1-19 その手をとって
ぽん、と。頭に軽い衝撃を感じた。
「…?」
ぽんぽんと、あやすように頭を撫でられている。
「……何やってるんだ?セフィ」
「ティアさんの頭を撫でてます」
「いや、それは解っているんだが、何で…?」
頭を軽く反らせてセフィを睨むも、セフィは笑顔。
「ティアさん、何だか痛そうな顔してましたから。
…大丈夫ですよ、ティアさん。何を怖がってるのか、僕にはわかりませんが、でも…大丈夫。ティアさんなら、何があっても大丈夫ですよ」
ゆっくりとティアの頭を撫でながら、セフィは『大丈夫』と繰り返す。
「…無責任な事、言うな…」
「無責任じゃないですよ。今回、ティアさんの行動は僕が責任を持つって、約束しましたから。責任を取るためには、僕も『大丈夫』じゃなければいけないので、きっとこれで丸く収まりますよ。ティアさんも僕も無事で、ここは潰して、これで万事『大丈夫』です」
ね? と首を傾げたセフィ。あまりに平穏なその態度に、ティアは目を丸くして…やがて、小さく苦笑した。
「何だかなぁ…。お前見てると、悩むのがバカらしくなってくるよ」
「えぇ!? それは酷いですよ。僕だって…」
言い募ろうとするセフィを遮って、ティアは聞こえるか聞こえないかギリギリの声でぽつりと呟いた。
「ありがとな」
そして、視線を前に向ける。
「…とりあえず、頭撫でるのをやめろ。
……行くぞ、セフィ」
「はい、ティアさん」
その怖れは、完全に消えることはない。それでも。
ティアは、誓う。
(お前は、オレが護る。
お前がくれた優しさ、お前がくれた救い。
師匠と似ていて、少し違う暖かさ。
その全てを、オレは護る。…オレ自身からすら、護って見せるから…)
「ティアさん?」
セフィが、不思議そうに言って手を伸ばす。
「ああ、今行く」
ティアは、その手を取る。
(だから、今だけは…この手の暖かさを、感じていさせてくれ…)
歩き出しながら、ティアは握る手に僅かに力を込めた。




