しい!

 これが異世界補正という奴なのか? 敵の女の子まで可愛かったしな…


 ルナは腕を組むとうんうんと頷いた。

 そして…


【へぇ…あれがルナちゃんか…食べちゃいたいくらいに可愛かったなぁ…ふふふ】


 ほくそ笑む狼女の姿があった。


 続く

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