バトルⅧ-Ⅲ
《コスチュームショップ店内》
【あら? 最近リニューアルしたのでしょうか? 巨人コーナーが出来ていますね】
入口を入って目の前に飛び込んできたのは巨大な怪人コーナー。
某大食いタレントもかなりの巨漢だが、もはやそういう問題じゃない。
例えるならタレントをザクだとすれば、巨人はサイコガンダム級。
最近の例で上げれば、モンハンの巨大なボス級の大きさ。まぁ、ボスにも色々あるので、一概には大きさは語れないのだが。
そして、やっぱりここは魔界なんだなと再認識する。
【ええと…戦闘ドレスは八階ですね】
ソルは店内案内表示で確認するとエレベータのボタンを押した。
しかし、ここでわかった事がある。それは俺は魔族の言葉が何故か理解出来るのだが、文字がまったく読めないと言う事だ。
店内のPOPも案内もすべてが読めない。数字も読めない。そこは人間の世界とは別物らしい。
エレベータを待っていると、ズシーン、ズシーンと地響きが聞こえた。超巨大な大男が店内に現れたのだ。
目つきは鋭く、全身を覆うのは動物の毛皮。そして右手に持つハンマーがまたでっかいでっかい。人間よりでない。叩かれると痛そうだ。
こんなのランクはいくつなんだよ? なんて即座に思ってしまう。
そして、こんな奴と戦いたくねぇ…なんかも思う。
きっと声も渋いんだろうな…と思ったら。
【うわぁ! 新入荷のマンモス皮のパンツが超絶かっこいいわっ!】
何でそんなに高いアニメ声なんだよぉぉぉ! お前、その容姿で女なのよか!
ルナは別の意味でショックを受けた。
【ルナ様、何をしているのですか? 早く乗ってください】
「うぅぅ…」
ルナはちょっと涙目でエレベータに乗る。
【どうされたのですか?】
「魔界で期待を裏切られまくりだよ…」
【よしよし…ギョ】
フィレオに頭をなでなでされた。
そして、5階でエレベータが止まった。そしてフィレオが降りる。
「あれ? フィレオはここで降りるのか?」
【ああ、僕の欲しい装備はこの階なんだギョ】
なるほど…
エレベータのドアが閉まると再び動き出す。
「しかし、魔界なのに本当に近代的だよな」
【はい。今や魔界に押し寄せる近代化の波は止めようがなくって、それが良い事でありながらも悪い影響を与えているのは確かなのです】
「だよなぁ…」
なんてちょっと難しい話をしている間に8階に到着。
扉が開くと、そこに広がったのは女性専用コーナーだった。
露出がすさまじいものから、かわいらしいものまで色々と置いてある。
「すげぇ…」
ルナはエレベータを降りた所から動かない。
男性が女性ものの下着専門店に入るのに躊躇する様に、ルナもちょっと雰囲気に圧倒されて中に入るのを躊躇していた。
【何をオドオドされているのですか? 行きますよ?】
「ああ…」
ソルと二人で目的のコーナーへと進む。
その途中でルナがピンクのローブを手に取った。
何だこのレベルの高さは? 出来栄えがすさまじく良いじゃないか。生地もしっかりしてるし、裁縫のレベルが高い。
こっそり家庭科が得意だったルナは変な部分で女らしかった。
しかし、人間界のコスプレイヤーがここを見れば、涎を垂らして欲しがるだろうな。
【ルナ様、こちらですよ】
「あっ、わかった」
ソルに誘導されるがままに到着したコーナー。
魔界文字でコーナーと書いてあるのかわからないが、そこには俺が着てもおかしくないフリフリの洋服が置いてあった。
「黒系がやけに多いな」
【悪堕ち魔法少女コーナーですからね】
「あ、悪堕ちだと!?」
【はい】
悪堕ち。それはすなわち天を裏切り魔についたという事。
おい待て、コーナーが設立される程に魔法少女は悪堕ちしてるのかよ?
【さて、どれに致しましょう? ルナ様はどれが良いと思われますか?】
ソルは早速物色を始めた。
そこへ赤い肌で鬼の様な角の生えた女性が二人現れる。見た目も身長も体格もほぼ人間だが、容姿が完璧に人間じゃない。
二人は悪落ち魔法少女コーナーの前で立ち止まると、衣装の一つを手に取った。
【あーこれさ、前に地上に行った時に戦った魔法少女の衣装に似てねぇ?】
【ああ、うんうん! あのフルぼっこにしてやったあの魔法少女のだよね!】
【そうそう! でもさーこれ可愛いねー】
【そうだねー! じゃあ今度はこれを着て地上にいっちゃう?】
【いいねっ! 二人で衣装をそろえよっか?】
【いいかも! じゃあさ、私いまお金ないからさー、お金とってこよっか? 人間世界でさ】
【そうだね! 奪ってこよう】
怪人の女の子は立ち去った。
「おい…」
【はい?】
「今のは?」
【怪人ですね。鬼族の女の子です】
「そんなの見れば解る。いや、魔法少女をフルボッコとか、人間世界でお金を取ってくるとか言ってなかったか?」
【言ってましたね】
「魔族の収入源は人間世界なのか?」
【いえ、違いますよ? あの子達は俗に言う窃盗をしようとしているんでしょう】
「なぁーにぃ!」
なんって酷い奴らだ! 人間からお金を奪い取ろうなんて悪魔か魔族か怪人じゃないか!
……まんまだった…
【ルナ様、これなどはいかがでしょうか?】
ソルは何も無かったかのように黒を基調にしたフリフリした戦闘ドレスを手に取った。
「………まぁ…格好はいいかもな」
そして、こっそりだがルナは黒基調の服が好きだったりした。
【では試着してみましょうか】
「へっ? 試着?」
ルナはソルに手を引かれて試着コーナーへ。ドアを開いて個室に入ると。
【ここで着替えてください】
「ひ、広っ!」
魔界の試着コーナーは人間世界の試着コーナーと違って、とにかく広かった。
二十畳はありそうな程のでっかい空間がそこには広がっていた。
「これが試着コーナーなのか?」
【ええ、そうです。ここが試着体験コーナーです】
どうやったら試着でこんなに広い空間を利用するんだ? っていうか体験って何だ?
ルナが首を傾げていると、ソルが何処からとも無く鉄球を取り出していた。 っていうか何処から出した!
【ここで販売しているのは戦闘用のコスチュームです。ここの試着コーナーでは戦いやすさの検証も出来るようになっているのです】
「戦いやすさ?」
【こういう風に検証するのですっ!】
ぶんぶんと鉄球を振り回して、その遠心力を利用して鉄球を壁へ向かって放つ!
そして、壁はソルの鉄球で粉々に粉砕された。
【ふぅ…】
「き、器物損壊じゃないのかよ!」
【大丈夫です】
ソルが何かわからないボタンを押すと、部屋が再構築されて新品になる。
「……えっ?」
【ここは異次元ですので壊しても安心です♪】
ま、魔界の更衣室が半端ねぇ…
【そして…こういう事も可能ですっ!】
違うボタンを押すと、ぞろぞろと出て来たのは魔法少女型の人形。
【はぁぁぁ!】
ソルは掛け声と共に鉄球を放った! そして人形はその原型を留めないレベルに砕け散る。
【ふぅ…】
ルナは思わず見とれてしまった。
赤いメイド服を身にまとったソルが目つきも凛々しくも人形に攻撃をする姿に。
思わず某アニメのジオ○軍の赤い彗星がザクで鉄球を振り回すシーンを思い出す。
発射する時に、【はぁぁぁ!】では無く【そこっ!】って言ってほしくなる。
【この様に何度も攻撃をしてみて動きやすさを検証するのです】
「な、なるほど…」
【では早速どうぞ】
ルナは手渡された黒基調の戦闘ドレスを身にまとう。
【うん、お似合いですね♪】
鏡に映る自分を確認する。黒を基調にした戦闘ドレスはとても格好が良く、ルナの目にもとても似合っているように見えた。
【では、これもどうぞ】
ソルは今度は大鎌を手渡す。ルナは大鎌を手に取る。
【ルナ様、大鎌を構えてみてください】
言われるがままに鎌を構える。もう一度鏡で姿を確認する。すると…
「カッコいいじゃないか…」
いや、何だろう…マジでかっこいい!
全身を漆黒の戦闘ドレスで固め、大きな鎌を構える姿がいかにも悪落ちした魔法少女のイメージを出しているじゃないか!
【とてもお似合いです! それに決めましょう】
ソルも気に入った様子で、満足そうな笑みを浮かべている。
「じゃあ俺も実践で動きやすさを検証するか」
【いえ、必要ありません】
「は、はい?」
結局は戦闘での動きやすさも何も検証しないまま衣装が決定した。
模擬戦闘をしなかった理由は、格好が優先ですから。らしい。
そして、戦闘ドレスを着たままでレジが可能との事でそのままレジに向かう。
途中ですれ違う怪人から【格好いい…】と声が聞こえた時にはつい小さくガッツポーズをした俺がいた。
レジで今まで着ていたメイド服は処分になった。
ああ、もったいない…あれはあれで出来は良かったのにな。
【157980ゴールドです】
レジでは青鬼のお兄さんが対応してくれた。声がとてもイケメンで爽やかなのに顔が…顔が怖いです。
そして、その金額は高いのですか? 安いのですか?
【カードでお願いします】
ソルはカードで払いを済ませる。
そういえば、少年少女もカードを持っていたような…
異世界人はカード払いが基本なのか?
【さて、フィレオ様のところにゆきましょうか】
俺とソルはエレベータで5階まで下がった。5階は戦士と魔法剣士のコーナーだ。
皮の鎧から鎖帷子から、武者鎧からフルプレートまで色々と扱っている。
中でもショーケースに入った青い宝石がちりばめられた鎧が一際目立っていた。
「すげぇ…格好いいなこれ…リアルでこういうのが見れるとか思ってなかった…」
これこそファンタジーだ! 剣と魔法の世界だ!
こういう装備で魔族と戦う! これこそがRPGなんだ!
でも、今いるのはビルの中なんだよな…
理想と現実のギャップって奴を今日は教えられるな…
【フィレオ様! どちらにいらっしゃいますか?】
ソルは恥ずかしげもなく声を出してフィレオを探す。
すると、遠くからフィレオの声が聞こえた。見れば試着室にいるみたいだ。
試着室の前まで来ると、中から【入っていいギョ】とフィレオの声が聞こえた。
いやいや、いくらなんでもソルは女だぞ? 簡単に入ってもいいとか…
《ガチャリ》
ガチャリ?
【あら? 入らないのですか?】
ソルがドアを開いて躊躇なく中へ進入しようとしていた。
「いいのかよ!」
【何がでしょう?】
「フィレオが裸だったらどうするんだよ」
【いつもほぼ裸ですよね?】
「うぐっ…」
正解すぎて困った。
【裸だと何か問題でも?】
「……」
そうだ、こいつは人前で全裸でも平気なんだ…恥ずかしいとか無いんだった。言うだけ無駄か…
「解った。入る。入るよ」
そして、中に入る。そして…
俺の目は奪われた。
続く




