表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
破壊者は絆を断ち切らない  作者: 唐紅 那智
『銀の少女』
18/53

1-16 重ねる願い


「…それを、信じろと?」

 しばしの時間が経って、セフィが呻くように言った。搾り出すように発された声に、ティアは苦く笑う。

「まあ、そう思うのが普通だよな」

 なにしろ、事が『終焉属性』の根本に関わることである。破壊しか出来ないから忌み嫌われている終焉属性が、実はそうではない、となれば…恐らく、世界の常識が覆される。

 それこそが、ティアの望み。だが、それが受け入れられないことであることも解っている。だから、ティアは苦笑したまま、言った。

「信じろ、なんて言わない。信じて欲しいとも思わない。ただ、オレはそれを証明するよ。どれだけ時間がかかろうとも、絶対に。

 今は、まだ誰にも理解されはしないだろうけど。…例え、誰に笑われても、罵倒されたとしても」

 穏やかな声音で、ただただ、何かに言い聞かせるように、ティアは語り続ける。

「難しいことだってわかってる。オレが生きてるうちに出来るかだってわからない。それでも……オレは、進み続けることだけは、やめない」

 それは、もう既にセフィに向けて言っているのではない。ティアは、ティア自身に向けて言っている。

 何度でも、何度でも、繰り返す。

 挫けそうになる度に。立ち止まりそうになる度に。

 繰り返し、心に刻み付けていく。


『終焉属性を、破壊だけのものではないと証明する』

『進み続けることをやめない』


 これが、誓い。

 ティアの、生きる道標。


「絶対に、諦めない」

 そう宣言して、ティアは再び前を見つめた。



 セフィは、何も言わない。でも、ティアはそれで構わなかった。ふと一瞬瞳を閉じた後、廊下の奥に向かって歩き始める。その瞳には静かな決意。

「どこへ、行くんですか?」

「どこへ? って…ここを潰すために来たんだ、奥に行くに決まってるだろ?」

 何を当たり前なことを言ってるんだ…とばかりに、前を向いたまま答える。

「でも、ここにいるのは…」

「オレと同じ、終焉属性だな。好き好んで倒したい相手じゃないが…ちょっと、気になることもあるからな」

 今となっては、ただの宗教団体とは到底思えないこの組織。それならばここは一体何なのか…いくつかの可能性は考えられる。しかし、そのどれもが、あまりよい結末にはならないであろうことを思って、ティアは小さく息を吐く。

「…まあ、何にしろ。ここでお別れだな、セフィ」

 その吐息に乗せるように、ティアはあくまでも軽く言った。そして、躊躇いもなく一人で歩き出す。と、セフィは何故かティアの後を追いかけてきた。

「ちょ…どうして!?」

「お前なぁ。この先出てくるのっていったら、多分ほとんど終焉属性だぞ? 一発でも攻撃受けたら、即死確定。冗談抜きで、だ。終焉属性に対抗できるのは、終焉属性だけ。最強の攻撃力と、最速の発動速度は伊達じゃない。お前、まだ、死にたくないだろ?」

(…とはいえ。半分建前なんだよな…)

 顔は見せないまま、密かに苦い顔をする。

 ティアがセフィを遠ざけようとする、本当の理由…それは、怖いから。

 グランが、最後に言ったこと。戦いを、殺戮を楽しむのが、終焉属性の性だと。それは真実であると、ティアは直感的に悟っていた。

(オレは負けたくない。終焉の性にだって、打ち勝ってみせる。そう、言い切れると思ってた。でも…)

 あの時…グランを殺したあの時、ティアがそれを楽しんでいたのも、確かに事実。それが、ティアの自信を揺らがせる。

「…こんな所で、わざわざ死に急ぐな。帰れよ、セフィ…お前の日常へ。終焉属性のことは終焉属性オレが片をつける」

 片をつける…か。

 ティアは、笑ってそう言った。…随分と出来の悪い、涙をこらえるような歪んだ笑みだったけれども。

 それでも、と、ティアは切実に願った。

 これ以上、追求してくれるな…と。これ以上、関わってくれるな…と。

(オレは……お前を殺すようなことは、したくないんだ)


 だから。


「…じゃあな。オレのことは忘れて、達者で暮らせよ。」


 無機質な声。それだけを残して、ティアは今度こそセフィを振り払い、歩き始めた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ