表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
破壊者は絆を断ち切らない  作者: 唐紅 那智
『銀の少女』
19/53

1-17 祈りは好まずとも


 かつかつと、薄暗い廊下に響く小さな足音。無言で歩き続けるティアは、一瞬ちらりと後ろを振り返って、ほっと息をついた。

 セフィは追っては来ていない。それだけ確認して、また前を向いて歩く。


 眼前にちらつく、恐怖に歪んだ顔、怯えの滲んだ瞳。終焉の力で、グランを屠ったティアを見て、逃げ出したセフィ。

(でも…それでも。あいつはオレを追ってきた。話を聞いて、それで…オレに触れることも、厭わなかった)

 それだけでいい…と。それで救われた…と。ティアはふと寂しげに微笑む。

「…って、何弱気になってるんだよ、オレは」

 口ではそういっても、ティアが考えるのは、何故かセフィのことばかりだった。


「…ああ、そうだ」

 ぽつりと、小声で呟く。たった一つの心残り。

 もう二度と会うことはないだろうけど。でも、もしも万が一、もう一度セフィに会うことがあったら…その時は、あいつに『ありがとう』と言おう。



 そうして、廊下をひたすらに進む。呆れるほどに何も起こらない、誰も現れない道のり。怪しい、というのすら通り越して、ティアは笑い出しそうになった。

 そうして、ようやく見えた廊下の終わり。辿り着いたそこにあったのは、重厚な木の扉。力をこめてそれを押し開けると、いきなり視界が開けた。

「ここは…神殿?」

 一応は本当に宗教団体なのか。それとも、体裁を整えているだけか。ティアは、ぐるりと神殿の中を見渡し、ふと違和感を覚えた。

「あれ…?」

 もう一度、今度はじっくりと神殿を見渡し…そして、『それ』を見つけ、気付いた。

「そうか、違うんだ」

 真正面の、その祭壇に掲げられたそれは…破壊神ブリーティスの紋章ではなく、闘神ファルマの紋章だった。


「ま、これで決まりかな。ここは、宗教団体じゃない。少なくとも、破壊神信仰の、ってのはありえない。…『邪神信仰の宗教団体』の皮被って、良からぬ事企んでるんじゃねーか。…結局、こういうオチかよ。」

 呆れとも諦めともつかない、そんな複雑な寂しさを抱えて、ティアは祭壇に掲げられた闘神の紋章に相対する。そして、ふっと表情を消して右手を持ち上げた。

 右手の人差し指と中指を揃え、左肩、右肩、額の順に触れ、左拳を包むように右手を重ねる。祈りの仕草は、どの神に対するものを同じ。大地と天、そして自らの心を表す仕草。違うのは、祈る言葉だけ。

「新たなる時を切り開く、白銀の刃のもとに」

 闘神ファルマの紋章に相対して、捧げる言葉は破壊神ブリーティスに対するもの。

「…神よ、終焉神ブリーティスよ。オレは、神に祈るのなんて、他力本願で好きじゃないけど。だけど、今だけはどうか……オレに、力を。進み続けるための…心の力を」


 邪神信仰の皮を被って、終焉属性を集める者たち。不安定な終焉の力を更に危うくする洗脳をして。このようなことをするのは、終焉属性の力を、兵器にしようとしてる奴ら。そう、ティアは予想する。


この予想が外れることを、ティアは切実に願った。しかし…確証はあるのだ。当たっていたのならば、戦いは避けられない。

 その時、怒りに我を忘れることがないように。どんな残酷な現実にも耐えれるような、心の強さを、ティアは欲する。


「例え、何を目にしようとも…怒りに狂って、殺戮に興じることがないように。終焉属性を守護する神よ…どうか今は、破壊ではない力を…」


 静かに瞳を閉じて、ティアはしばしの祈りを捧げた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ