2-12 再会
町に近づくにつれ、水の魔物はどんどん増えていった。大半は最初に見た水の塊だが、時折足のようなもので立ち上がったものもおり、それは少しだけ手ごわかった。
銀に染まった刃をを振るいながら、ティアは町を駆ける。
ティアが町を出てから戻ってくるまでの、ほんの1時間にも満たない間に、町は完全に様変わりしていた。
ぶよぶよした水に覆われた町の中の、ほんの小さな一角。ティアが泊まった宿から程近い場所。そこに走りこんだ、その時……町に、優しい風が吹いた。
覚えのあるその魔力と、目に映ったその姿。
ティアは、彼の名を呼ぶ。
「セフィ!!」
驚きに丸くなったその目が、ティアを見る。それが、蔑みや嫌悪に濁らない澄んだ眼差しであることが、こんな状況ながら、ティアを酷く安心させた。
次の瞬間、あたたかい風に包まれたのを感じる。セフィの結界の中の空気は澄んでいて、さっきまで濁った生臭い空気を吸っていたティアは、思わず息をついた。
「ティアさん!? 無事だったんですね」
何となく不審そうなのは恐らく、目の前で血だらけのまま海に飛び込んだせいだ。改めて考えて、かなりの無茶したのだと今更ながら思う。
「あー、平気平気。怪我も、もう跡形もないしな」
自分で治したわけではないけど、とは言わずに、軽く笑ってみせる。
「しかしまあ、結構な状況になってるな」
「そうなんですよねぇ…。結界は張ったんですけど、そんなに長時間は持ちませんよ」
あまり困ったようには聞こえない声で言って、セフィは溜息をついた。
「ティアさん、何かいい手ってありませんか?」
「終焉属性の大技使うなら一瞬だが…そうすると、一緒にシルドラも消えるな」
打つ手なしだと言外に伝え、軽く首をすくめる。
「ん? …いや、ちょっとまて。あー…でもいや、あの術は、なぁ…」
「ティアさん?」
首を傾げて呟き始めたティアに、セフィが声をかけてくる。
ティアは首をかしげたまま言う。
「…滅多に使わないんで忘れてたんだが。そういえばオレ、こういうのに効きそうな魔術、一つだけ使える」
「だったら」
「ただし、それは対単体用なんだよ。街ひとつ丸ごとだなんて無理だ。…何とか他の方法考えるから、もう少し…」
待ってくれ、と続けようとして、言葉を呑んだ。セフィがティアの肩を掴んで、目を丸くしていたから。
「それ…本当ですか!?」
「あ…ああ。こいつらを創ってる歪んだ魔力を鎮めてやれば、こいつらは普通の水に戻るはずだから…」
「だったら…」
一瞬、セフィは迷ったような目をした。
何かと葛藤するように、瞳に影が差し…でも、すぐにそれを振り切って、まっすぐにティアを見る。
「それなら…後は、僕が何とかできます。その魔術、今すぐ使えますか?」
何かを振り切ったような、決意の眼差しで。
だから、ティアもまっすぐに答えた。
「使える」




