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俺が魔法少女ルナだ!  作者: みずきなな
第八話 魔界村っていうゲームが昔あったけど、今は大魔界都市って名前になるのか?
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バトルⅧ-Ⅴ

 大都会から一歩外へ出るとそこはまたうっそうとした森だった。

 しかし、ルナは周囲の風景を見てちょっと嬉しくなる。

 周辺にある建物はかなりローカルで、レンガ作りの家や岩で作られた砦なんかも結構あった。

 そう、これこそがRPGの世界だ! やっぱり魔界はこうじゃなきゃな。

 腕を組んでうんうんと頷きながら森を進んだ。


【ルナ様、実はこの先に人間界へと続くゲートがあるのです】


 突然ソルはそんな事を言った。ルナはその言葉にすぐに反応する。


「ゲート? まさかそこを通ると人間界に戻れるのか?」

【はい、そうです】


 そして即答。


 ゲート? 門? 門をくぐれば簡単に人間界に戻れるのか?


「ええと…そこって敵がいっぱいいたりするのか?」

【いいえ。確かに魔族はいますが、その魔族達はゲートを利用する魔族の管理の為にいるだけです。申請さえすれば戦わずして人間界に戻れます】


 何だと? 俺はてっきりゲートガードとかいう、ミノタウルスみたいな化け物が守護する門があって、そいつらとの死闘の末に人間界に戻れるのかと思ってた。


「じゃあ…俺はもうすぐ人間界に戻れるって事なのか?」

【はい。但し、申請が1日かかりますので、それまでは私の隠れ家にいましょう】


 やった! 人間界に戻れる?

 そうだ。俺は人間界に戻ったら何をすればいいんだ?

 まずは少年少女を捜さないとな。あいつがいないと俺は男に戻れない。

 でもどうする? こいつらも一緒に行くと少年少女の奴は驚くんじゃないのか? こいつらは魔族だ。少年少女にとっては敵だ。攻撃してくるかもしれないぞ。

 まぁ、ソルやフィレオが負けるとは思えないが、少年少女は負ける可能性があるよな?

 テラは特SSランクなんだから、ソルだって最悪SSランクはあるだろ。フィレオだって…


 ここでルナがふと思いだした事。すっかり忘れていた事。それはフィレオのランクだ。


 あれ? 確かこいつ…Cランクだって言ってなかったか?

 Cの割にはヤケに強すぎないか? あのランクの表示って何を基準に出してるんだ?

 まぁ今考えても何もわからないけど…


 ルナはじっとフィレオを見た。

 こいつがCランク…


 フィレオもルナの視線に気が付いて笑顔を返す。ルナは思わず視線をはずした。


 いやいや、なんで視線をはずすんだ? こんな事をしてたら意識してるって勘違いされるじゃないか。

 まったく、俺は何をしてるんだよ?

 そう考えているルナの顔は真っ赤で、意識していないと言っても誰が信じるのやら。


【ルナ…】


 やさしいフィレオの声がルナの耳へと入る。そして何か違和感。


「な、何だよ」

【もうすぐだね】

「な、何がだよ」

【君が元の世界に戻れるのがだよ】


 ニコリとまるで天使のような笑顔のフィレオ。イケメンスマイルが眩しすぎる。


「あ、ああ…」

【何があっても僕は君を人間界に戻してあげるからね】

「えっ? あ、ああ…よろしく…」


 なんだ? なんだ? この愛されている様な会話は?

 っていうか、そうだよ! 語尾【ギョ】はどうした? 語尾が普通だとフィレオはだたのイケメンじゃないか! いや、イケメンがイケメンじゃいけないなんて言わない…でもギャグ要素が無いと俺が反応に困るだろうが!

 あぁ…顔が熱い…熱い。


 湯気が頭から立ち昇りそうな程に真っ赤なルナを見ながらソルが軽く笑った。


 ☆★☆★☆★☆★


 ソルとフィレオと俺は魔界ゲート管理センターという場所へやって来た。

 ここは人間界でいうパスポート申請をする場所みたいだ。

 俺はソルのお付きという事で人間界へ行く事にした。

 フィレオが俺が見ていない間に、俺の事を自分の妻と申請書に記載したが、その申請書は没収して引きちぎってやった。

 まったく…彼女ならまだしも、妻は無いだろ! …じゃない! 彼女もないない!


【申請は終わりました。今日は私の隠れ家に泊まりましょう】

「ああ」


 そして辿りついたのはどうみても旅館。


【つきました】

「いや…えっと? これって旅館だよな?」

【そうですが?】

「いやいや、さっきソルの隠れ家に行くって言ってなかったか?」

【はい。ここは私が隠れ家的に使っている旅館なのです】


 た、確かに人間世界でもそういう表現はあるけどっ!


【何か問題でも?】

「い、いや…」


 旅館に入る俺達。出迎えてくれたのは半魚人のおかみ。


【ソル様、お待ちしてましたギョ】


 おお、フィレオと語尾が一緒だ。魚人族か?


【久しぶりだね、チコさん】


 フィレオが笑顔で声をかけた。

 何だ? 知り合いなのか?


 しかし、おかみは首を傾げて不思議そうにフィレオを見ている。


【すみません…どちらさまでしょうかギョ?】

【ああ、僕だよ。フィレオだよ…あっ! 顔! しまったぁ!】


 今更になって被り物が無い事に気が付いたフィレオ。熱湯に入れられたカニの様に一気に真っ赤になる。そして両手で顔を押さえた。


【僕とした事がぁぁ…】

【えっ? まさか…本当にフィレオ様なのですか? なんという事でしょうか…素顔がそんなに素敵なお顔だったとはびっくりですギョ!】


 おかみさんは驚いた表情(魚の顔なので変化ないけどたぶん)を浮かべたが、すぐにフィレオに深くおじぎをした。


【い、いや…僕は素敵でも何でもない。ああ、はずかしい…こんな顔を見られるなんて…】

【いえいえ、まさか王子様の素顔を拝見できるとは…もう私、いますぐ活け作りになっても良いくらいですギョ】


 ルナはじっとそう言ったおかみを見る。

 いやいや、貴女の活け作りは想像するだけでも食べたくない。


【チコさん。ここに僕が来たのも、ソル様とルナと一緒なのも全部ないしょだからね?】

【はい、わかりましたギョ】


 そして俺達は部屋に案内された。


【こちらでございますギョ】


 案内されたのは純和風の部屋。

 そして、部屋に入った瞬間、ルナが苦笑を浮かべる。


 …おい待て。ちょっと待て!

 部屋を二部屋に分けたのは許そう。純和風なのも許そう。でもな…


「何で俺とフィレオが一緒の部屋なんだよ! それも布団が一組で枕が二つとか…オイコラまて! これじゃ新婚初夜じゃないか!」


 動揺するルナを余所にはしゃぐフィレオ。


【やった! 僕はルナと同じ部屋で嬉しいギョ!】


 あ、語尾が元に戻ってる。ってそんなのどうでもいいんだよ! これはいくらなんでも無いだろ? ここはすぐにソルに抗議だ!


「フィレオ、ちょっと待ってろ!」


 勢い良く部屋を飛び出すルナ。


「ソル! 何で俺とフィレオが一緒なんだよ!」


 隣のソルの部屋へと飛び込みながら怒鳴った。


【きゃぁぁぁぁ】


 するとソルのまるで女性みたいな叫び声が部屋に響く。

 って何だ!? 何があった!?

 ルナが部屋の中を見るとソルが浴衣に着替えようと、ちょうど裸だった。


「あっ…」


 またしてもソルの裸を直視したルナ。ソルは慌てて着るはずだった浴衣で肌を隠した。

 な、何だその女みたいな反応は? 今まで何度も裸を見たけど何も反応しなかったじゃないか!


【ルナ様、部屋に入る時はノックくらいするものです!】


 見ればソルは耳まで真っ赤にしてすごく恥ずかしそうにしている。

 あれれ? これじゃ本当にまともな女性の反応じゃないか。いきなり女としての自覚が出たのか?


「いや、ごめん…でも、俺とフィレオが同じ部屋とかありえないと思って抗議に…」

【ルナ様は男性ですよね? だったら私と同じなんておかしいじゃないですか】

「いや、確かにそうだけど、あれだ、俺は中身が男なんだけど、体は女な訳で…」

【それで?】

「だから、フィレオは男な訳で…」

【いいじゃないですか。もしも襲われても、処女の一つや二つくらい差し上げて下さい。どうせ男に戻るのなら問題ないじゃないですか】


 いやいや、二つはないし、そういう問題じゃないだろ?


「馬鹿か? そんなに簡単にあげるとかアリエナイだろ?」


 それに、童貞を捨てる前にロストバージンとかありえねぇ!


「っていうかマジで同じ部屋はやめてくれないかな?」

【………解りました…少し考えます】

「本当にか?」

【本当にです。ですが…】

「ん?」


 ソルは顔を真っ赤にしたままルナの目の前まで歩いて来ると…

 いきなり腹に蹴りを食らわせた!

 クリーンヒット! これぞ吹き飛ばし攻撃。


「ごふっ!」


 ゴロゴロと転がって廊下まで叩き出されたルナ。


「な、何を…する…んだ…よ」


 腹を抱えて震えるルナ。しかし、ソルはそんなルナの心配など一切していまい。


【私は裸なのですよ? 男性であらば弁《わきま》えて、気を利かせて、すぐに出て行くのが普通ではないのですか? まったく!】


 ソルはバタン! と勢いよく部屋の扉を閉めた。

 なんなんだ? 今まで裸を見たってそんな事で怒ってなかったじゃないか? 今日のソルがちょっと今までと違うんだけど? もしかして生理か? って魔族にも生理現象ってあるのか?

 でもまぁ考慮するって言ってたし、これでせめて布団は別にしてくれるかな?

 正直フィレオは襲ったりしないだろうけど…でも男は野獣だからなぁ。

 俺が男だから言えるが、理性を押さえるのって大変なんだぞ?

 ましてや、同室の女子が寝ててみろ。もんもんとして気になって仕方ないだろ?


 ルナは腕を組んで悩みながら部屋に戻った。すると部屋の中に良い香りが漂う。

 ふと見れば、フィレオが紅茶を入れているじゃないか。


【ルナはお茶は嫌いギョ?】

「えっ? いや…大丈夫だけど…」

【じゃあ、どうぞこちらへ…】

「あ、ああ…」


 ルナは日本庭園みたいな庭の見える椅子に座った。

 テーブルには薄い琥珀色をしたお茶が二つ用意される。


【お口に合うかわからないけど…ギョ】


 一口飲んでみる。


「おいしい…」


 ルナはそのままお茶を一気に飲んだ。

 そんなルナをじっと優しい目で見るフィレオ。


【それはよかったギョ。うん…】

「どうしたんだ? そんなに俺の方を見るなよ」

【ごめんギョ。でも…本当に…ルナがこうして無事でよかったギョ】

「へっ? 何だよそれ?」


 フィレオがそっと椅子に座ったルナを背中から抱く。


「ば、馬鹿! だから勝手に抱くな!」

【……ちょっとだけギョ】

「フィレオ?」

【うっ…くっ…】


 ぽとりとルナに左手の甲に雫が落ちた。


「フィレオ? どうしたんだよ?」

【………】


 今まで弱い所を見せなかったフィレオが突然泣き始めた。

 ここに来て緊張の糸が切れたのか、フィレオの瞳からはボロボロと涙が溢れる。


「お、おい…泣くなよ? マジでどうしたんだ? おい…」

【くっ…】


 ルナの胸が急に苦しくなった。そして、自分にもたれるフィレオの湿った頬にそっと右手を当てる。


「フィレオのお陰で俺は助かったんだ。ありがとう…本当にお前は俺の命の恩人だ」


 潤んだ瞳で笑顔をつくるフィレオ。自然と目と目が合う。


 ドキッ!

 ルナの心臓が跳ねたように鼓動を上げた。フィレオの顔をみてすごくドキドキする。


 やばい、何だこの空気は? この空気ってあれか? このまま…キ…キス!?

 いやいや、相手は男だぞ? 俺も男だぞ? ありえないだろ? でも俺は何で抵抗しないんだ? 顔を背ければいいだけじゃないか…


【ルナ…】

「フィレオ…」


 な、何だこれ!? 俺のファーストキスがこんな所で男と!? …違った。ってファーストキスもフィレオが相手だった。って!?


 すっと近寄るフィレオの唇。


 やばい…やばいぞ!? このままじゃ俺の唇が奪われるぅ!


 続く

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