表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
破壊者は絆を断ち切らない  作者: 唐紅 那智
『銀の少女』
3/53

1-1 銀の少女と太陽の青年

 森の静寂を切り裂いて、鈍い爆音が響く。その中心地、雑草の一本すら残らず消え失せた地面から身を起こし、少女は頭を押さえた。

「……ったぁ。また失敗かよ…」

 短い黒髪を払い砂埃を落としつつ立ち上がると、綺麗な円を描いて消失してしまった元・森を見渡し、頭を抱えて溜息をつく。

「師匠にバレたら…」

「バレたらどうするんだ?」

 突如、後ろからかけられた声に、少女は動きを止める。そして、そーっと後ろを振り返ると…いた。

 一つに束ねられた長い髪は、緋色の絹のよう。金色の瞳は宝石よりも美しく。『地に降りた太陽』とさえ謳われる美青年は、呆れたように少女を見ていた。

「し…師匠…。相変わらずの無駄美形ですね…」

 あはは、と笑ってごまかそうとするも、師たる青年の眼差しは変わらない。流石に十年以上同居している見慣れた顔ではあるのだが、やはり元が美形なだけはあり、ただ黙って立っているだけであるにもかかわらず、妙に迫力がある。

「ティア」

 名を呼ばれて、少女-ティアはぴくりと震えた。それでも何も言わずにいると、青年は再び口を開く。

「アストランティア=クルストーラ。問いには答えろ」

 滅多に呼ばれないフルネーム。そして、声に篭る僅かな苛立ち。これは、かなり怒っている。そうしてティアはついに観念して、口を開いた。

「魔術、失敗して…暴走しないように押さえつけたら、この通り…」

 そして周囲を示す。ティアを中心とした数メルテが不毛の大地と化している様を見て、青年は溜息をつくように言った。

「『終焉』の力を使って、このザマか。…まだまだ未熟だな」

「それは…っ!!」

 何かを言おうとするティアの声を遮って、青年の声が冷たく響く。

「俺にバレたら、何だったと言うんだ? 何を隠す? …これが、俺を殺す魔術か?」

「違う! これは…」

 とっさに叫んで、ティアはしまった、と口を塞ぎ…しばしの沈黙の後、呻く。

「…相変わらず、性格悪ぃな。とっくの昔に、あんたを殺す気なんて失せてるって知ってて、それを言うのか? 師匠…レヴィン=クルストーラ」

 久々に師の名を口に乗せて、ティアは思う。最初は、確かにレヴィンを殺すつもりで彼についていった。もう、十年以上前の話だ。その自分が彼を慕うようになったのは、一体何時のことだっただろう?

 彼に連れられて世界中を旅して回っている時か。クルストーラの姓を貰って、彼の養女となった時か。それとも…彼を『師匠』だと認めた時からだったか。はっきりとは思い出せないけれど。

「まあ、いい。帰るぞ、ティア」

 それだけ言ってきびすを返したレヴィンに付き従い、消失を免れた本日の戦果・野鳥と野草各種の入った籠を持って、家路を急ぐ。


 森の奥。何もない、生活必需品にすら困るような場所ではあるけれど。師匠と二人、静かに学びながら暮らす生活に、ティアはそれなりに満足していた。

 たった一つだけ…誰にも言えない夢を、押し殺しながらではあったけれども。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ